ざらざらと、白い………白い
あらすじ
主人公は高校三年生。矢灰いえてる。
小学生の時に原因不明の高熱で死にかけ、
その後、時折、見えないものが見えたり、他の人には
判らない何かを感じるようになった。
いえてるには苦手な場所がある。それを彼は「白い場所」
と呼んでいるが、それは「裏側(ハホリ)」への入口であった。
春、まだ暖かいとは言い難い頃、後輩の訃報を聞いた。
死因は心臓麻痺。夜更かしや徹夜など日常茶飯事だった奴だからな………
などと教室で弁当を食べ、友人のまもると話す。
学食が嫌いないえてるはいつも弁当を持参していた。正確には学食が嫌いなのではなく、食堂が嫌いなのだが、それは食堂に「白い場所」があるからだ。
白い場所。ソコは、何であるか、と説明は出来ない、ただ、本能と言えるものがあるとしたら、それ(本能)が言うのだ。ソコは危険である、と。
友人達と夏休みに「出る場所」とか、「やばい場所」と言われる所へ行ったことがあるが、あれとは違う。ただ……ざらざらと白い……、白いのだ。
8つの時、いえてるは原因不明の高熱を出した。40度の熱が下がらず、このまま死ぬのではないかと思った、と母親が言っていた。
その時から、いえてるにとってこの世は身体を持つものとその黒いもの、身体を持たないもの、となった。
初めは、「黒いもの」は身体を持たないものだと思っていた。しかし、12の時、いとこのちび達が泊まりに来た夜、夜中にちび達の「黒いもの」がそれは楽しそうに遊んでいるのを見た。ころころと笑い、家の中を昼間だけでは足らぬと遊びまわっていたのだ。