2020年の合成音声音楽と私
師走ですね!
みなさん、最近のボカロ、聴いてますかーー!
俺は聴けてないです!(挨拶)
どうもこんにちは・こんばんは・おはようございます。canna(なんか)と申します。(なんだこの導入)
今回は昨年から2度目となるobscure.さん主催の企画「#ボカロリスナーアドベントカレンダー2020」より、12月18日分を担当させていただきました。
本年も開催いただいたobscure.さんに厚く御礼申し上げます。
↑今年は第二会場もあります
(ちなみに去年はこんなものを書いていました)
いきなりなんですがみなさん、
今年自分がよく聴いてたボカロ・合成音声作品を少し紹介させてください。
タイトル表示時P名敬称略。
「 monologue 」 Yuura feat. OИE / Yuura
1発目はこちら。
2020年、文句なし最もよく聴いたボカロ。
第一印象は、「有線でかかってても全然違和感ないな」というもの。
曲作り、歌詞の当て込み、ONEの調声、演奏技術…ずば抜けてすごい!と圧倒されるような衝撃こそないにせよ、そのどれもが高いアベレージをもって合わさるアンサンブルに惚れました。
誰だって学生の頃、得意科目不得意科目あったでしょ?(急に何の話)算数だけ100点だけどあとは70点…とかじゃなくて、全科目90点台なんです、この曲の印象。
どれもが高水準って、なかなかできない芸当だと思うんです。漠然とですが「ボカロ離れしてるな」と感じた所以はそこにあるかもしれない。
アマチュアの作品という枠組みをひとつ飛び越えた高品質なボカロ曲、という点で2020年のボカロ曲から一曲、太鼓判を押させていただきます。
my crush / 香椎モイミ feat. 初音ミク / 香椎モイミ
今年、躍進したボカロPとして思いつくPの一人が、香椎モイミさん。
この曲については過去に単独記事を書いているので、よろしければご覧ください。
比較的最近頭角を現しだした、察するにまだお若いPの方でありながら、手がける楽曲はどれもプロ顔負けのハイセンス、という印象です。
とりわけこれは2000年代前後に流行りまくったR&Bのエッセンスを、現在の合成音声界隈に完璧に投影したかのような再現度の高さに唸らされる一曲でした。
…いや、作者が意図して寄せてきているかどうかまでは推測の域を出ないので明言は避けた方がいいんですけど、とにもかくにもそれだけ当時の空前のR&Bブームを目の当たりにしてきた世代にとってはクリティカルヒットな作品であることは、言い切っちゃってもいいんじゃないかなと。
【AIきりたん】T.M.Revolution「WHITE BREATH」【NEUTRINOカバー】 /ROY
2020年に新登場した中で一際シーンを賑わせたライブラリといえば、異口同音「AIきりたん」と唱えるであろうことは想像に難くないところ。
調声したことのない、専ら聴く側からしたらもはや調声師が優れているのか、AIきりたんが優れているのかわからないほどの一線を画した発声(いや、Pの腕前によるところも当然あるのは承知の上ですが!)。
しかし、このAIきりたんの登場により、「神調教」のハードルがぐっと下がったことは否定しようのない事実でしょう。
今回紹介したROYさんの「WHITE BREATH」は、ご存じT.M.Revolutionの説明不要の代表曲。プロ顔負けってかむしろプロの曲そのものなので曲自体への感想はさておき、とにかく腹から声の出まくってるAIきりたんの朗々とした歌いっぷり、最高です。調声のハードルが下がったとは言いましたがこちら、調声に定評のあるPが高スペックライブラリを用いたらこうなった、というお手本のようなカバーです。
ヤミタイガール - れるりりfeat.GUMI / れるりり
御大、れるりり氏による「ヤミタイガール」。
東京事変の「能動的三分間」に似ている、とにわかに話題になりました。
なりましたが…実際似てるのはサビメロのごく一部で、それ以外は雰囲気的に重なりはするもののよくよく聴くと別物なんですよね。やれパクリだ何だと炎上騒ぎに全くならなかったのはしたたかなPの実力あってこそのものと思わざるを得ない。むしろ事変っぽいことに反感を覚えた人は一人もいなく、みんな諸手をあげて喜んだのでは?
似てる似てないの話ばっかりしてるとさすがに印象がよくないので切り替えますが()、例えば早口高速ロックであったり、EDMであったり、エレクトロスウィングであったりといった、今のボカロのヒットチャートにおけるメインストリームそっちのけのゴーイングマイウェイな作風。それでいて、再生数はしっかり稼ぐ。
長いボカロP経験から培われてきたセンスのいかんなく発揮された、この方じゃなきゃ誰もつくれないと言っても過言ではない円熟の逸品ではないでしょうか。
【公式デモソング】Synthtopia feat.琴葉 茜・葵【Synthesizer V】 / たかぴぃ
めちゃくちゃかっけぇ…
たかぴぃさんの「Synthtopia」。タイトルの通り、今年7月に発売された歌声合成ソフト「Synthesizer V 琴葉 茜・葵」の公式デモソングです。
これ、あまりにも取り沙汰されてなさすぎない?デモソングがそのライブラリの一強になっちゃうの往々にしてあるあるだと思ってるんですが、ご多分に漏れぬインパクトの強さ。
誰しもが思ってるであろう「I wanna do it with you!」の掛け声の滑らかさは小手調べに過ぎず、後につづく
「Girl got wings of singing voice
why not fly in the sky with me?」
のなんと痺れることよ。
ギターリフと見事にシンクロする英詞ウィスパー。思わず頭でリズムとりたくなっちゃいます。
ヴォーカリオンタグが似つかわしい滑空感溢れるシンセロックはもはやお手のものといった具合ですが、サビでマイナーコードからメジャーに転じる瞬間は何度聴いても痛快そのもの。
〆の「ダレモシラナイミライミタイ(ジャン!)」にもえもいわれぬ快感がゾクゾクと押し寄せ、ついもう一度プレイボタンに手を伸ばしたくなってしまう。この「Synthtopia」、なにより琴葉姉妹のウィスパーボイスがキモだと思ってます。爽快感と中毒性という一見相反する二つを併せ持った、なかなかにやばい一曲です。
よくタッグを組まれている絵師のbobさんしかり、この方はプロ…なんですよね?(疑問形)ここまで市場が成熟すると、どこからが「プロ」で「セミプロ」で「アマ」なのか、もはや境目がわからない。商業に携わっていれば「プロ」?携わってなければ「セミプロ」??「セミプロ」と「アマ」の違いは???
どうでもいいことかもしれませんが、色々と考えてしまう年だったんです、自分にとっての2020年。
「ボカロって、アマチュアが主役のフィールドだったよな」と。
さて、ここからが本題です。(前置き長すぎ)
只今いくつかご紹介させていただいた、当アカウントが今年特によく聴いたボカロ・合成音声のオリジナル曲の多くに通じる、ある共通項。
ざっくり言うとそれは「アマチュアやセミプロでありながら、プロにも迫る曲」であることです。
「???」とお思いの方が大半だと思います。
そんなん、あえて記事にするまでもなくない?と。
合成音楽の世界は日進月歩。日々、ソフトウェアの性能は進化し、それに伴ってPの方々の調声技術や作曲技術も向上してきていることは衆目一致の事実。
にしても、2020年はとりわけその傾向を顕著に感じ、振り向けば過去のボカロシーンとは隔世の感ある…という年でした。
そのことについては当然ポジティブに捉えている反面、少しばかりのアンビバレントな感情も「今のボカロ」には抱いている、というのが今回のお話です。
何がいけないというのか。いや、いけないという話ではないのです。
もちろん、当方の琴線に触れた楽曲群にたまたま"そういう曲"が多かっただけ、と言われればそれまでです。実際、その節はあると思います。
現に、界隈にプロ並みの楽曲が台頭するようになってきたのと同様に、アマチュア層においてもより幅広い世代がボカロ・合成音声のツールに手が届くようになった、というのも確かです。
「中高生ボカロP」、なんて言われてもさほどの驚きもなくなりましたが、最近じゃそんな若年層Pでもクオリティがびっくりするほど高かったりする。
えっ?じゃあアマチュア層の活動が充実してるってことじゃん。何が不満なの?という声が聴こえてきそうです。
そうですよね。そうなんです。
アマチュア層の活動が充実しているにも関わらず、元来ボカロのフィールドと信じてやまなかったアマチュア層の楽曲達には食指が動かず、プロ・セミプロ水準の作品を求めた。
これが、自分にとっての2020年でした。
長く続いた文化や流行ほど、ずっと同じままではいられないことはよーく理解しているつもりです。
そして実際に、そのトレンドの変遷というものを直に感じることになったのが自分にとっては今年だったという、言ってしまえばそれだけのことです。
もうちょっとだけわかりやすく言うと、そろそろ俺ボカロの流行に置いてかれそう!ということでs
取り乱しました。
ここまで書くと、先に紹介した5曲に遠回しにマイナスイメージを与えてしまいそうです。まるで今紹介した曲は2020年のボカロのトレンドじゃないみたいな。申し訳ない。そんなつもりは毛頭ありません。
話を変えます。
じゃあ、筆者は来年はもうボカロを今ほど追う気概はないのかって?
それについての回答は、「NO」です。今のところは。
今のボカロ・合成音声のトレンドが自分の趣向と多少逸れていようが、掘れば自分の好みは見つかる。というのが、2020年現在の自分の合成音声界隈に対する見解です。
そしてまだ、その"掘る"ことへのモチベが勝っている状況です。
"2020年のボカロ"は、もはや黎明期のボカロとは別物と言っていいほど、変化しています。
そしてさらにいえば、それは"2019年のボカロ"とも異なるものだと思ってます。
それすなわち、"2021年のボカロ"も今年のそれとは姿形を変えているであろうとも予見しています。
追いかけなければ、置いてかれてしまいます。
今のところはまだ、来年のボカロ・合成音声界隈を追ってみたいと思っている次第です。
もう少し、"ボカロリスナー"でい続ける猶予をください。
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まとまりのない結びですが、これで私のアドベントカレンダー記事を終わります。
翌日分担当は、左馬さんです!
※サムネイルは紹介曲「【公式デモソング】Synthtopia feat.琴葉 茜・葵【Synthesizer V】」より拝借しました。問題あればご指摘ください。
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