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ジェイコブ・ヤング(Jacob Young)の活躍と別れ

今回の note は、ナショナルズの正センター Jacob Young(ジェイコブ・ヤング)についてです。

2024年成績(7/6時点)
77試合 .261/.319/.328/.647 19SB 1HR
OAA+12(全体5位、外野手2位)
DRS+9(全体6位、外野手1位)

https://www.fangraphs.com/players/jacob-young/29931/stats?position=OF


https://baseballsavant.mlb.com/savant-player/jacob-young-696285?stats=statcast-r-hitting-mlb

ヤングの最大の武器は、圧倒的な守備力にあります。
守備範囲の広さを表す指標 OAA では、全選手の中で5位の+12。外野手に限れば、2位の好成績をマークしています。

キャッチ成功率10%のスーパープレイ↓ 素晴らしい


さらに走塁面でも非常に優秀で、上位3%に入るスピードを武器に、昨年のメジャーデビューから25回連続盗塁成功という記録を叩き出しました。
ジャコビー・エルズベリーらと並ぶ4位タイの記録です。

今季は7月5日時点で、24回中19回成功、成功率79.1%と盗塁面ではなかなかいい成績です。
さらに、走塁面での総合的な貢献度を示すBase Running では+2.9を記録しています。(全体14位、チーム1位)


打撃面では、長打力はほとんどありませんが、打率.261 は平均以上で、主に9番打者として、上位打線につなぐ役割を担っています。実際に、得点はエイブラムス(53得点)に次ぐチーム2位の44得点を記録しています。

ヤングがヒットで出塁→上位打線のヒット→ヤングが快速を飛ばしてホームに帰ってくる
というのが、ナショナルズの得点パターンの一つになっています。

メジャー初ホームラン↓ 良いね!


まとめると、ヤングは守備・走塁でトップクラスに貢献する選手であり、打撃では9番打者として、上位打線につなぐ役割を担っていると言っていいでしょう。

守備力を深掘る

ここからはヤングの守備について深く見ていきたいと思います。

結論から言うと、ヤングの高い守備力の秘訣は、圧倒的な初動の速さにあると考えられます。

outfielder jump という初動の動きの効率性を測る指標を見ていきます。
outfielder jump の定義は以下のように定義されています。

Jump is a Statcast metric that shows which players have the fastest reactions and most direct routes in the outfield. It's defined as: "How many feet did he cover in the right direction in the first three seconds after pitch release?"

ージャンプとはスタットキャストの指標であり、最も反応が速く最も直接的なルートで打球を追う選手を表すものである。ジャンプは、"投球後、最初の3秒間で[打球の落下地点に対して]正しい方向に、何フィートカバーした(移動した)のか"と定義される。ー

Jump | Glossary | MLB.com

要するに jump は、最初の3秒で落下地点に向けてどれだけ走ったかを表す指標で、初動の速さを表します。

このうちreaction は、投球後最初の1.5秒間の間に、どれだけ移動したのかを示すのですが、ヤングはこの reaction が非常に優れているのです。

https://baseballsavant.mlb.com/leaderboard/outfield_jump?year=2024&min=q&sort=6&sortDir=desc

ヤングの reaction は、平均より4.3フィート(1.3メートル)も長いのです。
2位のラファエラより、2インチ以上も長くなっていることから、ヤングの reaction の傑出度がわかると思います。


https://baseballsavant.mlb.com/leaderboard/outfield_jump?year=2024&min=q&sort=8&sortDir=asc

一方で、落下地点までどれだけ効率的に最短のルートを辿ったかを示す route はワースト2位となっています。
しかし、これは reaction が優秀な選手ほど route は悪くなりがちであるという傾向が下の表からもわかると思います。ですので、気にする必要はないでしょう。

https://baseballsavant.mlb.com/leaderboard/outfield_jump?year=2024&min=q&sort=6&sortDir=desc


https://baseballsavant.mlb.com/leaderboard/outfield_jump?year=2024&min=q&sort=9&sortDir=desc

以上より、ヤングの jump (投球後最初の3秒間に落下地点に向けて走った距離)は、平均より3.5フィートも多く、全体2位という好成績となったのです。この初動の速さがヤングの守備力の秘訣であると考えられます


別れ

ヤングの台頭によって、CFの守備力が格段に向上するとともに、チームとしての守備力の底上げにも成功しました。
一方でヤングの台頭によって、居場所を失ってしまった選手がいました。

ビクター・ロブレス(Victor Robles)です。
2016年にナショナルズ期待の超有望株として、メジャーデビューを果たしました。デビュー当時の評価はあのフアン・ソト(Juan Soto)よりも上だったと記憶しています。

そんなロブレスは、2019年にDRS+25、OAA+23と超一流の守備力でナショナルズのワールドチャンピオンに貢献してくれました。
(なおGG賞は取れなかった模様)


2019年NLCSで最後の打球を取ったロブレス↓ なつい

当時22歳だったロブレスの活躍を見て、将来はソトと共に次世代のナショナルズを引っ張ってくれる。そう思っていました。

パワーレスを克服できなかったロブレスが打撃面で開花することはなく、ケガも重なったことで殻を破るには至りませんでした。
それどころか、昨年あたりから守備力も悪化していき、平凡なミスも目立つようになってきてしまったのです。


そこにはかつて全ナショナルズファンが夢見たビクター・ロブレスの姿は、露ほどもありませんでした。そこにやって来たジェイコブ・ヤング
かつて守備の名手としてワールドチャンピオンに貢献した男は、その武器すらも失い、新たな守備の名手に居場所を奪われてしまったのでした。


そして5月28日、ロブレスのナショナルズとしてのキャリアは終わりを迎え、DFAされるに至りました。

その後マリナーズと契約したロブレスは、対左投手への起用で結構打っているようです。
マリナーズでは打率.318, OPS.802 と打席数が少ないながらも良い成績を残しています。
ロブレスが今後どのようなキャリアを送るかは想像もつきません。ですが、かつてはソト以上の期待を寄せた選手。
そのキャリアが良いものとなることを心から願っています。


116wins さんのロブレスに関するnote↓
ロブレスを気にかけてくださってありがとうございます。


参考にしたサイト


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