見出し画像

来週の相場見通し(1/13~1/17)前半

1.はじめに

マーケットが荒れ模様になっている。これは予想された「荒れ模様」の範囲内ではある。市場は「不透明要因を嫌う」というのは大原則であり、大きなイベントの前には調整ムードとなり、それが通過するとあく抜け感から、マーケットのリスクオンムードが回復する。こういう展開はお馴染みだろう。絶好の例が米国大統領選挙だ。いつも接戦になるため、共和党、民主党のどちらの候補が勝利するかは分からない。従って選挙直前にはどうしてもリスクオフになりやすく、選挙が終われば不透明要因の剥落から、市場のムードは回復する。現在のマーケットでは、この仕組みと同じようなことが起こっている。1月20日にトランプ氏が大統領に就任する。市場では、これを「day1」と呼んで警戒している。これまで、大統領選はリスクイベントになっても、大統領選就任日の初日が「day1」として警戒されることはなかった。むしろ、就任から100日間はハネムーン期間として、新政権も大きな仕事はまだ出来ないし、メディアなどもご祝儀ムードで批判を控えるというのが通例である。しかし、トランプ氏の場合は状況が異なる。トランプ氏自身が「就任初日には大統領令を発動して、多くの意思決定を行う」と公言してきたこともあり、この「day1」は市場のリスクイベントになっている。報道では100件の大統領令を準備中であるとか・・そして、メディアなどでも「トランプ氏の政策はインフレを引き起こす」であるとか、「トランプ氏の普遍的基本関税により世界経済は大混乱となる」などの「怖い未来」を大袈裟に報道してきたこともあり、この日が近づくにつれて、市場全体が「インフレ警戒モード」を強めているようだ。
実はこの「day1」への警戒は市場だけでなく、実業界にも波及していると指摘されている。すなわち、トランプ政権になったら関税で輸入品価格が上昇してしまうから、その前に在庫を抱えようという動き、リスクヘッジ的な企業行動である。それが直近の経済指標に影響し、妙に好調な米国経済を演出しているのでは?という見方がある。
いずれにしても、トランプ氏の就任を前に、世界的に金利が連動して上昇基調にあり、株式市場も「Good news is bad news」の展開で、強い経済指標が出ると、金利の更なる上昇リスクに怯えて株価が下落するというムードが強まっている。結論から言えば、こういうマーケットに持続性はない。FRBが22年のような「どこまで金利を引き上げるか分からない」という不透明な利上げ局面にない以上は、金利の上昇は「期待インフレ率の上昇」か、「タームプレミアムの上昇」が中心となる。そして、そのどちらもトランプ氏の「day1」政策への警戒と関係している。現在は市場の特徴である「まずは最大限のリスクを織り込む」という状況にある。すなわち、あれもこれも心配し過ぎているということだ。実際には起こらないことも、恐れているのである。しかし、そういう恐れは1月20日以降は、徐々にクリアーになっていくはずだ。すなわち、金利の上昇が止まり、株式市場も反転する地合いに変わるだろう。今回は、その点について深堀りしたい。いずれにしても、まだスタートしたばかりだ。1月から2月くらいまで進まないと、今年のマーケットの流れも見えてこないだろう。昨年から今年にかけて、何も大きなストーリーが変わることは発生していない。人々のムードだけが右往左往しているだけのことだ。それでは、今週の経済指標から振り返ろう。

ここから先は

5,599字 / 21画像
この記事のみ ¥ 300

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?