来週の相場見通し(2/12~2/16)②
来週の相場見通し①の続きです。今回は、深堀というよりは、市場の幅広いテーマを少しだけ取り上げる。
1.ドイツ経済の低迷
欧州景気が低迷しているが、その中でもドイツ経済が冴えない。12月のドイツの輸入は前月比で▲6.7%と大きく落ち込んだ。昨年は12カ月の内で9回も前月比で低下している。
ドイツの輸出も冴えない。12月の輸出は前月比▲4.6%と停滞した。ユーロ圏向け▲6%、米国▲5.5%、アジア向け▲5.6%、OPEC向け▲13%など、全世界的に前月比ベースで大きく落ち込んでいる。このデータだけ見ると、世界景気の需要の弱さが心配されるが、ドイツの輸出競争力に問題があると考えたほうが良さそうだ。
またドイツの12月鉱工業生産は前月比▲1.6%と急激に落ち込んだ。下のチャートのように何カ月も前月比でマイナスが継続する中、ここへきて更に大きく低下したことはショッキングだ。ドイツ製造業の弱さは広範囲に及んでおり、ユーロ圏全体の足を引っ張っている。
余談だが、EU理事会と欧州議会は、製造事業者などに製品の修理を義務付ける指令案に暫定合意したと報じられている。消費者の「修理する権利」とのことだ。この指令では2年間の法定保証期間が終わっても、消費者の要請に応じて自社製品の修理を製造業者に義務付けるとのことだ。まだ詳細は不明だが、これは製造業者には古い製品の部品や在庫を保管しておく必要が出てくることから、重い負担になりかねないだろう。欧州は、とにかく何でもかんでも権利やらを強化することをやめないと、米国や中国にどんどん引き離されていく。
さて、市場のECBの利下げの織り込みについては、4月の利下げが50%ほど織り込まれている。6月までには100%の利下げが見込まれ、年末まに4回~5回という織り込みだ。ECBメンバーからも色々な発言が出ているが、私はビルロワドガロー仏中銀総裁の「次回会合ではすべてがオープンだ」というハト派発言をそれなりに重く受け止めている。市場では、スウエーデン中銀が先進国としては最初の利下げに踏み切るとの見方が強いが、どこかの中銀が利下げを始めると、一気に利下げの連鎖が起こるのかもしれない。いずれにしても、そう遠くない話であろう。
2.米国労使交渉
2023年にUPS、ビッグ3自動車メーカー、ハリウッド・スタジオで大規模な協約闘争が行われた。そして、23年は多くの労働組合が、高い賃金等を勝ち取り、成功体験を見せつけた。24年に労使契約が切れる組合は、当然ながら気合を入れていることだろう。24年は次のような労使交渉が予想されている。
AT&T
AT&Tの労働者2万5,000人を対象とする2つの契約が2024年に満期を迎える。4月と9月である。
ボーイング
ワシントン州のボーイング機械工(IAM)3万人を対象とする協約が 9 月 12 日に満 了する。IAM751地区の組合員の多くは、ストライキも視野に入れた強力な交渉を行う予定とのことだ。特にボーイングは、様々なトラブル続きであり、今年の労使交渉としては、もっとも注目されるだろう。
国際港湾労倉庫労働者協会(ILA)
東海岸とメキシコ湾岸の港湾労働者17,000人を対象とする国際港湾労組の基本契約が9月30日に満期を迎える。既に労使交渉が開始されているが、対立は深いようだ。紅海情勢で物流が混乱しやすいなかで、ストライキは勘弁してほしいものだ。
アメリカ郵政労働組合(APWU)
郵便局員、保守労働者、運転手、退職者 22 万人を対象とする郵便労組(APWU)の協約は 9 月 20 日に期限を迎える。6月頃から交渉が開始される予定とのことだ。この業界はテクノロジーの進歩により、本来は人員削減が必要であり、難しい交渉が予想されている。
このように24年も何かと労使交渉の話題が出てくるだろう。大統領選挙YEARでもあり、その動向が注目される。
3.トランプ氏の公約
トランプ氏が「米国の労働者を守るための10項目」を発表した。これは非常に重要だ。トランプ氏は大統領時代に「有権者との公約は、契約である」として、実際に次々に公約を実現させていった。その中には、エルサレムへの大使館移転などの非常に困難とも思われていたものも含まれていたが、実現させてきた。すなわち、この10項目は必ず実現させるために動くと考えておくべきだ。逆に、最近よく話題になる「中国への60%の関税等」は、「検討する」と言っているだけで、公約ではない。但し、中国の最恵国待遇の廃止が1番目の公約になっており、最恵国待遇の廃止の次のステップとして、中国への高い関税の適用もあり得るが、「60%関税」については、私はブラフ(選挙のため)だと思っている。選挙を見据えて、これからも「とんでも発言」や「強い言葉」は、増えていくだろうが、それが「検討」なのか、「公約」なのかは、よくよく注意しておく必要があるだろう。ちなみに10項目は次のものだ。よく分からないものもあるが、とりわけエネルギーと自動車に拘っているように思える。
4.日本株と新NISA、来週のポイント
1月のに日経平均株価はは8%以上の上昇となる稀に見る好調なスタートとなった。2月も1月と同じような上昇率となれば、3万9千円台を突破する。私は米国株は堅調な地合いを見込んできたが、日本株については今年の前半は上値の重い展開を見込んできたことから、この展開は大外れである。今でも1月の8%も上昇した要因に悩んではいる。しかし、ここもと発表されている日本を代表するトヨタ等の強烈な決算を見れば、日本企業の稼ぐ力には驚かされることは確かだ。さて、海外投資家の動向であるが、下のグラフのように1月は全ての週で現物が買い越しとなった。これは明るい材料だ。しかし、1月の2週をピークに全体としては、徐々に弱まっていることは注意しておきたい。
また、話題になったのが「対外株式・投資ファンド」の急増である。下のチャートのように、昨年から日本人による海外株投資は増加してきたのだが、今年の1月には急速に跳ね上がり、1.2兆円に達した。市場では、これが新NISAによる日本の個人の海外株投資であろうと話題になっている。ちなみに過去20年で最大の買い越しであり、この規模の海外株投資が毎月出てくると、年間で12兆円を超える。新NISAの海外投資の中心はS&P500やオルカンであろうから、米国株などの新たなサポート要因になる。もちろん巨大な米国株市場に影響をを及ぼすものではないが、無視はできない。また、為替相場では相応の円安要因となるだろう。もちろん、1月のような規模の買い越しが継続するかどうかは2月のデータが出てこないと分からないが、注目すべきフローかもしれない。
さて、来週は中国が春節で16日まで、香港市場も13日まで休場となる。この間の日本株の動向は注目したい。市場の地合いが悪いときは、中国株が休場で売れない代わりに、同じアジアのカテゴリーである日本株を売るという思惑が高まり、日本株の上値を重くしてきたこともある。逆にこの期間にも日本株が強いようだと、するする上がる展開も見込まれる。日経平均は今週、年初来高値を更新し、3万7千円台に到達した。ここまで来ると、史上最高値の38,915円を射程に捉えており、そこを目指すという力は強いだろう。来週13日の米国CPIでインフレ鈍化が確認され、米金利が低下して、米国ハイテク株が更に上昇するような地合いになると、案外来週にも日本株も史上最高値を目指すような展開になっても不思議ではない。普通に考えれば、来週は市場が閑散であり、上値が重くなると見込まれるのだが、史上最高値圏にあるマーケットは、特別な力学が働きうるため、「まさか」に備えておきたい。
2月13日に米国のニューヨーク州第三区で特別選挙が実施される。昨年12月に同区の共和党議員であるジョージ・サントスが除名された。経歴詐称に加えて、クレジットカード詐欺の容疑もあり、除名処分となった。とんでもない人物だ。現在、下院の議会構成は共和党219、民主が212で、空席が4議席ある。民主党としては、何としてもこの激戦区を共和党から取り戻すことで、11月の大統領選に向けて勢いをつけたいことだろう。この選挙結果に注目したい。
来週ではないが、その翌週はエヌビディアの決算が控えている。そして、それだけではなく、2/18~2/22に「ISSCC」がサンフランシスコで開催される。半導体のオリンピックとも称される国際会議である。足元は生成AIブームであり、この会議は例年以上に大注目イベントとなる。ちなみに、今年のテーマは「ICs for a Better World」である。エヌビディアの登壇者は、生成AIを中心とした最先端半導体について語る。TSMCもAI、AMDからはHPC向けの最新GPUである「M1300」について、IBMは推論アクセレータを語るとのことだ。これら以外にもインテル、メディアテック、アクセレラAIなどが登壇するため、かなりAI関連、半導体関連は盛り上がる可能性があるだろう。
今週はここまでとする。
ゲッターズ飯田さんが、素敵な言葉を呟いていた。
「道を尋ねられるような生き方をしている人は、幸せなこと」
確かに、しかめっ面して、怖そうに歩いている人に、道を尋ねたりしないですね。真理をついているかも。道を尋ねられたら、それは良い顔をしていたということであり、喜びましょう!
良い週末を!!