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来週の相場見通し(9/23~9/27)②

1.日本株の状況

来週の最大のポイントは、27日の自民党総裁選である。これは、非常に注目だ。12日の公示日以降、候補者の討論会が連日開催されてきた。これまでの各種メディアの状況を鑑みると、上位3名の候補者とそれ以外には大きな差が開いており、決選投票は石破氏、小泉氏、高市氏の3名の内の2名が進みそうである。
大きな流れとしては、石破氏は相変わらず党員票に強みがあり、決選投票には残りそうである。小泉氏は討論会が開催されるまでは決選投票に1位通過で進みそうであったが、討論会では他の候補者に比べると準備不足が否めずに、支持率を落としている。一方で予想されたことではあったが、政策に通じた高市氏がじりじりと勢いを増しているようだ。但し、小泉氏の背後にいるのは菅元総理であり、政界への影響は大きい。足元では決選投票に進む見込みが低くなった候補者陣営の取り込みや引き抜きに全力で動いていることだろう。一方でもう1人のキングメーカーである麻生氏にとっての最悪な展開は、決選投票が石破氏と小泉氏になることだ。従って高市氏が残るべく、色々な工作を行うはずだ。結局は自民党総裁選は何でもありの「力の世界」であり、今週末から来週にかけては勢力図が二転三転する可能性は十分にある。
3名の候補者は下の通りだ。

マーケットへの反応としては、石破氏が勝利した場合には、株式市場全体としてはネガティブに反応する可能性が高い。まず石破氏では自民党の刷新感がないことや、今後の政権運営へや経済政策への不透明感が強い。どういう人物が閣僚になるのか全く分からないが、小泉氏については石破政権の重要閣僚に任命されるだろう。そのことが、また市場の不安を呼びそうだ。金融や経済の面では、石破氏はよく分かっていないというのが、市場の一般的な認識であり、石破氏の勝利の場合は、ちょっと株式市場に激震が走る可能性がある。
次に小泉氏が勝利した場合であるが、海外投資家は初動は「買い」で反応するだろう。日本の憲政史上で最も若い総理が誕生することになるからだ。また、国民的な人気が高く、選挙に強いということは海外投資家にも知られており、衆院解散での勝利予想もサポート要因になるだろう。また、コロンビア大学での就学後にシンクタンクのCSISで非常勤研究員を務めた実績から、海外投資家においては「親米的な政治家」として捉えられ、好感されると思われる。世界基準では別に若いリーダーではないことから、海外投資家にとっては経験不足は問題にならないだろうし、菅前総理が副総裁でサポートする可能性が高いことや、竹中平蔵氏などの新自由主義的な経済政策ブレーンが経済政策を担うとも想定されており、海外投資家は暫くは買いスタンスと思われる。
但し、小泉氏については金融政策、財政政策や大きなヴィジョンが不明であり、国内投資家は動きにくいかもしれない。恐らくは、最大野党の立憲民主党の党首選は野田氏が圧勝すると思われる。国会討論ともなれば、論戦が得意な野田氏にボロボロにされる可能性もあり、来年の参院選の頃には期待が失望に転じて、支持率が大きく低下していることも想定される。初動は株価は上昇すると思われるが、ご祝儀相場が終わると不安が台頭してくるかもしれない。
最後に高市氏が勝利した場合であるが、初動は「強烈な株買い」というのが、私の予想だ。まず海外投資家の間でも、高市氏が総理になるとの予想はメインシナリオではない。従ってサプライズになると思われる。日本で「初の女性総理」の誕生であり、これはインパクトがある。また、アベノミクスの強化版の実施に加えて、経済産業省の新機軸政策プランに則った強力な産業支援政策、財政拡張政策は、株式市場にはポジティブだ。特に「何よりも経済成長が重要」と繰り返しており、経済政策が実現できれば、増税なくして財務改善も実現可能と主張しいる。株式市場にとっては劇薬的な効果があるだろう。為替相場では円安が進むと思われ、そのことも日本株をサポートする。閣僚には、コバホークさんや麻生派から選ばれるだろう。思想が近い青山繁晴氏なども入ってくると面白い。但し、日本国債の格下げリスクや、行き過ぎた円安リスク、そのことによるインフレの加速など、ネガティブな面が後から出てくる可能性は否定できない。更に、高市氏は海外ではリベラルなメディアからは「日本の極右」的に捉えられており、ネガティブな報道がされる可能性があることや、中長期的には中国との関係が一段と悪化することの影響を受けるかもしれない。このため、先行きは未知数だ。しかし、初動は強烈な株上昇で反応するというのが私の見立てだ。

下のチャートは、年初からの海外投資家の売買動向(現物と先物)の合計だが、今年は4兆円に迫る売り越しとなっている。一方でアベノミクスの2013年が青色の線だ。海外投資家にとって「ニューアベノミクス=サナエノミクス」という新たなテーマが浮上すれば数兆円の資金が短期間に流入する可能性は十分あるのではないだろうか。

海外投資家の現物と先物を分けた動きは下の通りだ。

事業法人の自社株買いは持続的に継続している。個人投資家も再び日本株を買い始めたようだ。(下図)

今週の日本株は好調だった。日本株上昇の要因は、①為替市場における円高の下値目途の確認、②FOMC後の米国株式市場の好調さ、③自民党総裁選における高市氏の支持率上昇などだろう。

今週の日経平均株価のベスト銘柄は以下のような企業だ。

(週間ベスト銘柄)

一方でワースト銘柄は以下だ。

(週間ワースト銘柄)

2.為替市場と来週の注目点

為替市場の円高圧力は弱まりそうだ。要因は複数ある。①140円割れの時間帯の短さ、②米金利が低下基調から膠着モードへ、③FOMC後のリスクオンムード、クロス円の円安サポート、④ドル円のスワップコストなどだ。

ドル円相場は9月16日に140円を割り込み、139円半ばまで円高が進行した。しかし、139円台で引けることなく140円後半まで戻した。140円を割り込んでも相場は走らなかった。

(ドル円相場)

次に米金利は当面はレンジ推移を見込んでいる。米長期金利が3.5%割れに移行するのは、まだ材料が不足している。むしろ、当面は3.6%~3.9%程度の狭いレンジ内で膠着する展開が予想される。一方で日銀についても日銀金融政策決定会合が終わったばかりだ。植田総裁は「利上げを急ぐ必要はない」と慎重な姿勢を見せた。こうなると日米金利の急激な縮小を見込むのは難しい。総裁選挙関連でも基本的に有力な3候補は日銀の独立性を尊重するだろう。その上で高市氏になれば、むしろ金利は低下方向になる。そういう意味では、ドル円が急激に円安に向かうリスクイベントは控えているが、急激に円高に向かう材料は乏しいことになる。

3点目としてはFOMCでFRBが利下げサイクルを開始したことで、市場全体がリスクオンモードになっている。これは株式市場だけではなく、クレジット市場を含めた全般がリスクオンになっている。こういう状況下では、クロス円が円安に進行しやすく、ドル円は明確にドル安円高の材料がないと、クロス円の円安パワーがドル円もサポートする展開になりやすい。
そして4つ目がドル円のスワップコストである。日米金利差が縮小したと言っても依然としてドル円において円高ポジションを維持するコストは大きい。ドル円の円高ポジションは、円高進行という明確なトレンドが出ているときは積み上がるものの、ドル円が膠着状態に入ると、ポジションを維持することが難しくなる。膠着しているだけで、コストが発生するからだ。これが円安ポジションとの相違点だ。円安ポジションはどんどん円安が進まなくても、保有しているだけで持ち値が改善する。ドル円はこれまで説明してきたように、いったん139円半ばという円の高値を付けてしまった。そして当面はドル円が再び140円割れを目指すには材料が足りない。そうなるとIMMの円高ポジションは、スワップコストを嫌って、素早く解消に向かうと思われる。
こうしたことを鑑みると、ドル円相場はひとまず147円程度まで戻す展開になるのではないだろうか。為替市場は難しいため、なんとも言えないが、ドル円相場が反発基調になるだけで、日経平均株価などにポジティブな材料となるだろう。

3.来週のポイント

来週の最大の注目は自民党総裁選だ。27日の15時から16時には決選投票を含めて結果が判明するだろう。30日には党役員人事が決まり、10月1日に臨時国会が召集され、首相指名がされる予定だ。ちょっとドキドキしますね。

経済指標では23日の欧州の9月PMI速報値は要注目だ。10月のECB理事会では金利据え置きが見込まれているが、このPMIがあまりに悪いようだと、追加利下げ期待が高まるだろう。24日は米消費者信頼感指数、26日は8月のコア資本財、27日は東京コアCPI、米国のコアPCEなどが注目となる。金融政策ではオーストラリア中銀は金利据え置き、スイス中銀は追加利下げを行う見込みだ。26日はパウエル議長の発言が予定されている。
決算ではマイクロンに注目したい。また政治関連では、米国政府閉鎖回避に向けたつなぎ予算の動向も要注目となる。

今回はこれで終わりだが、石川県の洪水がとんでもない被害をもたらしている。石川県の被災地の皆様の安全をお祈り申し上げます。


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