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来週の相場見通し(4/26-4/30)
WHOは4/20に世界の1週間当たりの新規感染者数が520万人を超え、過去最多になったと発表した。死者数も9ヵ月で100万人だったのが、その後4ヶ月で200万、3カ月で300万人を超えるなど、増加ペースが上昇している。足元の感染はN501Y型が中心で、インドやイランなどの中東・アジア地域で拡大している。とりわけインドは、24時間の新規感染者が31万人を超え世界最多と苦しんでいる。医療用酸素が不足するなど、医療崩壊も懸念されている。これに対して、米国、英国では感染が抑制されており、飲食店の営業時間が延びるなど、経済活動が正常化している。また、日本でも感染が拡大しているものの、せいぜい全国で5千人程度であり、世界と比較すれば極めて抑制されている。日本では三度目となる緊急事態宣言が発動される見込みであるが、米国務省が21日に渡航中止国となるレベル4の対象国を150カ国近くも指定したが、この中に日本は含まれていない。海外から眺めると、国内の緊急事態騒ぎは、かなり不思議に思えるだろう。
こうした中、今週は日本株が大きく下落した。20日と21日で日経平均は1200円の下落だ。但し下落率は5%にも達していない。株の水準自体が大きくなっているため、日々の変動幅も当然大きくなるため、1200円の下落も大したことないのだが、それでも下落は下落だ。この下落の要因は敢えて指摘するなら、4つあるだろう。 ①コロナ再拡大による企業の業績見通しへの不安 ②日米首脳会談での台湾問題言及に対する中国からの報復リスク ③為替市場での円高傾向 ④日本政府のコロナ対策への失望感など
このような複合要因により、日本株はこれまでサポートされてきた25日移動平均を割り込んだ。しかしながら、日本株の下落は継続しないと思われる。その理由としては、①米国株の大幅調整リスクは低いこと、②過去のケースでは、緊急事態宣言後は株価が上昇していること、③中国からの報復リスクは低いこと、④円高急進リスクも低いこと。⑤TSMCのメッセージだ。
まず米国株であるが、足元ではバイデン政権のキャピタルゲイン税率の大幅引き上げの報道を受けて、やや動揺している。しかし、これは税率こそ予想を上回るものであるものの、当初からの公約であり、本当のサプライズではない。しかも対象者は所得が100万ドル以上の富裕層に限定される。米国では資産を100万ドル以上を持つ人は1861万人もいる。5,000万ドル以上の資産保有者も8万人を超える。日本では、それぞれ302万人、3,350人である。しかしながら、これは資産であり、年間の所得が100万ドル以上を超える高所得者は、米国でも人口の1%以下とも目される。はっきり言って影響は小さい。更にこうした人たちが、増税前に株式を売却するとの思惑もあるが、例えそうした動きがあっても、そのお金をどこに再投資するのか?米国の高所得者の再投資先は、当然また米国株に向かうことだろう。ちなみに報じられているニュースによれば、キャピタルゲイン税率を現行の23.8%から、43.4%へと引き上げる案のようだ。この中にはオバマケアの投資収入部分の3.8%も含まれている。これが成立するなら、1978年の33.8%のキャピタルゲイン課税を大きく上回る過去最高の税率となる。しかし、これまで米国のキャピタルゲイン税は上下に変動してきたが、特に米国株の動向に影響を及ぼしていない。あったとしても極めて短期的なので、過度な懸念は不要だろう。米国のように洗練された市場においては、こんな理由で富裕層が株を売却するなら、他の誰かがすかさず買いで入ってくるからだ。次に緊急事態と株価の関係であるが、日本における過去の事例では緊急事態宣言が出ると、株価は上昇している。過去2回しかサンプルはないので信頼性は低いが、このコロナはロックダウンすれば、感染者は抑制されることは世界的に証明されている。(日本は厳格なロックダウンではないが)いずれにせよ、今の世界経済は米国と中国が牽引している。それはIMFの世界経済見通しでも明白だ。すなわち、米国と中国で感染が再拡大してロックダウン等になれば要注意であるが、日本で緊急事態宣言が発動されたところで大したインパクトはないのだ。少なくとも日本経済には影響しても、日経平均を構成する企業の業績へのインパクトは小さい。
次に中国と日本の関係悪化であるが、これはまず先の日米首脳会談を振り返りたい。日米首脳会談については、様々な評価がされているが、「サプライズはなかった」と総括したい。今回の会談は、菅総理にとってはサプライズなく会談を行うことだけで成功というものだった。バイデン大統領にとって対面での最初の首脳会談の相手に菅総理が選ばれたということが最大の成果であり、それ以上のことはないのだ。会談時間は僅かに20分間、米国の主要メディアでも大きな取り上げはなかった。米国の知人何人かヒアリングしたところ、「奥さんが日本人の米国人以外は、ほとんど関心がない」、あるいは「今の米国は銃乱射事件等の国内問題への関心が高く、日米首脳会談は誰も知らない」とのことだった。日本での取り上げ方とは、随分と温度差がある。また、唯一大きな話題になったのが共同声明に半世紀ぶりに「台湾」が言及されたことだ。これに対して、日本では中国が激怒しているとも報じられているが、中国への造詣が深い遠藤誉さんのレポートによれば、「中国は形式上の反発はしているが、まったく怒っていない」とのことだ。その理由として遠藤氏は、共同声明における「台湾海峡の平和と安定」という言葉は、中国がよく使用する言葉であること、「両岸問題」という言葉も特別なワードであること、中国が本気で抗議するときに使用する人民日報で抗議がされていないことを理由としている。詳しくは以下を参照願いたい。
私も遠藤氏の見解に賛成だ。日米共同声明での台湾言及でもサプライズはなかった。声明ではわざわざ「台湾海峡」とし、「台湾」でもなく、ましてや「中華民国」でもない。そして中国公船による尖閣諸島付近への領海侵入も日米首脳会談後、いまのところゼロ件である。(接続水域侵入は毎日行われているが・・)中国は今年の7月に最大の行事である「共産党100周年」を控えている。今は、それが最重要であり、大国の面子を保つ必要はあるが、国内の安定が最優先だ。日本にこのタイミングで制裁をかけることはないだろう。
次に「TSMCからのメッセージ」とは、台湾のファウンドリのTSMCの投資行動が示すことの意味である。彼らは昨年末に280億ドルの巨額の設備投資を行うと発表して、市場を驚かせたが、なんと最近では300億ドルに引き上げ、今後3年間で1,000億ドルを投資すると公表した。彼らは、実業を営むリアルとして、必要な対応をしているだけだ。TSMCは5万人規模の会社だが、昨年8千人を新たに雇用し、今年はさらに9千人を雇用する。同時に従業員の基本給を20%引き上げる。これから世界で起こる半導体スーパーサイクルは、これまでと全く違うスケールなのだ。株式市場では、EPSが織り込み済みとか、PERが過去と比べて割高であるとか、色々と指摘するが、これまでと同じ感覚でこれからの株式相場を捉えるとついていけなくなる可能性があるだろう。もの凄い半導体スーパーサイクルという追い風の中にいるのである。
さて、日米首脳会談に戻ろう。ノーサプライズであり、これは本来は菅総理としては、日米関係の強化という点で、政権支持率アップの材料にしたかったことだろう。しかし、そうはなっていない。国内の新型コロナ関連のまずさばかりが話題になり、菅総理の支持率は上昇していない。こうした中、4/25の衆院(北海道)と参院(広島、長野)の選挙がある。自民党は北海道では候補者を立てられなかった。長野は立憲民主党の元国土交通省の羽田氏の急逝に伴う「弔い選挙」であり、自民党は勝てない。広島は河井安里の当選無効に伴うもので、本来は圧勝のはずの自民党もかなり苦戦している。この3選挙で全敗すると、菅総理の求心力が大きく低下する可能性は高いだろう。
来週は、日本企業の決算発表が本格化する。4/27にはイビデン、オムロン、ファナック、アドバンテスト、アンリツ、京セラなどの注目企業、28日はソニーやキーエンス、村田製作所など161社が発表され、30日は東京エレクトロン、日本M&Aセンターなど131社が続く。半導体サイクルの強さを確認する決算となる見込みだ。米国では26日のテスラから始まり、GAFAなどのプラットフォーマー、3Mやイーライリリー、クアルコムなど主要どころが揃い踏みだ。
米金利は膠着感を強めている。4月の1週目に本邦投資家が1.7兆円の外債投資を実施したものの、現在の10年金利で1.5%~1.6%前後の水準では、本格的な外債投資は確認されていない。米金利については、決算後に事業会社からの起債が相次ぐと目されることから、再度金利が1.8%を目指して上昇する展開も想定している。結局、今年はリフレ・トレードが続くのだろう。但し、インフレ率の上昇が限定的で、FRBが忍耐強い金融政策を継続するため、大幅な金利上昇も想定し難い。金利が狭いレンジで膠着するなら、株式市場にとっては、それも良い材料となる。
ドイツではCDUとCSUの協議の上で、ポストメルケル首相としてラシェットCDU党首が選出された。緑の党からは40歳のベーアボック共同代表が次期首相候補として選ばれた。直近の世論調査では、緑の党の支持率が28%と、CDUの21%を上回り、初めて首位となった。ドイツの政局は9月の総選挙に向けて波乱含みだ。
来週のFOMCでは、テーパリングの議論開始について、何らかの示唆がある可能性がある。また28日にはバイデン大統領が議会で演説を行うことから、インフラ投資第二弾も含めて注目される。米中が今年の世界経済を強力に牽引する構図に変化はなく、徐々に市場ではリフレ・トレードが再開する展開を想定する。日経平均株価の予想レンジは28,500円から29,800円を想定している。