見出し画像

2024/12/24(火)小諸はいい街だった

 8時前に起きた。朝食会場へ向かうと俺1人しか申し込んだ人がいなかったらしく広間に1人ポツンと朝食が用意されていた。いっぱいご飯が食べたいなあと思っていたら、お櫃ではなく炊飯器がドーンと置いてあり飯が食べ放題でありがたかった。

 そこからもう一回温泉に入ってチェックアウトし、タクシーで戸倉駅に向かいそこから電車で上田に向かった。上田では1時間20分くらい乗り換えの時間があったので少し観光することにした。とは言っても遠くへは行けないので駅から近い上田城へ向かった。この町は徹底して真田十勇士を推していてお城にも真田幸村のコスチュームを着たお兄さんがいた。多分観光協会か有志の方だと思うけど、私は昔からこういう人が苦手なのでホホと笑って少し離れたところを歩いた。とりあえずお城にある神社にお参りはしたが、私はお城オタクではないので少し散策しただけで駅の方に戻った。途中タバコが吸える喫茶店があったので、そこで一服して駅へ戻った。

 上田から今度は小諸へと向かった。小諸は今は亡き祖母の実家があると聞いていて前々から一度来たいと思っていたのだ。小諸では2時間くらい時間があったので、小諸城址の懐古園に行った。ここは駅の裏だから観光するにはうってつけだ。散策券という入場券を買ったら小諸市動物園にも入れると書いてあって歓喜した。これで300円だから安すぎる。この公園はそんなに儲ける気がないところが良かったね。でもその分観光客がほとんどいなくて、ふと立ち止まると千曲川の流れる音が聞こえて旅情が湧き立つ。島崎藤村が「小諸なる古城のほとり」という詩を書くのも分かる気がした。

 そして公園の奥にあるのが小諸市動物園だ。ここは結構歴史の古い動物園らしいけど、今日行ったら工事中でゾーンの2/3くらいが閉鎖されていた。結局見ることができたのはミニブタ、ヤクジカ、羊(サフォーク種)、ポニー、フンボルトペンギン、モルモット、パンダマウスであった。しかしこの動物園、入園して観光客はおろか飼育員さんとも一切会わず、本当に1人でのんびり動物と触れ合うことができた。特にペンギンはプールサイドの柵が低くて上から覗き込むとすぐそこにペンギンがいる感じだった。触ろうと思えば全然触れるくらいの近さで(もちろん触らなかったけど)、こんなに距離の近い動物園は他にないぞと感動した。ペンギンは現在見られるのが6匹いて、2匹ずつペアでまとまっていっしょにいて、もしやと思って掲示物を見たらやはりカップルだった。ペンギンは一度ペアになると浮気しないとは聞いていたけど、本当にその様子で可愛らしかった。

 それから小諸駅に戻って何か食べようかと思って少し駅前を散策したのだが、この小諸という町は駅前から商店街に向けて上り坂になっていて、坂が嫌いな私は駅前の喫茶店に入った。おばあちゃん1人で切り盛りするこのお店はもちろんタバコが吸えるお店で、コーヒーとトーストを注文したのだが、素朴な味で安心できた。お店のおばあちゃんに小諸には初めて来たことを言うとおばあちゃんは見た目より話好きなようで色々話してくれた。私が寅さんの小諸が舞台になった回が好きだという話をしたところ、一枚の写真を見せてくれた。それは映画のスクリーンショットで、寅さんとマドンナの三田佳子がお店の前に立っていて、奥には若い頃のおばあちゃんが映っている。スタッフに「お店の前に立ってなにか立ち話をしているような風を装ってください」と指示されたらしい。寅さんに出演したなんておばあちゃんすごいね!と私は感激した。

 小諸が舞台の『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』は昭和63年に公開された第40作目だけど、この映画は私にとっても思い出深い映画だ。中学生くらいのとき1人で上京した私が今は無き浅草の三本立ての名画座で見たのがこれだったのだ。隣の親父は劇場の床に痰を吐いていてそのあまりの不潔さに私は震え上がったのだが、そのレトロ感は今ではもう味わえない。また、この映画の舞台の一つが早稲田大学で、寅さんが教室で居眠りをしていたらいつの間にか講義に紛れ込んでしまうシーンがあるのだが、私が後年早大に入学して感動したのはこの教室が残っていたことであった。フーテンの寅さんをも受け入れてしまう懐の太さなど、なんとなく中学生の私は浅草の名画座で早稲田贔屓になった記憶がある。その数年後本当に通うことになるなんてその時は思っていない。

 気さくなおばあちゃんとお話ししていたら列車の時間が迫ってきたので「元気でね」と言って店を出た。これから小海線で小淵沢まで2時間半の旅だ。発車7分前くらいに列車に乗ると学生さんを中心に結構席が埋まっていて驚いた。とりあえずロングシートに座って、だれか降りたらボックスシートに座ろうという計画にした。発車して佐久平でいっぱい降りたのでボックスシートにありつけた。小諸は新幹線誘致のときに佐久市の佐久平駅に負けてそれから衰退してしまったと言われているし、喫茶店のおばあちゃんも二言目にはそう言っていたのだが、私にしてみればそれが逆に町を落ち着かせていて、個人的には新幹線の駅がある上田や、ロードサイドショップに駅の周りを埋め尽くされた佐久平より小諸の方が好きだ。また行きたいと思う。

 小海線ではほとんど居眠りをしていたので気づくと小淵沢だった。日も暮れかかり風も強く、正直今回の旅行で小淵沢が一番寒かったように感じた。駅の立ち食いそばで山賊揚げの入ったそばを食べてみたけど、これはこれでおいしかった。ボリューム的には我孫子のから揚げそばにも劣らないサイズだと思った。新宿行き特急あずさに乗った。指定席を取っていたのだが、隣は空席でのんびりできるなあと思っていたら甲府でとなりにおっさんが乗ってきて心の中で舌打ちした。甲府ではまだ他の席が空いていたので、なんでよりにもよって俺の隣なんだよと思ったのである。でもそのあと石和温泉とか大月でかなりの席が埋まったので仕方なかったのかなと思った。隣の客も立川で降りて新宿についた。あずさで新宿に降り立ったのは初めてのことだったけど、この9,10番線の特急ホームには喫煙所があるのね!まるで新幹線ホームみたい。今後新宿で乗り換えの最中にどうしても空いたくなったら使わせていただこうと思う。

 自宅の最寄駅について日高屋に行った。今日はクリスマスイブだそうだけど結構混んでいた。隣に座って辛そうなラーメンを食べていたお姉さんとか意外な客層の人もいたけど、平日のクリスマスを避けて前の土日にもうお楽しみになった人かもしれないので、イブの夜に日高屋にいる人を皆負け組だなんて思ってはいけない。まあ俺は負け組なんだけど。私が最後にパートナーとクリスマスを楽しんだのはおととしのことだけど、今年はそんなに街でアベックを見ても妬ましくならなかったのは成長である。まあ私も私で温泉旅行を楽しんだからかもしれないけど、まあもうこの年齢だし性の6時間がどうのとかあんまり思わなくなってきた。勝手にやってろいといった感想である。今日の夜にやる明石屋サンタも見たいけれど旅疲れのためさっさと今日は寝ることにする。信州の旅は大成功だった。おやすみなさい

いいなと思ったら応援しよう!