スピーチを学ぶ~スティーブ・ジョブズ編~
なぜ、スティーブ・ジョブズ氏のスピーチは素晴らしいのか?
スティーブ・ジョブズ氏のスピーチといえば、スタンフォード大学の卒業式でのスピーチが有名だ。私も大学生の頃、英語の授業で扱ったことを覚えている。また、何らかのセミナーに顔を出すと、引用がなされたり、話が出たりする。
あのスピーチは、なぜ素晴らしいと言われるのか?紐解いてみたい。
英語版(引用元:スタンフォード大学)
訳(引用元:日経新聞)
1_構成...3部のバランスよいスピーチ
まず思い浮かぶのは、3部構成という点だ。話はポイントを3つに絞るのがよいということは、普段からよく聞くが、なぜ3つがよいのか?
調べてみると、これは、心理学者ネルソン・コーワンが2001年に発表した論文にある、人間が短期で記憶できるのは3つから5つだということに基づくようだ。人によって、記憶のしやすさが異なるのであれば、最小値3つが1番良い。聴衆に確実にメッセージを届けたいのであれば、ポイントを3つに絞る。これは、スピーチを作成するうえで、重要なカギとなる。実際、今回取り上げているジョブズ氏のスピーチでも、点と点を繋ぐ話、愛と敗北、死と3つの話が取り上げられている。聴衆の記憶ができる範囲であるわけだ。
さらに3つの話の分量も均等であり、バランスが良い構成となっていることにも気づく。また、始めの導入部分、最後のまとめ部分もあり、全体像が掴みやすい構成となっている。
2_内容...分かりやすく、共感できる
次に、内容について考える。人を説得させるときに大切とされる「ロゴス・パトス・エトス」の3要素がすべて含まれていることが特徴であろう。これらは、古代ギリシャのアリストテレスが唱えた3要素である。
ロゴスは、論理性のことである。スティーブ・ジョブズ氏のスピーチは、論理的といえる。3点のそれぞれの始めに何の話をするのか伝え、聴衆の聞く準備ができるようになっている。また、結論を支える具体例が明確で、結論に直接結びついてゆくのがわかる。
パトスは、感情のことである。これはこのスピーチで一番といっていほど特徴が出ているのではないかと感じる。それは、客観的に物事を語っているのではなく、ジョブズ氏の経験をそのまま言葉にしているからである。ゆえに聴衆を感情的に動かし、共感させることができているのだと考える。
エトスは、その人の徳や人となりのことである。ジョブズ氏は、苦難を経験しながら、誰もがその名を知る大物になった。このスピーチを名も知れぬ人がこれを発表しても同じだけ伝わってくることはないのかもしれない。スティーブ・ジョブズという人間そのものが伝えてくるものがあるのだろう。
他にも、目標、仕事、死など多くの人に共通の話題を取り上げていること、英語でも専門用語などは少なく取っ付きやすい語彙であること、キーワードが明確であることなど、大変親しみやすい内容になっていることが、聴衆に受け入れやすい内容となっているのだろう。実際、スピーチを作る際には、聴衆のことをよく知ることが重要であると言われる。
3_パフォーマンス
最後に、パフォーマンスである。間の取り方に余裕があることが特徴的であると思う。聴衆の反応を取り込みつつ、スピーチを進めている印象である。特に導入部分では、ユーモアを交えて、会場を和ませているのが印象的であった。また、全体としてはきはきと聞き取りやすい話し方である。
以上から、スクリプトを見ながら話していても、ぐっと伝わる内容になるのだろう。
半年ほど少しずつスピーチの勉強をしていたが、そこで学んだことと重ね合わせつつ、以上簡単に整理してみた。今回は初回ということで、比較などはしなかったが、今後他の人のスピーチについても見てみたい。
なんにせよ、久々にこの卒業式のスピーチを聞いてみて、読んでみて、エネルギーをもらった気がする。ふとした時に、このページに戻ってきたい。今思ったこと、この気持ちを大切にしたい。
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