異世界カフェ・ヤドリギ 懐古の香り
備考
アレンジ自由。その場合、「原案:週末のしとろん」と明記お願いします。
使用時はご一報いただけると嬉しいです。
使用する場合は「台本:週末のしとろん」と明記お願いします。
登場人物
主人公 性別はどちらでもよい
空気の精霊に近い存在
体を大気に溶け込ませることができる
狼男 体長170cm程度の人狼
主人公と同族の知り合いがいる
本編
店内の音(お湯が沸く音・静かなBGM等)
ドアが開く(カウベルの音)
店員「いらっしゃいませ。お好きなお席にどうぞ」
語り:入って来たのは、大柄な二足歩行のオオカミだ。
いわゆる狼男のようだけど、どうだろう。
彼は、店内奥のソファ席にどっかりと腰を落ち着けた。
店内のBGMが切り替わる
語り:ああ、これは聞いたことがある。
巨人スルーズの足跡にできた湖で、人魚が遊んでいる音だ。
紅茶をゆっくり口に運ぶ。
甘いりんごの香りが漂う。
語り:狼男が手を上げた。二足歩行の猫の店員がやってくる。
コポコポとお湯が沸く音
語り:りんごの香りに木の香り、珈琲の香りに獣の香り、いろいろな香りが混ざり合う。
静かなBGMの中に、まるで自分の存在さえも溶けていくようで…
(腕を掴まれる音)
狼男「あの」
語り:ふいに、ガシッと腕を掴まれた。
びっくりして目を開ける。
目の前にいたのは、狼男だ。
狼男「消えかかってましたよ、身体」
主人公「あぁ…これは失礼しました、ありがとうございます」
語り:油断すると、すぐに身体が空気に溶けてしまうのは、私たちの種族の特性だった。
主人公「よくご存知でしたね。珍しいでしょう」
狼男「あぁ、いえ、知り合いに1人いるんですよ。じゃあ、お気をつけてくださいね」
主人公「はい。ありがとうございます」
語り:冷めて来た紅茶を口に運ぶ。
BGMが変わる。
語り:おや、これは私の故郷の歌だ。
そっと、狼男に視線をやった。彼はゆったりと珈琲の香りを楽しんでいる。
語り:記憶の底から、思い出が滲み出てくる。懐かしさに浸りながら、今日も午後が過ぎていく。