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声劇台本「夜見太郎」

良い子の昔話風声劇「夜見太郎」

※本作はweb小説紹介VTuber夜見ベルノさんと声劇VTuber焔丸さんのために書き下ろした台本です。「夜見太郎」と「焔丸」のところ、夜見太郎の名付け理由のところを改変してご利用頂いてもかまいません

※自由に使える台本ですが、配信などで読む際は作者Twitterにご連絡頂ければ聞きに行きます

登場人物

主人公 夜見太郎(よみたろう)
 夜に見つけたから夜見太郎。超速でいい感じに育ち、剣の達者な爺さんに死ぬほど厳しく育てられたおかげで、やたらと強くなった。
 
敵 焔丸(ほむらまる)
 赤鬼の中でも特殊な、炎を操る鬼。かつて滅ぼされた鬼ヶ島の生き残りで、人間を恨んでいる。イケメン。
 
サブキャラクター
 爺さん
  やたら剣が達者なジジイ。クソほど厳しい。団子好き。
  
 婆さん
  普通の婆さん。昔は美人だったとか。テーマパーク鬼ヶ島の常連。

 犬養(いぬかい) 
  夜見太郎の命を狙う。人間。熟女フェチ。
  
 猿渡(さるわたり)
  犬養と犬猿の仲で、別行動で夜見太郎を狙っていた人間。アホ。
  
 キジ
  キジ。
  

夜見「うわっ!」
 爺「修業が足らんわ! 未熟者が!」
夜見「いてて……」
 爺「お主を拾ってもう十年……あれ、十年? お主、成長早くない?」
夜見「今更気づいたのかよ!」
 爺「なんかその見た目、思春期も越えちゃってない? え? 大丈夫?」
夜見「こっちが聞きてえよ!」
 婆「まぁまぁ、いいじゃないの。どうせ私らが先に死にますよ」
 爺「それもそうじゃな」
夜見「そういう問題じゃなくない?」
 爺「ところで、最近物騒らしいのう!」
夜見「唐突な話題転換~」
 爺「うるさい! 話が進まんじゃろ!」
 婆「最近、鬼ヶ島の方で物騒な事件が起きてるんですって」
夜見「えっ? あの観光地のテーマパーク鬼ヶ島で?」
 爺「ああ。夜な夜な、鬼が出て人間が暴行を受けるとかなんとか」
夜見「え、鬼なんてまだいるの?」
 婆「いるらしいのよぉ」
 爺「鬼ヶ島の株券が紙切れになっては困るからの。ちょっと様子見て、ついでに鬼退治してきなさい」
夜見「ええ?」
 爺「なんじゃ、やんのか! シュッシュッ!」
夜見「わかったわかった! もう、そんなに元気なら自分で行けばいいだろ? 仕方ないジジイだな……」
 婆「おばあさんの年間パスを持っていきなさい」
夜見「おばあさん鬼ヶ島にめっちゃ行ってるじゃん……まあいいや。とにかく、いってきまーす」

 婆「良かったんですか、行かせて」
 爺「まだ未熟だが、あやつは十分強い。もういいじゃろ。人の二倍の速さで育ったしのう」
 婆「あなたがあの子を見つけたのは、運命だったのかもしれませんねぇ」
 爺「そうじゃな……夜に見つけたから夜見太郎とか適当に付けるんじゃなかった」
 婆「適当だったんですか」
 爺「すまん……」
 婆「それは本人に言ってくださいな。それより、本当に、鬼の仕業なんですかねぇ」
 爺「さぁな……」
 
夜見「もう、人使い荒いジジイなんだからまったく……ん? おい、誰だ。さっきから後ろをつけてるだろ」
犬養「ほう、さすがはあのジジイに鍛えられているだけのことはある」
夜見「あんた、なにもんだ?」
犬養「フッ……これから殺される者に、名乗る名などない! 死ね!」
夜見「うおっ! 急に剣を抜きやがって! 仕方ねえな……やるか! せいっ!」
犬養「ぐっ!」
夜見「なんだ、この程度か?」
犬養「ほざけ! これから本気を見せてやる! ハァァ……どりゃぁあああ!」
夜見「うっ……」
犬養「うぉおお!」
夜見「はあああ!」
犬養「ククク……このまま押し切ってやる!」
夜見「ううっ……」
犬養「ん? 何か落ちたぞ…… こ、これは!」
夜見「なんだ! どうして飛びのいた!? あっ! おばあさんの年間パス!」
犬養「こ、これは……貴様、この美しいマダムは誰だ!」
夜見「えっ……うちのばあさんだけど。それより年パス返して」
犬養「ばあさんだと!? 貴様この美女をババア扱いするか!」
夜見「いや事実じゃん。ばあさんの年パス返してよ」
犬養「このマダムを俺に紹介しろ……」
夜見「はぁ?」
犬養「俺の名は犬養! このマダムを紹介してくれたら仲間になってやる!」
夜見「えっ……うん、い、いいよ……」
犬養「本当か! 絶対だぞ!」
夜見「あっ……はい」


夜見「なんやかんやで犬養の知り合いのお前もついてきちゃったけど、お前の名前なんだっけ」
猿渡「猿渡だよォ! 出会い頭に一撃で気絶させやがって!」
犬養「ざーこ、ざーこ」
猿渡「おっさんがメスガキみたいなセリフ言っても萌えねえんだよ!」
夜見「喧嘩すんなよ。そろそろ鬼ヶ島に着くぞ」
キジ「キーーーー」
犬養「あのキジ、さっきからついてきてるけどなに?」
猿渡「さぁ? きびだんご狙いじゃね?」
夜見「いや、なんでキジだけ人間じゃないんだ……」
キジ「キーーーー」

焔丸「ん?」
夜見「うわ、マジで鬼いるよ。おい! お前がこの島で人間に暴力を振るっている鬼か!」
焔丸「いかにも。この焔丸、人間が憎くて仕方ない! 我らの故郷をこんな間抜けなテーマパークにしおって……」
夜見「いや、もともとは岩しかなかったじゃん。良くなってんじゃん」
焔丸「黙れ! とにかく人間は許せん! ん? お前、犬養……裏切ったのか!」
犬養「俺は愛に従ったまで! マダムのためなら鬼とも戦える!」
焔丸「わけのわからんことを……」
犬養「あんたを追い出して、ここでマダムと遊ぶんだ!」
焔丸「くだらん事を……役立たずが……死ねぇ!」
犬養「ぐあああああ!」
猿渡「えっ! なんで俺まで巻き込まれ……ぐああああ!」
夜見「犬養ぃー! あとなんか猿ナントカぁ!」
猿渡「さる……わたり……だ……ぐふっ」
焔丸「ふん。最初から人間など当てにするものではなかったな。こんなものか。夜見太郎、貴様も同じ目に遭わせてやる」
夜見「なぜ、俺の名前を知っている?」
焔丸「当然だ。お前は憎き仇の、息子だからな」
夜見「なんだと?」
焔丸「我ら鬼は……桃太郎に滅ぼされたのだ。あの時の恐怖、痛み……忘れもせん」
夜見「まさか……」
焔丸「そうだ。貴様の父の事だ!」
夜見「爺さんが……!」
焔丸「本当は桃太郎を誘い出すつもりだったが、まあいい。貴様を人質にして、桃太郎をなぶり殺しにしてやる」
夜見「そんなことはさせない! お前は俺が倒す!」
焔丸「俺をただの鬼だと思うなよ! この……炎を食らえ!」
夜見「うっ…… くそっ……熱い! なんて炎だ……」
焔丸「ハハハ! 一族の恨み、思い知れ!」
夜見「ううっ……」
焔丸「人間は弱いな……桃太郎はあんなに恐ろしかったというのに」
夜見「うぐっ……」
焔丸「もういい、お前は殺す。桃太郎も俺の力だけで殺してやる! 消し炭になれ!」
夜見「ぐう……桃太郎……爺さん……俺に力を……」
焔丸「むっ……」
夜見「うおおおおお!」
キジ「キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
焔丸「えっ、このタイミングでお前!?」
夜見「隙あり! とりゃああ!」
焔丸「しまった! ぐはっ! おのれ……」
キジ「キーーーーーー」
焔丸「だからなんなんで急に出しゃばってんだよ!」
夜見「また隙あり! おりゃ!」
焔丸「ぐあああ!」
キジ「キーーーーー!」
焔丸「いてっ! つつくな! つつくな!」

 爺「とどめじゃああああああああ!」
焔丸「も、桃太郎!? うわああああああああ!」
夜見「爺さん、いいとこもってくなよ……」

 爺「めでたしめでたしじゃな」
夜見「最初から爺さんが鬼退治しろよ」
 爺「なに、かわいい子には旅をさせるもんなんじゃよ。そうじゃろ? キジよ」
キジ「そっすね。俺ももういい歳なんで、次は付き合えませんよ」
夜見「喋れたのかよ!」
キジ「ま、頑張れよ若者。 キーーーーー」
夜見「なんだったんだよまったく……ん? あのキジってもしかして」
 爺「ふふふ……わしの、お供じゃよ」
夜見「じゃあ犬養と猿渡も……」
 爺「いやあいつらは知らん」
夜見「知らんのかい!」

おしまい

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