ファッション的視点で捉える音楽6選②
以前投稿した「ファッション的視点で捉える音楽6選」の記事が9000PVに近いアクセスがあり、沢山のリアクションを頂きましたので、ファッションと音楽についての記事を継続的にまた投稿していきたいと思います。
今回も前回に引き続き、最近ファショナブルだと思う音楽や、ショップのサウンドトラックとしておすすめな作品6枚をご紹介。皆さまの空間演出などのお役に立てれば幸いです。
1.Moses Sumney(モーゼスサムニー)Græ
1枚目は大注目のアーティスト、ガーナ系アメリカ人のシンガーソングライター、モーゼスサムニーによる2枚組のセカンドアルバム。
まず何よりも彼の甘美なハイトーンヴォイスに一瞬で心奪われます。音楽性はジャンル分けするのが本当に難しいですが、影響を受けたのはブラジリアンミュージック、アメリカのフォーク、インディロック、ソウル、ジャズなどだそうです。
多種多様なバックグラウンドやルーツミュージックが入り混じった荘厳な音世界は、今までに聴いた事がないような意外性と、感情剥き出しのエモーショナルな雰囲気に包まれています。
デビュー以来、鍛え上げられた肉体美とルックス、モノトーンの着こなしにも注目が集まり、ファッションアイコンとしても話題に。
雑誌やウェブマガジンではデザイナーズブランドを華麗に着こなし、またTHOM BROWNE(トムブラウン)は2021年春夏のショートフィルムに彼を起用。彫刻のような美しい身体と歌唱力に圧倒される、芸術的な作品に仕上がっています。
音楽性の幅の広がりを含め、これからの活躍にも要注目です。
2.Byron The Aquarius Ambrosia(バイロンジアクエリアス)AMBROSIA
アトランタ出身のプロデューサー/キーボード奏者、バイロンジアクエリアスによる最新アルバム。
個人的にはショップのサウンドトラックとしても、非常にエキサイティングで最先端なハウスミュージックなのではと思います。1曲目の 「New Beginning」から得意のピアノ・ソロとフルートが混ざった疾走感のあるトラックで幕開け。全体を通してグルーヴィで程よくメロディアスなサウンドが展開され、心地良い高揚感とエレガンスを演出してくれます。
今回は、フルートをKai Alceやデトロイトの14KTの作品に参加したRasheeda Ali が、ドラムはプリンスやジャネット・ジャクソンらの作品に関わり2014年のソロアルバムではロバート・グラスパーやジョージ・デュークが参加したことでも話題となった名ドラマー Lil John Robertsといったベテランミュージシャンを迎え、さらにジェフ・ミルズを監修に置いてレコーディング。<Sound Signature>あたりで見られる生演奏でのディープハウスから、カマール・ウィリアムス、マックス・グレーフ、さらにはハービー・ハンコックにも共鳴するような、懐かしくもあり何処にもない圧巻のジャズファンクを聴かせていきます。思わず体が動いてしまう強力なグルーヴとメロウなウワモノとのバランスは見事としか言いようがありません。
3.Arlo Parks(アーロパークス)Collapsed In Sunbeams
リリー・アレンやビリー・アイリッシュにもピックアップされ、デビュー・アルバムリリース前から大きな注目を集めていたサウス・ロンドン出身のシンガーソングライター、アーロ・パークス。
このデビュー・アルバムは僕もかなり期待していましたが、本当に素晴らしい内容となりました。
時代を象徴するようなネオソウル、ベットルームポップ的サウンドですが、緻密に計算されたメランコリックな作風と美しいヴォーカル、彼女の個性が一体となり、エヴァーグリーンな魅力が詰まったアルバムに仕上がっています。
今どきなファッションセンスとキュートなルックスでファッション界からもオファーが絶えません。
GUCCI(グッチ)は昨年、ガス・ヴァン・サント/アレッサンドロ・ミケーレ監督、シルヴィア・カルデローニ主演による新作発表のための映画『OVERTURE of that Never Ended(終わらなかったものの序曲)』を作成しましたが、アーロ・パークスはビリー・アイリッシュやハリー・スタイルズ等と、この映画に参加し話題を集めました。
4.Ólafur Arnalds(オーラヴル・アルナルズ)Some Kind of Peace
アイスランドのマルチ・インストゥルメンタリスト/プロデューサー、オーラヴル・アルナルズの5枚目。舞台や映画音楽も手掛ける、彼ならではの幽玄なサウンドスケープは圧巻の一言。
音数を抑えたシンプルな作風で、少し物足りなさを感じさせるようなアプローチは、逆に私達の想像力を駆り立てます。MVはどれも素晴らしく、透明感のあるヴィジュアルはサウンドと非常にマッチしています。
特にコンテンポラリーダンスをフューチャーしたものはとても魅力的です。アートを感じるような独創的な空間を演出するのにぴったりの作品。
5.Roosevelt(ルーズベルト)Polydans
打って変わってポップでカラフルな一枚を。
ドイツ・ケルンを拠点に活動するプロデューサー/シンガーソングライター 、マリウス・ラウバーによるプロジェクト。エレクトロ/インディロック/ソウル/レトロモダンディスコなどを融合した、甘くて少し切ないトロピカルサウンドです。
Washed Outとのコラボレーション、Rhye、Chvrches、Charlotte Gainsbourgなどのアーティストのリミックスも手がけるなど、ニューディスコ、チルウェイブ、シンセポップと呼ばれるようなジャンルにおいて高い注目を集めています。テンションが上がるお洒落な一枚です。
6.Cassandra Jenkins(カサンドラ・ジェンキンス)An Overview on Phenomenal Nature
最後は個人的にも特にお気に入りの一枚。両親ともがウエスタンスウィング、フォークミュージシャンであるニューヨーク出身のシンガーソングライター。
アンビエントフォーク/チェンバーポップと呼べるようなエモーショナルなサウンドは、無垢でキラキラとした清々しさを感じます。
特にリード・トラックである「Hard Drive」の素晴らしさは必聴。ゆったりとしたサウンドスケープの中、サックスと重なり合うギター、シンセサイザー・サウンドを背景に、ジェンキンスのスポークン・ワードが静かに、そして力強く響き渡ります。とても美しい。
エイドリアン・レンカー、フィービー・ブリジャーズ、ザ・ウェザーステーションなど、女性ヴォーカルのサイケデリック/アンビエントフォークはここ数年豊作です。
おわりに
最近の趣味嗜好としては、ルーツミュージックやフォーク、ソウルなどと言ったオーセンティックなサウンドを現代的な手法で解釈しているものに惹かれます。
ファッションもモダンなスタイルの中に、ボヘミアンな雰囲気だったりクラフト的な芸術性だったり、原始的な輝きがあるものに目が行きます。
特別意識はしていませんが、求める音楽のイメージとファッションの気分は、自分の中でやはり常にリンクしています。
ファッション的な視点で音楽を聴いていくと、違った角度から新しい発見もありとても楽しめます。
皆さまも今のファッションの気分や空間に合う音楽を是非探してみて下さい。