【掌編小説】魔法使いの弟子
数多くのモンスターを倒してきた魔法使いミラベーユの弟子になって、はや二年。
なのに今の自分に出来ることといったら、小指の大きさの炎がポッと出て、三秒後には消えてしまう程度の魔法。これじゃ、モンスターになんのダメージも与えられない。十二名いる弟子の中で俺が一番下手くそだ。
「俺、才能ないみたいです。役に立たなくてごめんなさい」
師匠に弱音を吐いてしまった。
「見てやるから、もう一度やってごらん」師匠が言った。
「はい」
杖を回しながら呪文を唱える。
小っちゃい炎が現れた。
そこに師匠がいつの間にか取り出していたタバコを大急ぎであて、深く吸った。タバコに火がつき、炎の方は消えた。
「役に立ったじゃないか」師匠が煙を吐きながら言った。「ちょうど吸いたいところだったんだ」
「でもこれじゃモンスターは・・・」
「モンスターは倒せないな。でも才能がなかったら、そもそも炎は出ないさ。出たら、次は大きくすればいい。それは努力でできるよ」
そう言うと師匠は「あ、ここ喫煙禁止だったな。今度また火貸してくれ」と苦笑いして、外へ出ていった。
ふと気づいた。
あれ、師匠タバコやめてたんじゃなかったっけ。俺が呪文を唱えている間に魔法でタバコを出したのかな。すみません、こんな俺のために・・・
まだ努力が足りなかったのかもしれない。
もっとがんばります、と心の中で誓った。
<完>
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