理事輪番制の危険性


(弊社代表須藤桂一のコラム マンション管理業界のホンネより)

管理組合の理事の任期は2年の半数改選が私の持論です。目指すところは区分所有者全員が一日も早く理事を経験することです。なぜなら理事を一度でも経験すると、当事者意識が向上し無関心者層が減ると期待しているからです。大型マンションにおいては現実的には難しいものの、理事会運営を身近な存在とするためには、全員が早く理事長という「責任」を経験したらよいのではないかと思う次第です。

輪番制の仕方としては全員に早く理事会に関わって欲しいからといって、1年任期の全数改選の輪番制を推奨するのかというと、そうではありません。全数改選に異を唱える理由としては、たった一年間理事を経験しただけでは、何もわからないうちに時が過ぎてしまう。という事が挙げられます。

理事会運営についてやっと全体像がわかってきたころには任期が終了してしまうという理事会に対する関わり方への稀薄性を生むと考えます。この構図は随意契約の管理会社や保守会社、あるいは新築時のデベロッパーにとっては、実は好都合だと気付いているでしょうか。1年毎の希薄な関わり方しかしない理事たちはとても扱いやすく、自分たちの言いなりで楽な理事会体制を生み出します。
プロである管理会社などは、その傾向を重々承知しているため、新築時点で「理事任期は1年の全数改選」がデフォルトとして設定されているマンションがほとんどです。

では、どう解決したらいいのでしょうか。私達が多くのマンション管理組合とお付き合いしてきた中で、一番バランスがよく、主体性のあるマンション管理組合となる体制は、「任期2年の半数改選」という仕組みを取り入れることだとお勧めしています。

しかし実際に「1年任期の全数改選を2年の半数改選に変更しましょう」と提案すると、マンション区分所有者のほとんどの方が下を向いてしまいます。面倒くさい理事会のお役目は1年我慢すれば義務が終わると思っているのに「更にもう1年やらなければならないのは勘弁してほしいなぁ」と。

でも、そのように仕組みを変えることで得られる「良い事」は非常に多くあることを知って頂きたいと思います。社会情勢的にも物価の上昇で家計費を見直していかなくてはならない将来を見通して、マンションの資産状況を良好に保てるか否かを決める原動力となる、理事会の活動内容や経験、検討内容を確りと先に引き継いでいく「継続される仕組み」の構築は、安心できるマンションライフの実現のための大切なポイントです。

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