計画修繕と事後保全


(弊社代表 須藤桂一のコラム マンション管理業界のホンネより)


「予防保全の方が結果的に安く抑えられる」に疑問!


「計画修繕」と「事後保全」という言葉があります。

わかりやすく言うと、電球が切れたら、切れた電球をその都度取り替えることが「事後保全」。一方で電球の色が多少変わってきた段階で、球切れなどがおきていないにもかかわらず、一気にすべての電球を取り替えることを「計画修繕」 と言います。 マンション管理組合における大規模修繕工事の設計者やコンサルタントの中には「事後保全より予防保全のほうが、結果的に費用が安く抑えられますよ」などともっともらしい事を言いながら、多くの提案をしてくるケースが多く見られます。

しかし私の眼から見れば、これは大嘘です。


よく考えてみて下さい。車に置き換えてみましょう。3年おきに車を買い替える、いわゆる「計画保全」で3年ずつ乗り換え9年が経過したケースと、1台で修理をしながら9年間乗りつぶした「事後保全」のケースで比較したとします。

3年毎に新車に乗り換えていれば、当然故障はほぼ無いでしょう。この場合、新車を3台買う費用の合計が累計コストになります。


一方で9年間同じ車を乗り潰す場合は、故障や不具合が発生する度に修理を行う、いわゆる「事後保全」の場合の負担費用は、1台分の新車購入費と修理費となります。両者をあわせても、車一台を乗り潰す「事後保全」 の方が安くつくことは、直感的にご理解いただけると思います。

これはマンションにも言えることです。資金 の無駄な流出を防止して、計画的に建物の保全を行っていくことは、大規模修繕工事の為の修繕積立金会計の破たんを防止する、非常に大切で必要な知恵となります。

以上の事からマンション管理組合では、基本的に「事後保全」を念頭に対応していくべきだと考えます。経年による建物の劣化は避けて通ることはできません。大規模修繕工事の実施サイクルについては、汚れが目立ってくる築15年~築20年程度で第1回目の修繕を実施し、その後は同じ15~ 20年周期で工事を重ねていくことが理想的だと考えています。(実施周期は、建物の状況をしっかり把握することが大切です。)


繕積立金の破綻が懸念されるマンション管理組合は「長期修繕計画書上12年周期で大規模修繕工事が計画されている」とか「ひび割れている」「タイルが浮いている」などの写真や言葉を並べられ、直ぐに大規模修繕工事を実施する事は決してしないでください。一度立ち止まって様々な方向から吟味することが大切です。但し機能的には問題ないとしても、流石に大規模修繕工事の周期が20年を超えると汚れが目立ち、見るからに汚れたマンションになる可能性もあるので、分譲マンションは美観という視点も鑑みる事も必要です。


ともあれ、設計者やコンサルタントの「予防保全のほうが結果的に安くつく」なんていうセリフは決して信用しないようにして下さい。


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