「ユーザーの声」をガン無視してきたあのサービスは、強い
Text by 塩谷舞(@ciotan)
サービス提供者とユーザーとの距離が、良くも悪くも「近すぎる」のが、インターネットというもの。
リアクションがすぐにわかる、相互コミュニケーションが実現する、親近感がわきやすい……といったポジティブな面もありますが、
SNSなどは従来の「お客様お問い合わせ窓口」に比べて意見を書き込むハードルはめちゃんこ低いですし、時にはあらゆる意見が批判になり、それが膨らむと炎上して、サービス停止に追い込まれてしまう……というようなネガティブな面もあります。
(まぁ、これをインターネットの自浄作用……と言ったりもするので、ネガティブなだけではないですが!)
私はmilieuというWebメディアを運営していたりしますが、WebサービスやWebメディアに関わっていると、本当に様々な声が届くんですよね。
たとえば、「バズ」を主戦場にしているWebライターだと、こんな感じです。
まず、良い記事を書いた時には……?
逆に、納得のいかない記事を、どうしても出さなきゃいけない時は…?
ぐああぁ、胃が痛い……。
まぁこれはちょっと誇張した表現ではありますが、実際に起こりうることでもあります。
(スマホ対応出来てないです〜〜的な意見はめっちゃ来るので、WebライターやWeb編集者は「サイトのデバック」も必修科目としてマスターしておいたほうが良いと思いますね…)
そして人は、指摘を受け続けると「確かにそうだな……」と思ったりする訳でして、「1度指摘されたことは改善していこう!」とグロースハックに務めるわけです。(だから、インフルエンンサーってグロースハック気質の人が多いんですよね)
とりあえずベータ版でローンチしてみて、ユーザーの声を聞きつつグロースハックしていって、最適化していく……。
それはインターネット的な王道の成長方法です。
しかし、あり得ないレベルにユーザーの意見をガン無視しているWebサービスがあります。
「URLをはったら、リンク先に飛べるようにして欲しい!」
「画像をローカルに保存したい!」
「テキストを改行したい!」
「PCからも投稿したい!」
「画像加工だけに使いたい…!」
「複数ワードで検索したい!」
……こういうユーザーの小さな、そして恐らく大量に届くであろう声をガン無視して成長し続けているのがそう、みなさんご存知
インスタグラム
です。
いやぁ、これだけ普及してるのに超不便ですよね〜〜〜。
たとえば「#渋谷 #ラーメン」の複数ハッシュタグで検索したい。
公式アプリからは複数タグの検索が出来ないので、「Tastime(テイスタイム)」という外部アプリを使って、渋谷エリアのラーメンの店を探すことは出来ます。あーーこれがインスタグラム内で出来たら便利なのに!!!
たとえば、Instagramのフィルターが好きだから、画像加工だけに使いたい。
そんな時は、一度iphoneを「飛行機モード」にして、画像を加工したのち、アップロードをわざわざ失敗させて、カメラロールのみに保存。これでタイムラインには公開せず、加工した画像が手に入るよ!!
もしくは、誰も見ていない鍵垢を作って……って、めんどすぎるでしょ〜〜!
たとえば、Instagramで外部メディアの記事を紹介したい。
画像投稿欄のテキストにURLを貼ってもリンク先に飛べない仕様なので、「記事のURLはプロフィール欄からリンクをはってます!」ってわざわざ書いて、毎日のようにプロフ欄のリンクを書き換えて……ってめんどくさすぎる〜〜〜〜〜〜〜〜!
ちなみに私は最近、はましゃかに教えてもらったLinktreeというサービスを使って、プロフィール欄から複数のリンク先に飛べるような一覧画面を置いてます。こんな感じ。
しかし、ここからリンク先にとんでも、Safariで開けないという、これまた究極の不便っぷり……。はあああああああああ…
インスタグラム経由で外部メディアの記事を読む→読了後にTwitterなどの他のSNSでシェア、というのは、ほぼほぼ不可能な導線になってるんですよね(涙)。
まぁ色々と裏技を使えば、
「URLをはったら、リンク先に飛べるようにして欲しい!」
→しかたなくLinktreeを使う
「画像をローカルに保存したい!」
→外部アプリで保存…というのが一般的でしたが、なぜかこの手のサードパーティーのアプリがどんどんApp Storeから消されていますね……。PCからあの手この手で保存することは出来ますが、まぁ面倒です。
「テキストを改行したい!」
→「改行くん」って外部アプリを使って改行する
「PCからも投稿したい!」
→開発者向けツールを駆使して投稿する
「画像加工だけに使いたい…!」
→飛行機モードにして投稿、ローカルに保存。
「複数ワードで検索したい!」
→外部アプリを使う。食べ物系の場合は「Tastime」など。
などで、なんとかなりますが、しかしまぁ、めんどくさい。それでもみんなが使うInstagram。
もちろん便利にしようと思えば、どんどん機能を増やして、便利にできたはずです。
ただ、明らかに出ているユーザーの声をガン無視し続けてるのにインスタグラムが普及してることを思うと「ユーザーの声を素直に聞く=サービスが普及する」ではないんだよなぁ…と思わされます。
もちろん、機能を制限することで防いでいるのは、うまいことビジネス活用する企業の参入です。まずは長年かけて、スマホネイティブな世代がピュアな友達同士のコミュニケーションや、憧れの人を追いかける場所として使ったりする空気を、大切に大切に作っていた。
その上で企業に対しては「リンク貼りたければ課金して広告出してね」って回収してる。
先行投資してピュアな世界を作り上げたサービスは、のちのち広告収益を得やすいよなぁ、とも思います。まぁ、最初Instagramに広告出たとき、ユーザーからはフルボッコに叩かれてましたけどね……。
不便な点についての理由を考えてみますと、
改行できないのは、日記サービスになるよりもあくまで「グラフィック」をメインにした直感的な空気を醸成したいからかな? と思うし、
画像加工アプリとして使えないのは、あくまでも「コミュニケーションSNS」であって、写真加工アプリではない、という軸があるからなのでしょう。
画像加工アプリであれば、「私が好きなのはFoodie」「私はVSCO」「私はPhotoshop」と好みによって別れてしまいますし、あくまで「便利か否か」が使用基準になるため、より機能性の高いアプリがあればすぐにリプレイスされてしまいます。
コミュニケーションSNSであれば、VSCOで加工しようが、Photoshopで加工しようが最後のアウトプットはみんなInstagramに集中しますし、他に替えが効かなくなります。
一番引力があるのは、機能より、オシャレさより、「友人がそこにいる」「オーディエンスが獲得できる」ってことですもんね。
ワガママにサービスを運営する大切さ
これは何に置き換えても言える話です。
たとえば私の場合、少し前まではクライアントから
新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。