記事の書き方、基本編。「花・幹・根」で大切なのは?
こんにちは、塩谷舞(@ciotan)です。
ここ数年、「Webで伝わる記事の書き方」のような講座を持たせていただく機会が本当に多かったのですが……
「ライターになりたい!」という方の記事を添削しながら「ううううぅ〜〜ん……?」と頭を抱えてしまうことも多かったんです。でも、そういう記事でも、書き出しや、パッと見た感じはすごく良さげなんですよね。言葉選びは美しいし、漢字とひらがなのバランスも適切だし……。
でも3行、4行と読んでいくと、すぐに置いてきぼりにされるというか、読んでいる側が迷子になってしまう。まるで巨大迷路のごとく、「で、出口はどこですか〜〜〜〜〜……???(涙)」と不安になってきてしまうんです。
どうしてここまで迷い込んでしまうのだろう……と思っていたのですが、このツイートを見てハッとしました。(以下ツイート埋め込みですので、メールで読んでいる方は、ブラウザかアプリにご移動くださいね)
そ、そ、それや〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
論理が詰まっていないのに、表現ばかりに目を向けちゃうとそうなるんや〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
ちょっと図にしてみました。記事という名の樹です。どぞ。
笑けるほどに絵が下手なのはスルーしていただきたいのですが、
・表現=花(どんな文体にするか?写真は?デザインは?語尾は?etc...)
・論理=幹(どんな文章構成にするか?問いは?根拠は?結論は?etc...)
・知識=根(その記事を書くにあたって、前提として知っている知識や、学んだこと、考察していること)
という三大要素があり、記事が成り立ってるんですよね。あと樹でいえば葉っぱが、記事の本文……という感じですかね。
なんだかこの図、どこかの塾とかで見たことありそうなアレですけれども……。(というか、大学生の時、アルバイトとして塾で小論文の書き方を教えていたのですが、こういう感じの図解をしていた気もする)
で。ここから私の情けない懺悔です。これまで私、このマガジン『記憶に残るWebメディアの作り方』で、「花」の話ばっかりしてきてしまった気がするんですよね………。
どうすればシェアしてもらえるか。そうすれば読みやすいデザインになるか。そういう「伝え方」の話ばっっっかりしてきました。花、花、花!
うん……ここに書いてあるような、方言もリズムも個性も表情も大事、大事なんですけど……
これらすべて、根っこと幹があった上での話ですよね……!!!
さてもう一度、このイラストを。
うさちゃんが「キレイなお花だなぁ〜」と、お花だけに注目していますね。
これ、いち読者としては普通の姿だと思うんです。「良い構成だな〜」とか「知識が豊富だな〜」とか、そこまで踏み込んで読むのは同業者か専門家です。そんな深読みしてくる読者こわい。逃げたい。
でも自分が書く側になると、お花のことはとりあえず最後でいいんです。
ただ、インターネットに溢れる記事に咲き誇るお花たちを毎日まいにち見ていると、「あんな感じのお花を咲かせよう〜」と真似したくなっちゃう……
でもそうやって、お花を手に入れようと近道すると……
「雰囲気だけそれっぽいのに、中身スッカスカの記事」
が出来上がってしまう……!!!アァーーー…
あとたまに、経営者や科学者のインタビューなどで「話の内容が難しかったから、テープ起こしをそのまま記事にした」みたいな状況も見かけるのですが、それは書き手の根っこ(知識や理解)がない状態なのでヤバいです。
書き手が理解していないものを記事にしたところで、読み手に伝わるわけない……!!
キレイなお花を手がけるのは最後の最後で良くて、まず第一に知識。そして構成。知識だけではなく、それをアレンジするための思考力なども必須です。
不幸なことに、最初は論理的で良い記事だったのに、あらゆる人の編集が入ることによってどんどん「幹を失って支離滅裂になる記事」とかもあるのですが……。
じぶんの記事を分解して、言語化してみる。
手始めに、自分で書いた過去記事を、分解してみましょう。
過去記事をしっかり分解して、それぞれの「幹」の要点がしっかり伝えられれば、読者が迷子になることはありません。
私もここでひとつ、私の直近の記事を分解してみることにします。milieuで書いた、 #dearMoon にまつわるコラムですね。未読の方はぜひ読んでみてください!
ありがちですが、これを「起承転結」に分解すると、こんな感じ。真面目な内容なので、ラフに関西弁でまとめていきますね。
■起
前澤さん、宇宙行きはるらしいで。アーティスト連れていきはるって、やばくない?
■承
そもそも、アートや文化的資産って歴史的にこうやって、権力をPRするために作られてきたやんか。ピラミッドとか。
■転
私のやりたいことと比べてみよ。いやぁ、前澤さんのやらはること、規模でかいわぁ。
■結
これは美術史、人類史に残るすごいプロジェクトやでぇ。めっちゃ楽しみやわ。
……という感じで構成されています。お次に、これらをより詳しく解説していきますね。
■起
前澤さん、宇宙行きはるらしいで。アーティスト連れていきはるって、やばくない?
……まずはプロジェクトの全体像の説明です。知ってる人も、知らない人も、ここで全貌を掴んでいただきます。前提条件を共有して、足並みを揃えます。(英語翻訳記事も出しているのですが、そちらでは「前澤さんとは何者なのか?」という解説も増やしています)
■承
そもそも、アートや文化的資産って歴史的にこうやって、権力をPRするために作られてきたやんか。ピラミッドとか。
……ここで、私自身の「根っこ」に収納されていた知識を活用しています。私は(劣等生でしたが一応)美術学部で西洋美術史を少し学んでいたので、このあたりの教養がベースにあります。
そこから使えそうな部分だけを引っ張り出してきました。(記事を書きながら、あらためてサラッと西洋美術史の本を読んだりもしました)
■転
私のやりたいことと比べてみよ。いやぁ、前澤さんのやらはること、規模でかいわぁ。
……歴史の話だけをしてもリアリティが薄いので、「今の私」と前澤さんを比較することで、いかにこのプロジェクトが常人離れしているかを表しています。親近感ゾーンです。
■結
これは美術史、人類史に残るすごいプロジェクトやでぇ。めっちゃ楽しみやわ。
……まとめです。「承」の部分での歴史的な話をあらためて出しつつ、壮大なムードで文章を終えられるようにしています。
……という感じでしょうか。
実際のところ、私はゴールを定めず、感性のままに書き始めるタイプです。
まずは自分の中の「アーティスト人格」を最優先して、好き勝手に書く。だから書いている間にバリバリ脱線するし、想定と違う場所に着地したりします。時に支離滅裂です。書きながらどんどん興奮してきて泣いたりする(ヤバい)(だいぶヤバい)。
で、それだけだと「散らかったヤバい文章」になってるので、それを後から、別の「編集者人格」を呼び起こし、足したり引いたり削ったりしています。(これがキツい)いつも2万文字くらい書いて、最終的に7000文字くらいに整形していきます。めちゃくちゃ疲れます。
私もまだまだ「最高の書き方」にはたどり着いていないだろうし、「これが正解!」だと言えることもありません。ネット業界は移り変わりが爆速なので、私のような人間も教える側に立たせていただくことが多いですが、本当に日々模索中。
でもやっぱり、仕事として定量発信すべき立場の人であれば、最初に「起承転結」をしっかり決めて、箇条書きで「幹」をハッキリさせてから書き始めるのが一般的だとは思います。そうすると書き直しの無駄も少なく、読者にも明確に伝わりやすくなるかと……!
という感じで、今日は記事を書くときの「幹」と「根っこ」の話をしてきた訳なのですが……でもこれって、なんというか……小学校の国語の授業でもさんざん学んだような気がします。うぬぬ……。
でも、それでもこれをあえて書かなきゃいけないのは、私のようなインフルエンサー型ライターの責任というか、功罪(むしろ罪)が大きいなぁ、と。
SNSで良い面ばかりを露出し、個性を出し、いかにも楽しそうに文章を書いている……そんな姿を伝え続けていると、文章よりも「個性」や「伝え方」ばかりに注目がいってしまうのも、仕方ないなぁと。
少し残念なのですが、インタビューを受けても、「ブランディングについて、何を意識してますか?」だなんて聞かれることが本当に多い。いやそこですか? って思っちゃうんだけれども。まぁそうなるよなぁ。
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新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。