色を制するものはInstagram時代を制す
SNS時代の追い風を受けて有名になっているクリエイターさんのことを考えてみると、ほとんどの場合「その人の色」があったりします。
色……というのは、個性、みたいな意味もりつつ、わかりやすく「イメージカラー」みたいなもの。
これは間違いなくInstagramの影響で、Instagramが1画面に9枚のパネル表示形式じゃなかったら、ここまで「色」は重要じゃなかっただろうなぁ……と。各SNSの、スマホに収まる画角を見比べてみると、
Instagramでの圧倒的な「色」の役割よ……!
Instagramのサムネイル一覧では、もちろん書いてあるキャプションは読めないし、「何が写ってるか?」というのもパッと認識しにくい。だからまず最初に入ってくる情報は、色です。(情報誌のように大きな文字を写真の上に載せている人もいますが……)
そもそも色って、人の心に大きな影響を与えます。ファストフードが赤い色を使って回転率を上げてるとか、刑務所の部屋をピンクに塗って受刑者の攻撃的な心をしずめるとか……
近しい話かもしれないのですが、私もmilieuを作るとき、「勢いにまかせて暴言を投げつけられるメディアにはしたくない」と考えました。
そこで、色の力を借りました。水色を中心とした寒色を全体のトーンにして、夜明けのようなグラデーションを背景に用いることで、「読んでいる間に心が穏やかになりますように」という願いを込めています。
http://milieu.ink/
水色や青は、いらいらした気持ちを落ち着かせたり、平和な気持ちでいたい……といった時に効果があるそうです。
対象的に、女性をエンパワメントするメディアblastはカラフルな中で赤が多様されています。赤は勝負するときの色であり、アドレナリンを分泌して興奮を促す効果もあるんだとか。blastを見ていると「私も自分の意見を述べよう!」とエンパワメントされるのですが、色の効果も大きいかもしれません。
色は秒で伝わる自己紹介ツール
情報が爆発的に増えているSNS社会の中で、みんな様々な情報を秒でスワイプしています。
個人やメディアが「色」を発信することは「私はこうした人柄である」「こうした世界観のメディアである」と、1秒以内で伝えているようなものだなぁ……と思わされます。
そしてこれは、壇上に上がる人ではなくても、今、多くの人が強く意識していることです。
たとえば。
Instagraのハッシュタグでもよく使われている #ワントーンコーデ は、全身を1色のトーン(ベージュ系が人気)で揃えること。
(この記事を書きたいために真っ白な写真を撮ったら、信じられないくらいにエンゲージメントが高かった……ワントーンはSNSタイムラインでも秒で理解できて目立つのです……)
しかし一昔前は、全身モノクロとかは普通でしたが、(よほどの森ガールでもない限り)全身ワントーンで揃える……なんてファッションはあまり見かけなかったように思います。
そもそも、この「ワントーンコーデ」という言葉、いつ頃から使われだしたんだろう……?とGoogleトレンドで検索してみると……
2012年の3月に登場し、2013年の5月に一度目の山が出ています。それはちょうど、CARVENやアレキサンダーワンなど、様々なファッションブランドが全身ピンクや全身ブルーなどのコーディネートを提案していた影響も大きいでしょう。
ですが、本格的に盛り上がっているのは2015年あたりから。Instagramが日本で爆発的に広まった頃と同時なんです。
これまでは、ファッションは「リアル」の場で楽しむものでした。対面相手が見るのは主に顔まわり。だから、どんな柄のブラウスを着るか……とか、主に顔面の印象を左右するトップスの役割が大きかったように思います。
しかし。
Instagramが登場して、ファッションは「手のひらサイズの画像」としても楽しむものになりました。顔周りだけではなく「全身でどう見えるか?」を、みんなが強く意識するようになったように感じています。
そこで人気を集めているのが、サムネイルを1秒見ただけでインパクトのあるワントーンコーデなんです。
ちなみに、より色別に分かれた #ホワイトコーデ #ピンクコーデ #モノトーンコーデ などのハッシュタグも人気です。
そして。こうしたワントーンコーデをまとって出かけたい場所……といえば、そのワントーンがハマる場所です。
そもそも、配色の教科書などでは「ベースカラー:サブカラー:アクセントカラー = 70:25:5にしましょう」といった配色の法則があり、確かにそれは多くの商品や空間で用いられています。こういうやつ。
しかし、この法則には乗っ取らない空間がどんどん増えています。たとえば……?
新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。