私は、美しい暮らしが好き
哲学者の友人、谷川さんに誘ってもらい、同人誌『暮らしは、ことばでできている』に寄稿しています。
私はただ、美しい暮らしが好きなんよ!という話をしているのですが、本になったものを開くと、前書きで拙著のことに触れてもらっており、友よ!!!!という嬉しさがありました。
前書き、そして販売先情報はここからもご覧いただけます。
ここからは、私の文章のみを掲載させてもらうのですが、本として読みたい、という方はぜひ実物で。穏やかや日記がありつつ、渡辺祐真さんと谷川嘉浩さんの鋭利で読み応えたっぷりな対談もありつつ……という、個性がゴロゴロと自由に詰まった一冊です。鴨葱書店(京都・南区)と、UNITE(東京・三鷹)、本屋B&B(東京・下北沢)で置かれているとのこと、さらにリンク貼ったところはオンライン販売もあるようです。
ではでは、以下は私の叫びをば……。
ーー
「あなたはなぜ、美しい暮らしが好きなのですか?」と問われたとき、内心穏やかではなくなる。あぁ、この人はこちらに討論を挑んできているのか……と。
いや、前提として私は美しい暮らしが好きで、さらにそうした嗜好を本やSNSで公言しているのだから、取材などの場で「なぜ好きなのか」と尋ねられることにはなんの不思議も不満もない。それに「好き」の内訳であればなんぼでも喋ることができる。たとえば部屋の角に寸分たがわずフィットする古道具を探すことや、旬の野菜を使って試したことのない調理法に挑戦すること、ゴミの適切な分別方法を調べ実践すること──そうした行為の喜ばしさについては何時間でも喋りたい。だって好きなのだから!
ただ、「なぜ、美しい暮らしが好きなのですか?」という質問の後ろに控えているのが「そんなことしている余裕があって、結構なことですね」という冷ややかな態度である場合、状況は変わる。己の偏愛を無邪気に語ることは許されず、まずは眼の前の相手に事の成り立ちや重要性を説明して、納得してもらわなければ次に進めないのである。えぇ、本当にそんな応酬が発生するの? と思われるかもしれないけれど、取材の場などで(とりわけ、相手が女性記者である場合は)まま起こることなのだ。たとえば以下のような具合に。
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新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。