【連載エッセイ】嗚呼・・・熟年婚活~[7. Wind is blowing from Asia ー Mr.F]
結婚願望がなかったワーキングウーマンのチャレンジはいかに・・・
「次のTokyoは、〇月〇日だよ。」
私のスケジュール帳には、彼に会いに行く日時がコンスタントに書き込まれるようになる。
冬の気配がしてきたころ
次にマッチングしたのは、アジアの国の外国人。
9歳年下で、どうやらバツイチらしい。
職業は国際線のキャビンアテンダントで、世界中を飛び回っている。
日本語は少しわかるし話せるようだけど、ほとんどコミュニケーションは英語だ。
Totemo kawaii desune.
Anatani kyomiga arimasu.
こんなふうにアプローチメールがくる。
お相手は外国人でもいいと思っていたので、お!来た。と思った。
マッチングには至らなかったけど、外国人は彼の他にも6~7人アプローチが来たと思う。
毎月東京に行っている。といって、かなり積極的にアプローチされた韓国人の方を始め、アメリカ、ドイツ、イギリス、オーストラリアなどの欧米人からも来た。
18歳のときカリフォルニアへ、20代半ばにNYに語学留学し世界のさまざまな国から来た若者たちと毎日過ごした経験から、いろいろな国の人との交流には免疫ができている。
日本人男性とは異なり、アプローチの仕方はストレートで分かりやすい。
たいてい、誉め言葉を冒頭にもってくるからツカまれる。
キレイデスネ。カワイイ。
ビューティフルとか、ゴージャスとかソーキュートとかまっすぐに言われて、悪い気はしないものだ。
特に欧米人の方たちのアピールは、日本人を含むアジア人に比べてうまいな、と感じる。
でも、もちろん人それぞれで、好みじゃない方、バックグラウンドを知って興味がない方などなど理由も各々で、ごめんなさい。することになる。
そんな中、人懐っこいアプローチで現れたMr.F。
アプリの自己紹介は、33歳。自己紹介は職業のほかはさらりとしか書いていなくて、ほとんどブランク。
33歳は私には若すぎ。対象外だな、と思い積極的に返事をする気持ちはなかったのだが、Mr.Fは短い文章でなんだか一生懸命にメッセージを送ってくる。
アプリ上で3回くらいやりとりすると、フライトが多くてアプリを開くのが容易にできないからと、メールアドレスを交換。すると、羽を伸ばしたようになめらかなメッセージがマメに届く。
やりとりは英語だが、アジア人だからか親近感がある英語で疲れない。
こちらも多少間違っていると思うものの、スラスラとメッセージを書いて送る。
メールでやりとりを始めると、本当の年齢は38歳だという。
そうなんだ。
38歳もだいぶ年下だけど、33歳に比べればぐっと大人だ。
しばらく、あまり得意ではない年上のおじ様たちとばかりやりとりしていたので、Fくんとの会話は軽やかで新鮮だ。
英語自体が新鮮だし、しばらく使っていなかった英文の読み書きの脳神経を使うので、自分の中のいろんなところが活性化している。
私にはCAの友だちはいないので、CAとして世界を飛び回るFくんの日々の様子を知るだけでも、私にとっては新鮮な話題。
聞きたいことも次々にあって、頻繁かつマメなFくんとのメールはとても楽しくなってきた。
すると、「次のTokyoは〇月〇日だよ。あなたに会いたいです。」
という「会いたい」アプローチ。
どこでどうやって会えばいいのかしら。と、要領がわからない私。
外国からのフライトだから、到着時間、帰国フライトの出発時間は決まっているわけで、その隙間時間に会うことになるのは必然だ。
ということで、
彼からの待ち合わせの指定は、成田空港ターミナルビルの某所。
時間は20時過ぎ。
待ち合わせたら、電車で成田駅にいっしょに移動して駅の近くでごはん食べよう。
と提案された。
東京で初対面する場合は、たいてい昼間カフェなどで1時間くらいを目安に会う。
21時前くらいからお店で1時間くらい会い、成田から帰ってくるのだと考える。
片道2時間かけて会いに行き、2時間かけて帰るわけである。
すごく彼がナイスガイで、話が弾んで1時間をオーバーすることも考えて
成田から都内へ帰る最終電車の時刻もあらかじめチェックしておく。
いちおう本物のCAだろうから、怪しい男ではないと思いつつも
やはりどんな人かわからないし、何といっても成田という場所は彼のほうのテリトリーである。私はせいぜい年に1度海外に行く時しか縁がない空港だし、成田駅にも降りたことなし。けっこう慎重な私は、何かモンダイが起きたときのことを想定したりして、勝手がわからない場所でしかも夜、というシチュエーションにキンチョーしながらスカイライナーに乗った。
クリスマスも近づく12月。
成田は都心より寒い。
防寒して、おしゃれ用のコートを着て成田空港の待ち合わせ場所へ向かう。
まちがえて反対側のゲートに行ってしまい、焦って余裕がなくなった。よくわからないターミナル内を小走りし、顔はキンチョーで渋顔になっていた。
あ、あのひとかな?
フライトの到着が定刻より早かったようで、けっこうしばらくそこで待っていた様子の、スリムで背の高い短髪の男性がいた。
彼は私に気づくと、表情を和らげて私の名を呼び掛けた。
おぉ、会えた。
近づくと、とても嬉しそうに笑って「来てくれてありがとう。会えてすごくうれしいよ。」という。
彼も、私が本当に現れるか心配していたのかもね。
彼は慣れた様子で私をエスコートし、電車に乗って成田に出た。
駅前の庶民的な居酒屋のひとつに入り、しゃべりだす。
彼はとてもソフトな声としゃべり方で、静かなキャラクターの男性のイメージ。
仕事終わりで、お腹が空いているところへ生ビールと、大好きだという和食のつまみ料理を嬉しそうに食べながら、彼のほうはどんどんフランクな感じになってくる。
私は帰りの時間が気になって、だらだらしないで聞きたいこと聞かなきゃ。
と、時間が経つごとに少々焦る気持ちと、自分のつたない英語にやきもきしながら時計を見る。
もう、そろそろ私帰らなきゃ。
と促し、居酒屋を出たが、すかさず彼のうまいウソにまかれてタクシーにいっしょに乗らされてしまう。。。
成田から東京方面行きの電車に乗ったのは、
翌日、もう陽が高くなったころだった。
「次のTokyoは、〇月〇日だよ。」
迂闊にも、外国人のFくんから会える日のメッセージが来るのを、
毎日毎日待ちわびる日が
始まってしまったのだった。
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