【連載エッセイ】嗚呼・・・熟年婚活~[9.大事なときに大事なひとってーMr.B・E&Mr.F]
結婚願望がなかったワーキングウーマンのチャレンジはいかに・・・
「大丈夫ですか!」
「Are you OK?!」
世界最大級マグニチュード9.0の巨大地震が発生した。
平日午後2時45分すぎのことだった。
たまたまオフィスに出勤していて、会社にいた人たちと恐怖と混乱を共有、情報も共有すると、暗くならないうちに早く家に戻ったほうがいい。ということになる。
エレベーターが動かなくなり、オフィスビルの11階から非常用階段で降り表通りに出る。
地下鉄も全線運転が止まり、国道246号線沿いを渋谷方面、千代田区方面へと両サイドに人々があふれて異様な光景になっていた。
人々は老若男女それぞれ困惑と不安を表情に浮かべながら、足早に歩いていた。
私も早く帰ろうと歩き出す。
一人暮らしの私は、年中日々深夜~明け方に帰宅し2時間ほどの睡眠でまた出社する日々を多少でも楽にしようと、オフィスからタクシーでもすぐに帰宅できる場所に引っ越していた。
代々木公園の中を横断すれば、元気にスタスタと歩いたら、おそらく25分ほどで帰宅できるところで、歩ける距離でよかった。と思った。
その日は7センチヒールのロングブーツを履いていたことで、ガシガシと歩けず16~7分歩くと足や腰が疲れ、ちょっと休憩することにした。
この状況でいろんな人たちを思い起こし、それぞれの安否を心配する。
気づいたことは、みんなそれぞれ家族やパートナーがいるということ。
そこで自分のリアルな現実を深く見つめた。
私の安否を気にかけて連絡してくれる人は・・・
いない。
と思ったとき、B氏、E氏と交際中なのだっけと思い出す。
お二人ともそれぞれ家に帰れば一人のはず。
大丈夫かしら。
と、二人に急いでメッセンジャーで安否確認を送ろうとすると、
「rocoさん、大丈夫ですか!」
とE氏からメッセージが入る。
なんとも言えないじんわりと温かい感動がハートにしみこんでくる。
「ありがとうございます!大丈夫です!」
お互いの状況を短くやりとりして
「気を付けて!また連絡します」
と送ると、
「何かあったら遠慮なくいつでも連絡してください!」
とE氏。
ありきたりすぎる、このやりとりが、大事なときには本当に大事なのだと深く感じ入った。
B氏にメッセージすると、しばらくして返事があり、B氏も無事で家にこれから帰るところだとのことだった。
彼も、私を気にかけて心配していた。と言ってくれた。
震災をきっかけに、結婚をしたカップルや、おつきあいを本格化したカップル、また婚活が盛んになったニュースは周知のこと。
Fくんも、自国の新聞の一面で激しく伝えられた日本のショッキングニュースを、写真で添付して安否を心配するメールをくれた。
Fくんからは、心配だ。会いたい。いつも君を想っているよ・・・
と相変わらず熱いメッセージが送られ、君に会いにフライトをアレンジして成田に行くから!と、言ってくれるのだが、事態が事態なだけに複雑な思いになる。
成田空港は、放射線の影響もあり、当時外国からの発着便も見合わせたり、
我々も訪れることは避けざるをえない状況だった。
成田に行くから!成田に来て!と言われても行けない現実を、なかなか素直に受け入れてくれないFくんは意外だった。
Fくんの航空会社のエアももちろんしばらくの間成田行きは控えていて、詳しくは知らないが、そのかわり名古屋や福岡行きなどになっていたようだった。「名古屋で会おうよ!」という提案までしてくる。
そんなわけで、震災の影響で、私たちの再会もしばらく間があくことになる。その間、大事なときに成田でしか会えない、しかも数時間か一晩のみの恋人というのは、大事なひとにはなれないなあ。と、Fくんが恋しい反面現実的な思いも如実にあった。
Fくんとは、成田や羽田で会うことができなくなったので、私がFくんの国にデートしに行くことにした。