『漁港口の映画館 シネマポスト』ラインナップ紹介(令和6年5月時点)
地方で単館系ミニシアターを営んでいると、シンプルなお訊ねをいただきます。
「上映している映画を選ぶ基準は何ですか」
「こちらで上映されている映画は知らない映画ばかりですが、何故ですか」
お訊ねの背景を端的に捉えると、普段の情報摂取の仕方がテレビと新聞が主だと考えられます。合わせて、趣向の幅が限定的な方がそれなりの数と読みます。
文化的とされる範疇には、相互認識のカテゴリーの種類とその歴史認識の度合いに対するパイ(人口)の比重に依るものが大きいと私は考えます。
東京に人が集中するのは、情報発信が東京から為されている点で、地方で尖鋭的に捉えられる企画も一定のパイの層の支持でカウンターカルチャーからポピュラリティとして成り立つのです。
これはインターネット時代においても、体感性という言葉があるように、イメージと実際という二つの指向が堪えず生活の中で共存できる場所がある。
それが文化的だと考察できます。
つまり、地方は情報発信をするものではなく受け渡される所という発想から抜け出せないジレンマを延々と経ています。
故に風光明媚な観光場所で良いと大人が思った段階で子供たちは進学と就職は東京や都会を選ぶ判断に至るのです。
私の目指す映画館は存在意義について東京と同じスピードでリアルに選択した情報、あるいは下関発の情報を発信していく事を是とします。非常にチャレンジと言えます。
冒頭の‘分からない’というお訊ねが出るのはよく理解できます。
シネマポストのホームページには私の考え方をまとめたものがありますので、ぜひご覧ください。
そうした前段を踏まえまして、次回5月4日(祝土)に公開する濱口竜介監督最新作『悪は存在しない』
配給会社から全国のミニシアターが決まった日、5月3日と4日が主となりますが、全国同時公開という画期的な展開を企画されました。
濱口監督については敢えて申し上げる事はありません。アメリカのアカデミーと世界三大映画祭(カンヌ、ベルリン、ヴェネツィア)で受賞した日本映画の監督が黒澤明監督と濱口竜介監督しかいないという事さえ把握出来ていれば充分です。
この機会に一度、シネマポストの扉の先に足を踏み入れていただけると有難く思います。
これからのラインナップを一挙ご紹介いたします。