格好良さ、その時代
イントロが無く、突然ボーカルのサビから始まる曲。或いはメロディとリズムトラック重視でリフが希薄なアレンジの曲も多いような気がするサブスク時代のプロダクションからロック、ポピュラーミュージックについて考えてみます。
まずリフについて解説します。
リフ(Riff)とは、特定の楽曲で繰り返し使われる印象的なフレーズを指す音楽用語です。 ギターで奏でるフレーズは「ギターリフ」と呼ばれ、 リフは主にロック、ポップス、ジャズなどの楽曲で用いられます。
このリフはまさに繰り返しながら、ビートと一体化して、リズム的な効果も表します。リフが際立つ代表的な2曲をご紹介します。
1960年代から1990年代初頭まで活躍したブリティッシュ・ロックを代表するロックバンドのザ・キンクスの代表曲と言えば『You Really Got Me』が挙がります。
これぞイントロからのリフの反復による高揚感へと盛り上がっていく、ロック史に残る名曲です。
そして、鮎川誠のレスポールからの強烈な、こちらも繰り返されるリフの応酬かつソリッド感の凄さ、格好良さが印象的なシーナ&ロケッツの代表曲『レモンティ』を挙げました。
上記の2曲に加えてこちらもご紹介します。
ドクター・フィールグッド『She Does It Right』
こちらは鮎川誠の盟友でもあるギターのウィルコ・ジョンソンの刃物のような切れ味鋭いリフがまさにロックを象徴しています。そのギタープレイとバンドサウンドは後のパンクムーブメントにも影響を与えています。
これらの楽曲の基になっているのはロックバンドのあり方、一体感が生み出すシンプルさがベストそのものだと体現している点に注目します。
軸となるのはギターソロよりもギターリフでバンドアンサンブルが構成されています。
ギタリストが抜群のリズムの良さを備えているが故に一体感が生まれているのです。これはリフをさらにアバウトにしたカッティングの上手さもバリエーションの一つの引き出しにあることが分かります。カッティングリフを象徴するこちらの楽曲をご紹介します。
ギターのジョニー・マーのカッティングリフのフレーズが繊細でメランコリックな、ザ・スミス『Bigmouth Strikes Again』です。
誰しもギターを覚えた人なら弾いてみたくなるカッティングリフと言えます。
時代性かもしれませんが、ブルースロック加えて黒人音楽の系譜からのオリジナリティというかつては存在した共通概念が、サブスク時代の若い世代の日本のバンドサウンドにはどちらかといえば、1990年代のグランジロックが最古のルーツとして、ヒップホップを絡めて、エレクトロニクカも融合させていくプロダクションが聴きやすさに重きを置いているかのように映ります。良くも悪くも要領よく器用、テクニカルです。
日本については、何故か流れが潰(つい)えていくものづくり、購買層の大きいシェアの一つである低年齢層への配慮を注意し過ぎて、若年層が老壮から学ぶ機会、系譜を継承する感覚が乏しいように見受けられます。テクニカルの方に行き過ぎているとすら感じるのです。
いわゆる格好良さの概念が変わってきているのだと推察します。こればかりは致し方ないのかもしれませんが、そうした要素にも投げ掛ける意味も含めて、私の審美眼は試されているのだと思うようにしています。
【漁港口の映画館シネマポスト 次回公開作品の紹介】
『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』
8月3日(土)~8月9日(日)まで上映。
日本の音楽史を変えた先駆者、加藤和彦にフォーカスした初めてのドキュメンタリー映画!
深夜ラジオから、日本全国へ人気が広まったザ・フォーク・クルセダーズの一員。
ピンク・フロイドやロキシー・ミュージックを手掛けたプロデューサー、クリス・トーマスが自らプロデュースしたいと名乗り出て日本よりも先にイギリスで評価されたサディスティック・ミカ・バンドのリーダー。
高橋幸宏、坂本龍一、細野晴臣らのYMOメンバーの参加を得て、加藤和彦作品の金字塔と呼ばれたヨーロッパ三部作に代表されるソロアーティスト。
作曲家、プロデューサー、アレンジャーの幾つもの顔を持ち、手掛けたアーティスト、楽曲は数えきれない。
いつの時代も必ず一歩先にいた音楽家の、輝かしい軌跡を追う世界初のドキュメンタリー映画がついに完成した。
[出演]
きたやまおさむ 松山猛 朝妻一郎 新田和長 つのだ☆ひろ 小原礼 今井裕 高中正義 クリス・トーマス 泉谷しげる 坂崎幸之助 重実博 コシノジュンコ 三國清三 門上武司
高野寛 高田漣 坂本美雨 石川紅奈(soraya) 他
[アーカイブ出演]
高橋幸宏 吉田拓郎 松任谷正隆 坂本龍一 他(順不同)
企画・構成・監督・プロデュース:相原裕美
制作:COCOON
配給/宣伝:NAKACHIKA PICTURES
協賛:一般社団法人MAM
2024年|日本|カラー|ビスタ|Digital|5.1ch|118分
ⓒ2024「トノバン」製作委員会
公式サイト:https://tonoban-movie.jp/