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『侍タイムスリッパー』全国公開決定に寄せて

いよいよ『侍タイムスリッパー』全国公開決定ですよ。
大阪は十三で初号上映観てからちょうど1年、その頃から「安田監督、すげぇ映画作ったな」とは思ってたけど、実際今の盛り上がりをSNS等で見るにつけ、あまりの「すげぇ状態」に脳みそが処理追いついてない感じ。

カナダファンタジア映画祭観客賞金賞で一塁打、
池袋シネマ・ロサ8.17エンドロール後の拍手とスタンディングオベーションでランナー1,2塁、
川崎チネチッタでいよいよ満塁!
SNS打線爆発、全国公開決定という満塁ホームランが打ち上がった。
甲子園より、パリオリンピックより、大相撲名古屋場所の照ノ富士優勝よりも、僕にとっては熱い2024年の夏の出来事。

我が事のように嬉しいけれど、
我が事のように自慢するのはみっともないかしらと
変な自意識で様子見しているうちにあれよあれよと
「俺の侍タイムスリッパー」が「みんなの侍タイムスリッパー」に
なっていった。いや、元から“俺の”ではないんだけれども。

期待値のハードル上がっても、全国公開で劇場に行くハードルは下がる。
どちらがどうでも観てみてほしい。
観終わった後、溜飲下がってテンションは上がる。
こんな時代に珍しく盛り上がってるこの映画は、
こんな時代だからこそ僕らが観たかった映画。

どんな映画?と聞かれたら、
「幕末の侍が現代の時代劇撮影所にタイムスリップして、、」
という紹介が鉄板で、それはそうなんだけど、

『侍タイムスリッパー』ってどんな映画?って聞かれたら僕は、

“『カメラを止めるな』の再来!と言われることもあるけど、
コロナが徹底的に蹂躙してくれやがった後の映画業界において『カメラを止めるな』ばりに盛り上がりつつある映画である”

と紹介したい。

コロナの頃、僕らもみんな大変だったけど、映画業界なんて目を背けたくなるくらい大変だった。志半ばで倒れていったミニシアター、辞めていった作り手、離れていった客足、本当に大変だったと思う。
『カメラを止めるな』の頃、あんなにミニシアター行くのが楽しかった。同じ暗闇で他人同士が笑って泣いて、劇場の外で「面白かったですよね!」とその他人同士で言い合う空気。

そんな空気をマスクが閉ざし、“不要不急”だ、“クラスタ発生源”だという言葉で「カメラを止められた」時代があった。

そんな時代を耐えに耐え、そんなタイムをスリップしてコロナ禍後のカメラをもう一度「止めるんじゃねえぞ!」と叫ぶのが『侍タイムスリッパー』という映画なんだ。と、紹介したい。観て!

僕はこの映画の何が好きって、主人公が頑張って取り組むのが「斬られ役」ってとこですよ。
だって、今の世の中、僕もあなたも、いっぱい斬られてるでしょ?
上司に斬られ、客に斬られ、旦那に斬られ、嫁に斬られ、姑に斬られ、ネットアンチには背中から斬られたりしてばっかでしんどいでしょ?
でも毎日歯を食いしばって頑張ってる。
気持ち良く斬られて、貰ったお金で、クソみたいな不景気をなんとか生きてるでしょ?

かつて己の生きていた世界は「斬ってなんぼ」の侍が、時代が変われば「斬られることで生きていく」って、それが己の成し得ることだからって。
あぁ、侍って剣の腕前のことではなくて、己の生き様のことなんだなっていうカッコ良さがいい。

「頑張っていれば、どこかで誰かが見ていてくれる」
「自分の信念のために戦った、それでよいではないか。」

未来映画社の、安田淳一監督の、映画には「やっぱ頑張ってるやつがかっこいい」という背骨がある。ベタと言えばベタ。でも、真剣を振り回し、大上段から全力で「やっぱ頑張ってるやつがかっこいい」って言われたら、そりゃあ観てる方も「俺も頑張らなきゃ」と思わされる。きっとあなたも、そう思わされる。

映画館を出ると、髭面ポロシャツブルージーンズのおっさんが「侍タイムスリッパー監督」というゼッケンをつけて、お礼を言いながら観客の皆さんをお見送りしていた。映画公開前は池袋の街中の猛暑と台風のはざまでビラ配りを必死にやっていた。“タイムスリップをしなかった侍”の姿がそこにあった。






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