シネマリン 映画ドラマ解説

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最近の記事

映画「ぼくのお日さま」の言葉よりも雄弁な映像表現。「視線」は口ほどに物を言う

説明的な台詞や描写が溢れる昨今、奥山大史監督『ぼくのお日さま』の映画体験としての純度の高さは異質だ。シンプルな筋書に反比例するかのように、無限のグラデーションを描く映像——映画本来の視覚言語に振り切った本作の潔さは、清涼剤のようだった。 小さな所作が忘れがたく目に焼き付く映画がある。ロベール・ブレッソン『ジャンヌ・ダルク裁判』における視線の上下、小津映画に出てくる人たちの床をスタスタ歩く足。奥山監督の『ぼくのお日さま』もまたそんな映画である。 例えば、スケートコーチ・荒川

¥150
    • 映画評|「メイ・ディセンバー ゆれる真実」の曖昧な輪郭

      トッド・ヘインズ監督の新作「メイ・ディセンバー ゆれる真実」は、当時、北米で連日タブロイド紙を賑わせた通称メイ・ディセンバー事件を題材としている。 未成年と関係をもった罪に問われ服役した当時36歳の女性グレイシーと23歳年下の少年ジョー。出所後、晴れて結婚した2人は、3人の子どもと共に20年以上の月日を幸せに過ごしてきた。そんな2人を題材にした映画が製作されることになり、グレイシー役を演じる女優のエリザベスが役作りのリサーチのために彼らのもとへやってくる。 本作は "作為

      • 濱口竜介監督「悪は存在しない」ラスト解説│偶然と想像が積み重なった悲劇と「分からなさ」への畏怖

        濱口竜介監督といえば、少しつつけばバランスが崩れそうな人間関係や(多くの場合それは崩れる)、事故や災害、思いがけない偶然によって決定的に変わってしまう人生のドラマ、特に都市の人々を描く作家というイメージだったのですが、今回は、監督、自然を舞台に映画を撮ってもこんなに面白いのか!凄まじいと思いました。   薄雪積もる森のシーンが美しく、観客を一気にその映画世界へ引き込みます。同時に、監督らしく絶えず緊張感やそこはかとない不気味さを感じさせる、ダークな大人の寓話といった世界観が魅

        ¥200
        • 「パスト ライブス/再会」|ノラはなぜヘソンに「エターナル・サンシャイン」を観せるのか

          『パスト ライブス/再会』に『エターナル・サンシャイン』が引用される理由を考えた。   それは、この映画が繰り返し・円環構造というモチーフによってイニョン〈輪廻転生の中で繰り返される縁〉の概念を観る人に直感的に感じさせようとしているからだと思う。   *ここから『パスト ライブス/再会』のネタバレを含みます   まず映像表現。   例えば、12歳の時の初デートの帰路、寂しそうに車窓から外を眺めるヘソン。このカットがラストで繰り返される。ところで、ヘソンのこの最後のすっきりし

          「一流シェフのファミリーレストラン」(原題:The Bear)シーズン2|いつだって時間がないロミオと、テイラー・スウィフトを口ずさむジュリエット

          レストラン「ザ・ベア」は次のステージへ2022年6月にシーズン1が北米Huluで配信されるやいなや、口コミで評判が広がり熱烈なファンを生み出した『一流シェフのファミリーレストラン』(原題『The Bear』)。すでにHulu/FX史上、最も視聴されたオリジナルシリーズとなった。 7月26日より日本でもDisney+で配信開始された待望のシーズン2は、限られた時間をどう使うかという忙しい現代人にとって喫緊の課題と、愛についての物語だ。この意外な方向転換をしたシーズン2には、シ

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