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今からでも遅くない!ロック魂全開の頭脳警察を体感する『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』

 コロナ禍で、こんな出会いがあるとは思わなかった。私にとっては、ぐるりと周りを回っていて、この年になってもコアな部分にたどり着いていなかったのだ。日本のロックシーンのコアとは、まさに頭脳警察のこと。音楽はそこそこまんべんなく聞いているつもりだったけれど、なぜか今まで頭脳警察にたどり着けなかった。それはなぜか。きっと私がメジャーの音楽シーンしか触れていなかったからだろう。内田裕也監督作の『コミック雑誌なんかいらない』を知っていても、そのタイトルは頭脳警察の代表曲「コミック雑誌なんかいらない」を内田さんが熱烈に好きだったからだということは知らなかった。

 でもコアにたどり着く予兆はあった。ミニシアター・エイド基金のリターンであるサンクスシアターの中に、瀬々敬久監督が2009年の作品『ドキュメンタリー 頭脳警察』(314分)を出品していたのだ。5時間超、そこまでしてあの瀬々監督が密着したバンドなのだから、凄いに違いない。時間がある時に見ようと思っていたら、舞い込んできたのが頭脳警察結成50周年記念のドキュメンタリー映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』のキャンペーンでツートップの一人、ギター、ボーカル、そして作詞作曲を担当のPANTAさんをインタビューさせていただくことになったのだ。時間ができたらという間も無く、『ドキュメンタリー 頭脳警察』を見始めると、これがとても面白い。3部構成になっていて、40周年を迎えるにあたり再々結成をする頭脳警察の舞台裏や、主にPANTAさんのバンド活動に密着し、元従軍看護師だったPANTAさんの母親が引き上げの時に乗っていた氷川丸のことや、今は受刑中の日本赤軍だった重房信子さんと共に、彼女の詩に曲をつけて作ったアルバムのことなど、PANTAさんのバックグラウンドに触れる作品だった。そして、その時当時の氷川丸のことを訪ねあるき、熱心に相手の話に耳を傾けるPANTAさんの姿が焼きついた。

 ひょっとしたら私が今まで取材をさせていただいた人の中で、一番深い人生経験をし、それを歌という形で日本だけでなく世界に向けて発信しているのではないか。そう思いながら、胸を借りるつもりで臨んだインタビュー。私が思っていた通り、見た目は超ロックな感じなのだけど、サングラスの下の瞳は優しく、聞き上手でもあり、そして裏表なく18才の頃のエピソードも披露してくださる。父親が米軍基地で働いていたことから、アメリカの音楽に幼い頃から触れる一方、アメリカに対するなんとも言えない感情を抱いていたPANTAさんがあることをきっかけに、日本語ロックに邁進したのは、やはり戦後20年ほどしか経っていない日本にまだかすかに残る敗戦感情を感じとっていたからだ。

 ロックだけではなく、バルバラの代表曲「黒い鷲」を自らおおくぼけいさんのピアノと共に歌い上げた時の映像をその場で見せていただき、もう一度チャレンジしたいと目を輝かせていたPANTAさん。これは絶対ライブを観なくては!と1週間後のライブ配信「無機質な狂気 第11夜@渋谷クラブクアトロ」を観たら、なぜ今まで頭脳警察を知らずに生きてきたのだろうと思うぐらい素晴らしかった。逆に今、出会えたことに本当に感謝している。回り回って、やっとコアにたどり着けた気がする。学生運動から反戦運動と、若者たちが拳を上げ、心に銃を抱いていたあの日々から50年。今、また先の見えない混迷の中にあって、新曲では「絶景かな」と歌い上げる。これぞ頭脳警察。まだまだ止まらない。そして、遅まきながら追いかけていきたいと切に思った。

©2020 ZK PROJECT

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