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震災で運命が変わった人たちの葛藤を描く、純度の高いピアノ映画『にしきたショパン』〜緊急事態宣言関西Day8

 核兵器禁止条約の発効、アメリカのパリ協定復帰と次々に新しい動きが生まれてくる中、なかなか感染者数が減らない日本。すでに1ヶ月緊急事態宣言を延長かというニュースまで流れてくるとは・・・。

 そんな中、市民の熱い想いから地元西宮が舞台の音楽映画が誕生した。その名も『にしきたショパン』。阪神・淡路大震災の記憶を語り継ぎたい、そして左手のピアニストを応援したいという気持ちから、クラウドファンディングを経て生まれたという本作。監督は神戸在住で本作が初長編作となる竹本祥乃監督。トップのピアニストを目指す同級生二人が、コンクールを目前に阪神・淡路大震災で被災し、運命や思わぬ病に翻弄されていく。タイトルにあるショパンは、本作の近藤修平プロデューサーが震災当時、ガスの復旧部隊として被災地で作業をしていた時に遠慮がちに流れてきたピアノの音色がショパンだったこと、そして本作で達磨先生役の泉高久さんもショパンが好きだったことから、主人公凛子が演奏する曲として何度も登場する。凛子役の水田汐音は実際にコンクール受賞歴多数のピアニストで、映画のロケ地、県立西宮高校音楽科に在籍していたという、まさにこの映画にぴったりの配役。お嬢様育ちの凛子が、常に1位をとる鍵太郎にふりかかる不幸と引き換えに音楽留学を手にする羽目になったものの、帰国後想像もしなかった現実を目の当たりにする。人生の光と陰、まっすぐ前に伸びていると思っていた道が突然閉ざされた時、人はどうやって立ち直るのか。あの震災で人生が変わった人は本当にたくさんいらっしゃると思うが、それでもそれぞれの場所で、自分らしさを取り戻し生きている。若い二人を見守る達磨先生の懐の深さが、この映画の大きな救いとなっている。頂点を目指すピアニストならではの苦しみを交え、演者本人が弾く本物のピアノの演奏も見どころの、にしきた、夙川沿線満載の純度が高い映画。春の公開を是非楽しみにしていてほしい。


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