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横浜流星主演 大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」第3話を観て…
回を重ねるたびに面白さの幅が広がる
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やばい毎回面白い…ついつい書いてしまう横浜流星主演の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」
深読みすれば辛辣なシーンもあったりして、かなり現実社会でも通じるような展開も盛り込まれていてかなり面白い。
第3話/千客万来『一目千本』
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吉原のガイドブック「吉原細見」を作り上げた蔦屋重三郎(横浜流星)。女郎屋の主人たちにも評判が良いものの、育ての親でもある駿河屋(高橋克実)は激怒。
世に出た「吉原細見」だが客足は伸びず効果が出ない。そんな吉原の現状を打破すべく次の一手を思いつく。それは今で言う「プロ野球名鑑」ともいえる花魁たちを紹介する本だった。
しかも制作費は花魁の「推し」たちからうまく回収するというもの。
後の鬼の平蔵らからうまく集金した重三郎は一部の金を「二文字屋」らの経営資金に転用。残りの金で本の企画を進める。
花魁のイラストだけだと単調になるため、絵師・北尾重政(橋本淳)の花魁を花に例えるアイデアで『一目千本』を企画。
しかし駿河屋は改めて激怒。
「本来の仕事をしているからいいじゃねぇか」
という他の女郎屋の主人からのフォローも駿河屋はけんもほろろ。
重三郎に「出ていけ!」と怒鳴り散らす。
なんとかツテで部屋を間借りした重三郎。苦労の末に作り上げた『一目千本(ひとめ せんぼん)』は吉原に客を呼び寄せる起爆剤となる。
その重三郎を素直に褒められない駿河屋だが扇屋(山路和弘)からの一言で気持ちを氷解させた駿河屋は重三郎に照れ隠しあふれる「ねぎらい」の声をかける。
その頃、江戸城では……
メンタル強すぎ!横浜流星演じる蔦屋重三郎の前向きさは日曜の夜の癒やし
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横浜流星演じる蔦屋重三郎のメンタルの強さはなんなんだw
父親代わりといえ駿河屋の親父にボコボコにされつつも、何度も立ち上がる彼の姿。常に前を向くところは見習うべきところだろう。
さらに江戸の時代で実行したクラウドファンディング。
一歩間違えれば詐欺になりかねない緊迫感ある展開だったが、集めた金を「二文字屋」に渡すなど人情あふれるところがまた良いじゃないか!
一方
長谷川平蔵宣以(中村隼人)の恋心を利用した花の井と重三郎。
花の井の協力で手にいた金をうまく活用したものの、長谷川平蔵宣以は親から引き継いだ家督(遺産)を使い込んで花街からの卒業の手紙を花の井に送っていたシーンでは
「金を返してやらないと」
という重三郎にたいして
「夢を与えてあげたんだからいいだろ」
(どちらも要訳)
と返す花の井。それに同調する重三郎。
ここの会話の裏を返せばリアルといえばリアル。
風俗店や水商売…。ホスト/ホステスに入れ込んだ女性/男性が貢いだ金をホスト/ホステス側が「夢を見させたんだからいいでしょ」と開き直る…というシーンでもある
簡単に言うと「客を金づるとしている側のリアルな会話」ともいえる。
(ホスト、ホステスをはじめアイドルなど推される側の
全ての人がそう考えていないのは当然だとしても……)
が、このあたりは遊郭の中で会話をしているところがまた奥深い。
一目千本……もともとは桜の風景
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「一目千本(ひとめ せんぼん)」というタイトルがなんとも粋である。
「一目千本」といえば世界遺産でもある吉水神社の境内からみえる桜の風景を指す言葉。
吉水神社は南北朝時代に後醍醐天皇が皇居(仮)とした由緒正しい神社。
そんな奈良吉野でみる桜の景色はなんとも美しいのだが、絶景たる桜の風景を花を花魁に見立て、個性に合わせて花種を変えるというアイデアには脱帽であろう。しかも一人ひとりの性格や見た目をイメージするという。
(一目千本には、花の名、妓楼名、遊女名を記載)
お客さんのことをどこまでも第1に考えて客を呼ぶための1冊を作り上げる重三郎の熱量の高さ。
これは実際の営業スキルにも通じるもので、
自社の売上最優先ではなく、
クライアントの売上を伸ばすための営業で大切なことはなにか?
にも通じる。
お客様第一に考え、
お客さんのために何ができるのか?
何を提案すべきか?
というのは営業職の鉄則。
ただ自社の売上げのためだけの販売では信用を得られないのも現実。
自社の販売するアイテム、コンテンツをベースにし、それをいかに相手の有益にするか?は営業の理想でもあり基本。
そして目先の売上、目先の取引ではなく、自分ができることを精一杯する姿を汲み取ってもらえたときの感謝と関係性は単純な売買だけに収まらないものであり、その先にある「信頼」につながる。
ただ「信頼」を得るための行動ではダメで、
信頼を得るのが目的の行動は「打算」になってしまう。
そういった部分を踏まえて、蔦屋重三郎の「吉原のためにできること」に邁進する姿は、究極の理想の営業スタイルともいってもいいだろう。
江戸時代の同人活動姿…でノスタルジー
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そんな底抜けに頑張る蔦屋重三郎。
本を完成させるために夜通しで制作する蔦屋重三郎姿は、33年ほど前の
自分が生まれて初めて参加した同人誌即売会の前日を思い出させる。
1P毎に確認をして、順番を整理し、手作りで製本を行う。
明け方に全ての製本が完了したあの喜びと感動を思い出させる展開。
このあたりは完全に自分の過去とシンクロしてしまい胸が熱くなる。
それも横浜流星の純粋な「完成に漕ぎ着くことができた喜びの笑顔」に尽きる。
男が男に惚れる…に近い感覚。
第3話のもっともアツいシーン!
山路和弘のイケボ!による諭し……
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そしてその「一目千本」が話題となり吉原に客が戻ってきたシーンが秀逸である。
駿河屋(高橋克実)と扇屋(山路和弘)の会話がなんともかっこいい
イケオジ、イケボの山路和弘が語りかけるシーンの重厚感たるやたまらん。
「可愛さ余って憎さ百倍なんて、お前さん、まるで人みてぇなこと言ってるよ。忘八のくせに」
「忘八なら忘八らしく、
一つ損得づくで頼むわ、な」
「ま、とにかく
店には置いたほうが良いと思うぜ、これ」
「おもしれぇから」
もう駿河屋への説得でありながらも諭しでもあるこのシーンのセリフの一言ひとことが重い!そして思いに溢れている。
特に最後の
「おもしれぇから」
の声が柔らかさからの諭しになっているのは
山路和弘の演技のうまさだろう。
その後で語られる夫婦の会話にある
「誰よりもこの町を見てんだね、あの子は」
も蔦屋重三郎の「吉原の街をどうにかしたい!」という本気が伝わった瞬間でもある。
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忘八の意味を知ると、更に深まる
ちなみに「忘八」は儒教で語られる八徳(はっとく)といわれる
仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌
を失った人…ということで、遊女屋であったりその経営者主人を指す言葉であったと思われる。
ものすごくストレートな表現でいうと
「ちょっと普通ではありえない商売で稼いでる人」
といっても良いかもしれない。
この会話を行われた流れから、
遊郭の主人たちの彼らは、彼らなりに
「人さまから指さされる商売であることを腹をくくって行っている」
とも取れるシーンといえるだろう。
ちなみに八徳は
仁:仁愛をもち 施しの心、優しさをもち
義:義理 義侠心(人助け)をもち
礼:礼節を守り
智:正悪を真に理解できる知識(智恵)をつけ
忠:表裏のない忠義心を持ち
信:誠実であり、人を信じ、信じられる人となり
孝:親を敬い
悌:年長者を敬う
というもの(諸説あり)
これは儒教の教えの流れでもあるが、現代でも大切にすべき考えの一つであり、それらを理解しているからこそ忘八の意味も理解してる…という深読みができるともいえる。
実は自身の座右の銘がほぼ一緒で
「仁・義・礼・智・信・厳・勇」
仁:仁愛をもち 施しの心、優しさをもち
義:義理 義侠心(人助け)をもち
礼:礼節を守り
智:正悪を真に理解できる知識(智恵)をつけ
信:誠実であり、人を信じ、信じられる人となり
厳:自分に厳しく、相手が間違ったことを言っていれば厳しく接する
勇:勇気を持って行動をする
こちらは30年ほど前から使っている座右の銘で聞かれたら答えているのだが…まさかテレビを見ながら思い出すことになるとは思わなかった……
一方の江戸城では政治駆け引きが進む…
蔦屋重三郎の喜びと駿河屋との確執が氷解したところで、舞台は江戸城内の政(まつりごと)とそこで見える駆け引きが描かれる。
田沼の上(渡辺謙)はもちろんだが、生田斗真の演技もなんともいえない味わいがあり、覇権争いの匂いが立ち込めたところで終了となる。
次回は『『雛(ひな)形若菜』の甘い罠』だが、
新たな吉原ガイドブックでは、呉服屋がスポンサーになって花魁に色とりどりの着物を着せる…という案で新刊発行を目指す重三郎だが…という展開になりそう
なんだかんだ書き連ねてしまったが、
べらぼうが楽しみ度合いが増していく日曜です。