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海外映画祭に挑戦する映画監督たちへ:慎重に選ぶべき理由

1. 映画祭のローレルって本当に価値があるのか?

映画ポスターでよく見かける「ローレル」。
これは映画祭での入選や受賞を示すシンボルですが、実はその多くの映画祭はほとんど認知されておらず、価値が限られていることが多い。

どんな映画監督は一人でも多くの人に作品を観てもらいたいと願っている。映画祭での評価によって「この映画は面白い」という印象を与えたい。特に一般の観客は、知らない映画祭でも「入選した」という事実を見て、映画への信頼感を抱くことが多い。ポスターに10から20ぐらいのローレルが貼ってある映画もあります。そうした監督たちは「ローレル・コレクター」と呼ばれているらしい。

2. 100以上のローレル獲得に挑戦

私自身、映画『幸福な結末』で実験的にローレルを集めをして、ローレル・コレクターになってみました。どうせやるなら桁違いの挑戦をしたいと考え、結果、100以上の映画祭のローレルを獲得しました(もう二度とやりませんが💦)。

映画「幸福な結末」ポスター

今、世界には約1万ほどの映画祭があるそうですが、その大半はリアル開催ではなく、ネットで入選作を配信するだけ。もしくは配信すらせず、ただ入選の通知とローレル画像が送られてくるだけの映画祭もあります。賞状がPDFで送られることもありますが、実質的な上映が行われないことも珍しくありません。映画祭運営側はエントリー料で収益を上げ、監督は入選のステータスを得るという形でウィンウィンになるわけです。結果的に「入選」や「受賞」のステータスは手に入りますが、映画自体がどこで上映されることもなく、観客との接点もありません。

シンガポール・インデペンデント映画祭の表彰状

私の感覚では、ある程度のクオリティがあれば、ネット映画祭では、いくつかの入選や受賞をすることはそれほど難しくないと思います。よほど低いクオリティの作品でなければ、入選のチャンスは十分にあります。
ただし、実際に応募した映画祭の中には、翌年には名前を変えてしまっているものや、完全に消滅してしまったものもありました。1年後にはホームページすら存在しておらず、受賞したという記録も確認できないものもあります。

3. ネット限定映画祭には要注意

こうしたネット映画祭への応募の経験を振り返ってみると、それらの映画祭の中で実際に観客の前で上映された映画祭はわずか。表面上の実績にとどまり、本当に価値があるかどうかは別問題なのです。映画業界のプロフェッショナルたちは、有名な映画祭とそうでない映画祭の区別は簡単に分りますし、実際、ローレルを集めたところで、映画が評価されたり、次のチャンスにつながるケースはほとんどないわけです。
となると、海外の映画祭に参加するメリットは、やはり観客や映画関係者との直接交流に尽きます。そのためには、リアル上映であることは必然となりますし、来場者が多い大きな映画祭であることに越したことはありません。エントリー時には、そうした場を提供してくれる映画祭を選ぶべきでしょう。もしくは、その映画祭で上映されれば、名画のお墨付きをもらえるような権威のある映画祭に挑戦することです。

参考までに、この記事の最後に『幸福な結末』の受賞歴を載せておきます。念のためにお伝えしておくと、日本国内の映画祭はすべてリアル上映のもので、海外でも一部は実際に劇場で上映される映画祭があります。たとえば、アメリカ、ドイツ、スペインでは上映されたことが確認できています。特にスペインの「Fantboi」という映画祭では、スタッフがスペイン語字幕をつけてリアル上映してくれましたし、アメリカの「セイロン国際映画祭」は、まだ若い映画祭ですが、しっかりした上映会・授賞式を行ってくれました。こうした映画祭は、今後大きく発展する可能性もありますし、応援をしていきたいです。

第2回セイロン国際映画祭 授賞式の様子

4. 海外映画祭エントリーのプラットホーム

20年前は、DVDやVHS、miniDVを郵送し、エントリー料は銀行送金で手数料もかなりかかるという時代でした。しかし今では、作品をネットにアップし、エントリー料もクレジットカード決済で済ませられるようになりました。映画祭への挑戦が格段に容易になっています。

今は、映画祭へのエントリーを簡単にするプラットホームもいくつか存在します。私が知る限りでは、代表的なプラットホームは以下の4つ。これらには、リアル上映の映画祭も多く含まれています(リンクが張ってありますので、覗いてみてください)。

これらのプラットホームのサイトで、アカウントを作成し、自らの映画情報を登録していく訳ですが、映画祭は、作品を観客に届け、正当に評価される場であるべきです。エントリーする映画祭を慎重に選び、本当に価値のある映画祭に挑戦することが重要だと思います。私が考える価値のある映画サイトは、以下の2種類の映画祭です。

・リアル上映があり交流が盛んで、観客動員の多い映画祭
・上映作品に選ばれれば、名画のお墨付きとなる権威のある映画祭


ニーズがあれば、私自身が行っている、この2種類の映画祭の選定方法を紹介したいと思います。
こちらも機会があれば、詳しく書いてみたいと思いますが、日本国内と海外の映画祭では、映画祭の趣旨が異なります。私も初めて海外の映画祭に招待されたとき、日本の映画祭との違いに驚きました。もう一つ、付け加えておくと、映画祭の上映作品に選ばれたからと言って、大きく状況が変わるわけではありません。良い作品をつくったご褒美をもらう感じでしょうか。

では、最後に「幸福な結末」の入選・受賞リストです。ご参考までに。

映画「幸福な結末」授賞・入選リスト


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