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小説「河口の町」

日本が高度成長期にあった昭和40年代のある夏休み、金沢出身の若い母親・原田綾は小学生になった息子たちを連れ、初めて飛行機に乗って、東京から同地へ単身赴任している夫を訪ねました。
夫の運転で墓参り後に立ち寄った美川の町は、手取川の河口にあります。この地は、綾一家が第二次世界大戦中の二年余りを過ごした、懐かしの地でありました。
手取川河口を渡る車窓で、綾は真夏の焼け付く照り返しを受け、ひとり四半世紀前のタイムトンネルへ引き込まれていきます。その先には、暗く厳しい戦時下を必死に生きていた家族と、小学1年生になったばかりの自分自身が、セピア色に蘇ってきたのです。
                    (画像提供:All Nippon Airwalks)
(河口の町:其の1へ)

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