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湿地について知っておきたい5つのこと

毎年2月2日は、国連の「世界湿地の日」です。1971年2月2日にイランのラムサールで「ラムサール条約」が採択されたことを記念し、2月2日に定められました。

湿地は、水と陸をつなぎ、淡水や海水によって冠水、または覆われている低地です。自然の形態の一つで、陸と水中の生き物をつないでいます。そこでは、湿地特有の動植物が育まれており、生物多様性保全上、極めて大切な生態系と言えます。湿地は同時に私たち人間にも多くの恵みをもたらしています。しかし、開発の影響で世界各地の湿地は急速に減っています。それはつまり、湿地生態系がもたらしてくれる様々な生態系サービスが失われていることも意味します。

湿地の持つユニークな役目について、あなたが知らないかもしれない5つの事実をご紹介します。



1.湿地は、周辺地帯にとって「腎臓」である

血液から老廃物を抽出し、体液のバランスをとる器官である私たちの腎臓と同じく、湿地は、周囲を流れる水をきれいにしたり、洪水を軽減したり、地下の帯水層を再涵養(貯水)する能力を持っています。そこは漁場でもあり、木材資源をも提供しています。さらにさまざまな生き物の生息地にもなっています。湿地はまた、台風などの極端な気象から沿岸地域を保護しています。エコツーリズムの観点でも、魅力的な訪問地である湿地は、世界各地の地域経済の収益を支えています。

2.湿地は気候変動の影響を緩和する

マングローブ林などの沿岸湿地は、植物とその下の堆積物に大量の炭素(ブルーカーボン)を隔離して貯蔵しています。 「ブルーカーボン」は、海洋や沿岸の生態系に貯蔵されている炭素であるため、”ブルー”という名前が付けられています。ブルーカーボン生態系は、多くの炭素が含まれています。たとえば、マングローブ林がある特定の地域には、同じ面積の森林と比較すると、最大で10倍もの炭素を貯蔵しています。ブルーカーボンは、二酸化炭素(CO2)として大気中に放出されてしまうと、気候変動を増長する要因となるたま、気候変動の影響を緩和するためには、ブルーカーボンを放出させないよう、湿地を守り、炭素を留めておくことが重要です。

3.湿地は生物多様性豊かな生き物たちの生息地

湿地には、変化していく生態系の中を生きぬきながら進化してきた、独特の種が多く生息しています。ワニ目のアリゲーター、クロコダイル、ネズミ科のマスクラット、ネズミ目のヌートリア、マガモや、ガン、サギをはじめとする何百もの鳥類も湿地に生息しています。そして、湿地の植物もまた、季節的に冠水し、塩水も含まれる状態を乗り越えるため、とてもユニークな進化を遂げています。淡水湿地のガマや、沿岸湿地のマングローブが良い例です。

4.世界の湿地の多くは劣化している

湿地の多くが水抜きされ、破壊され、農地や商業、または住居目的の開発のために転換されており、湿地の存在は脅威にさらされています。沿岸湿地に関しては、多くの場所が魚やエビなどの養殖のために改変されています。湿地を破壊することは、湿地が生み出す自然の恵みに暮らしを頼る何百万人もの人々の生活にも影響を及ぼすことになります。

環境省は、生物多様性の観点から重要度の高い国内の湿地一覧を公開しています。湿地とは、湿原だけでなく、河川や干潟、砂浜、マン グローブ湿地、藻場、サンゴ礁の生態系も含まれます。
「日本の重要湿地」

環境省HP

5.持続可能な漁業を支援することで湿地を守ることができる

沿岸地域の湿地を養殖から守るためには、たとえば、マングローブなどを養殖池に転換した持続可能ではない養殖場で育てられたエビではなく、持続可能な方法で生産された商品を探してみてください。環境に配慮した方法で獲られた水産物についている「MSC認証」、責任のある方法で養殖された水産物についている「ASC認証」が目印です。

サステナブルな商品を普段の生活に取り入れて、人間にとっても、地球にとっても大切な湿地を守るために、自分ができることを考えてみませんか?


<関連リンク>
「マングローブ」知っておくべき11の事実
「ブルーカーボン」とは何だろう?
・ コンサベーション・インターナショナルのブルーカーボンの取り組み


投稿 :ホルゲ・ラモス (Jorge Ramos, Ph.D.)、原文はこちら
翻訳編集:CIジャパン


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