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【AI事業部】結成一年!テクニカルディレクター×ESG責任者対談インタビュー

シェルパ・アンド・カンパニーのAI事業部は、4月で事業部結成一年を迎えました。今回は、AI事業部を率いる小田さんと、AI事業部と協業機会の多いESGエキスパートチームを率いる中久保さんへのインタビューをお届けします。


◆ AI事業部とは

中長期的な技術開発強化の一環として、2023年4月に設置・始動。AIにおける専門性と高い技術力をもつエンジニアで構成され、AIやNLP、LLMをベースとした技術開発を行い、企業向けESG情報開示支援クラウド「SmartESG」の高度化を目指しています。

◆ インタビュイー紹介


小田 悠介:AI事業部テクニカルディレクター
中久保 菜穂:CEIO(Chief ESG Innovation Officer)・ESG責任者

◆ インタビュー本編


――― 結成一年おめでとうございます!活動を振り返ってみての感想はいかがですか?

小田:この一年で優秀な方々が参画してきてくれてチームとしての体制が整い、業務がうまく回り始めたと感じているところです。立ち上げ当初は、開発した技術をプロダクトに反映していく手順が整っていなかったことで苦労しましたが、最近は属人化から脱却し、仕組み化された業務フローが確立しつつあります。

AI事業部のメンバーは皆自然言語処理が得意分野なのですが、シェルパで求められるタスクは難易度が高く、この一年試行錯誤してきました。いかに人の労力を最小化しながら収集するデータ量を最大化できるかがチャレンジングだと感じています。

中久保:おっしゃる通り、体制面は大きな変化ですよね。ESGエキスパートチームでも以前は個人の知見に頼らざるをえなかったのですが、今はAI事業部をはじめ開発側に組み込んでもらうためのESGの知見をシステマティックに体系化できるようになっています。

お客様に提供するプロダクトであるSmartESGにAIを組み込んで高度化したことはもちろん、社内の業務もAIでかなり効率化が進んできたのは、この一年のAI事業部の大きな成果ではないでしょうか。私たちESGエキスパートも、このタスクはAI事業部に相談したらもっと効率的なやり方にできるんじゃないか?と意識できるようになりました。

――― 様々なところでAI活用が進んでいるのですね。
それぞれのチームの主な業務内容と、協業事例を教えてください。

小田:AI事業部が取り組んでいるのは、SmartESGの機能群のうちベンチマーク機能(※1)のAIを用いた高度化です。企業の開示情報に関するデータベースに対し、どこに・どのようなESGに関する情報が含まれているかを自動で判別する開発を行っています。マトリクス機能(※2)において類似する項目をAIでまとめ上げる機能のPoC(Proof of Concept)や、LLM(Large Language Models)の活用を視野に入れて着手し始めたりもしています。

中久保:ベンチマーク機能はまさに、ESGエキスパートチームが知見注入や品質確認の部分でAI事業部と協業してきた主なプロジェクトです。
私たちのチームは、そのようなプロダクト開発におけるESG関連の知見インプットのほか、お客様へのコンサルティング業務、当社メディアのESG Journal Japanが発行するホワイトペーパーの管理・監修などを行っています。プロダクト開発業務では、私たちからインプットする情報をAI事業部に”調理”してもらうような協業イメージです。
また、AI事業部とは学術機関など社外組織との共同研究でも一緒に取り組んでいます。

小田:最近の例としては、日本取引所グループ(JPX)と自然言語処理技術を用いたサステナビリティ情報収集に関する共同研究を行い、今年3月にその成果として言語処理学会で論文を発表しました。

中久保:外部機関と共同研究をする際、AI技術者とESG専門人材の両方が揃って参加できるのはシェルパの強みですね。

(※1)ベンチマーク機能:主要評価機関で求められているESG項目ごとにAIが該当する開示データを特定し、競合企業やESG推進度の高い企業の開示情報を効率的に収集できる機能
(※2)マトリクス機能:主要評価機関から受けたスコアを表示し重要度の特定を行う機能。自社の開示内容と比較しながら改善が必要なESG項目を特定できる

――― AI技術者とESG専門家、まったく異なる領域の専門家たちが集まってプロジェクトを進めるうえで、苦労したことはありますか?

小田:苦労話には事欠かないですが(笑)分野が異なれば考え方も大きく異なるので、議論が噛み合わない場面は今でもよくあるし、認識のすり合わせは結構大変です。ただ、すり合わせていく努力が必要だと思っています。
お互いに考えがあり、それらは恐らく双方の専門分野の観点では正しいので尊重すべきであって。個人的に一番大事だと思うのは、なぜそう思うかの根拠の表明です。意見と根拠が双方から表明されて初めてどこに矛盾があるかがわかるので、 そこをスタート地点としてどう決着させるかですよね。むしろ、こういった議論ができるのは健全な組織だと思います。

中久保:確かに最初は噛み合わないこともありましたが、一年経って相手がどういう前提を持っていて、どういう考え方をするのか、思考パターンをお互いに掴めてきて議論がスムーズになってきているように感じます。
あとは、シェルパ内で仕事におけるカルチャーが育ってきていることも一助となっているかもしれません。例えば、Notionでのテキスト化の徹底。テキスト化は、AI事業部発・シェルパ全体のフィロソフィーのようになってきていますよね。

小田:元々エンジニアはドキュメントに残す文化が強いと思いますが、エンジニア以外にも転用可能なので、色々な部門でちゃんとドキュメントを残して後で参照できるようにするのが大事だと思っていて、これが浸透したのは良かったです。情報共有が簡単になりますから。

――― ほかに良い議論のために気を付けていることはありますか?

中久保:私たちが気をつけていることは「言葉」です。きちんと正しい情報を伝えること。ESG業界人だけで通じる用語の使用や、相手の理解度への期待値を排除し、事実や依頼を書く時はできるだけ厳密に目的や理由、状況をちゃんと書くことをメンバーの皆さんにやってもらうようにしていて、徐々に出来てきているのではないかなと思います。

小田:意外と相手にとって何が常識でないか自分ではわからないもので、言われないと気づかないことがありますよね。だからバックグラウンドの文化が異なる人に対しては、自分の常識は通用しないことを前提とすることが大事で。そのうえでお互いどう伝えたら全部の情報が適切に伝わるのか、調整努力は必要ですよね。

我々も、エンジニアリング的にはこうした方が良いという話をする際に背景を省略すると全然伝わらないことがあるので気を付けますし、質問してもらえると有難い。なあなあで進むと大体どこかで揉めますが、現状そのようなことは未然に防がれてる気がします。

中久保:知ったかぶりはなし。これはチームのカルチャーにできていると思います。徹底的に質問し、完全に理解したうえで取り組む。

小田:知らないものは聞いてしまった方が早いんですよね。そこでくじける必要はなくて、さっさと聞いて進めた方が結果最短で目標達成できる。

――― 良いシナジーやカルチャーが生まれてきているのですね。

中久保:冒頭でも少し触れたように、今までESGエキスパートチームが人手で行っていた作業をAI事業部に相談してみたら、実はAIで処理できることがわかって業務効率化につながるケースが出てきていて、これはシナジーと言えますね。新たな解決法を現在進行形で発見していっています。

小田:ESGエキスパートのみなさんには専門知識があるじゃないですか。知識は機械で代替できないんですよね。我々は機械を作る側の人間ですが、その機械へ入力する源泉となるのは人間の知識なので。知識がうまく回るように機械を作っていく必要があって、ガチっとはまるとみんながより働きやすくなったり、より使いやすいシステムができたりという効果が生まれます。だから何に困ってるかの情報提供があれば、どう“調理”するか考えるのはエンジニアが得意なところなので、色々なサポートができるかなと思います。

中久保:ESGに関する情報・非財務情報は量が膨大で、情報を取り扱う人間の数に対して量がとても多いんですよね。SmartESGのお客様である企業のサステナビリティ担当の方々もそうですし、私たちESGエキスパート自身も同様です。なので、AIへの期待値は本当に高いです。

――― AI事業部とESGエキスパートチームは、普段どのように連携をとっているのですか?やはりNotionやSlackでのテキストコミュニケーション中心でしょうか。

小田:そうですね、基本はSlackで、ドキュメントや資料をまとめる媒体としてNotionを活用しています。定期的に更新が必要な場合はお互いの定例会議に参加したり、場を設けて議論することもあります。フルリモート・非同期型で働くメンバーが多く、海外在住のメンバーもいて同じ時間に集まって会議するのが難しいこともあり、必然的にテキストコミュニケーションをメインに、最低限の会議を行いながら業務を進めるかたちになります。

中久保:ESGエキスパートチームも同じです。特に私たちのチームは、海外在住メンバーや日本語ネイティブでない英語話者もいますので、テキストコミュニケーション中心ですね。

――― 両チームとも、グローバルに採用をしているのですね。

小田:AI事業部は英語を理解するメンバーしかいないので、日本語話者以外の方に参画いただいても対応できると思います。例えば、ソースコードを管理しているところはすべて英語で記載してあります。英語でドキュメントさえ書ければ対処できる体制になっています。

ちなみに、言語だけでなく新卒・中途も区別しません。AI関係に関して言えば、学生の方が我々よりも遥かに知識があることも珍しくないですし、先に述べたようなコミュニケーションが問題ないのであれば、それ以上の区別は必要ないと思います。

中久保:ESGエキスパートも同様です。実際に日本語勉強中の英語ネイティブの方が入社してくれます。ESGの知見があれば国籍や在住地、言語問わず活躍できる環境です。

――― AI事業部立ち上げ時の目標達成まで、いま何合目あたりですか?

小田:この間シェルパメンバーで高尾山に登ったので高尾山に例えると、一号路は序盤がめちゃくちゃ大変でしたよね?あの一号路の急こう配の6割目あたりにいるのではないでしょうか……まだ大変な状況がしばらく続く。

中久保:高尾山の例え、面白いですね(笑)私も同じく非常に苦しみまして、最初の4割くらいが一番厳しかったので、確かに現在の状況に当てはめると、今6割くらいかもしれません。最も苦しいフェーズを超えつつあるところには来ていると。

小田:3割くらい登ったところで「嘘でしょ?」と思い始めるんですけど、そこを越え、あとこれだけ登れば…という残りの距離が見え始めたくらい。一度登ってしまえば順調に進んでいく土台ができて、あとは道に沿って進んでいけばうまく登れるフェーズに入ると思います。

中久保:本当にそうですよね。登山でも事業でも最初は「これ無理でしょ」ってことがあると思うんです。しかし今は大変ではあるけど無理ではない。達成できる道筋が見えてきてるっていう段階ではありますね。

小田:序盤の厳しい道をケーブルカーで楽に登った後に難所を迎えたらくじけると思うんですけど(笑)もうかなり苦労して登ってきました。


――― それでは最後に、今後取り組んでいきたいことや意気込みをそれぞれ教えていただければと思います。

小田:まずは事業部の目標である「製品に役に立つ賢い機能を順次作っていく」という大前提をしっかりやっていくことです。なおかつ、学術貢献も行っていきたいです。同じような事業領域の社外の方々との研究も進めているので、独自の研究成果も出していきたいなと思ってます。

中久保:私たちとしては、AI事業部としっかり連携しながらESGエキスパートの知見をAIで再現できるかと、どこまでプロダクトに組み込めるのかのチャレンジに挑んでいきたいです。当然AIは万能でなく、人間にしかできない部分やサポートすべき部分も出てくるので、それらはどういった領域なのか、より解像度を上げて明らかにしていきたいです。

小田:中久保さんがおっしゃった「人間と機械がどう共存するか」の観点は本当に大事で、基本的に我々の領域で全自動化できることはかなり限られるし、基本的には人間のアシストがあって一番能率良くタスクが達成できるケースの方が多い。その匙加減はESGエキスパートの知識と我々の開発知識の両方が必要だし、お互いに協力しないと達成できないことだと考えています。

中久保:そうですね、まさに私たちが今後も連携を強める醍醐味ですね。

――― おふたりとも、ありがとうございました!

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