スマホゲームにおける期待値の話
・確率における期待値は、(加重)平均
・スマホ系のゲームのバランス、デザインを考えるときは期待値をベースに議論をすることが多い
・期待値が一致していても生み出されるUXは同じにならない
・狙ったUXを実現するためには期待値ではなく確率の分布が重要
スマホに限らずゲームを作るときに必ず扱うのが「確率」である。
例えばガチャならSSRが3%、SRが10%、その他が87%みたいなやつ。
ガチャだけでなく、例えば経験値を沢山貰えるレアモンスターがPOPする確率、とか、キャラクターを強化したときに、成功、大成功、超大成功のどれかが確率で発生する、とか、クリティカルヒット発生率とか、鍵のかかった宝箱の解錠成功率とか、とにかく色々ある。
我々はこの確率を決めるときに「プレイヤーが支払うコストと得られる利益」を勘案して「これくらいならコストに見合ってるかな」という判定を行いながら設定値を探っていく。
例えば、魔法の鍵を1個使って開けられる宝箱があり、種類は金銀銅の3つである。それぞれ、
金の箱の出現率は1%で中身は1万ゴールド
銀の箱の出現率は20%で中身は1000ゴールド
銅の箱の出現率は79%で中身は10ゴールド
という設定だったとすると、この宝箱から得られるお金の期待値は
0.01*10000+0.2*1000+0.79*10=307.9
こうなる。つまり鍵1個に対して300ゴールドくらいの見返りが期待出来る計算。
もし、鍵1個の値段が300だったらきっと誰もこの箱を開けない。
50とか100だったら計算上は得になるので箱を開けようとするかもしれない。みたいな。
でもちょっと考えてみて欲しい。この箱は80%近い確率で10ゴールドしか手に入らない。つまりプレイヤーが実感するのは「鍵一つ使って10ゴールド」であり、仮に期待値が分かっていたとしても一つ一つの箱を開ける動機は弱くなってしまう。
では、
金の箱の出現率は0.1%で中身は1万ゴールド
銀の箱の出現率は10%で中身は300ゴールド
銅の箱の出現率は89.9%で中身は200ゴールド
だったらどうだろうか。期待値は
0.001*100000+0.1*300+0.899*200=309.8
になる。大体同じ。
で、この箱は鍵一つで最低でも200Gが得られる。運が良ければ300、超ラッキーな人は1万もゲットできる。
でも期待値は(ほぼ)変わらない。全体で見ればどちらも同じなのでマクロな観点でバランスを議論した場合、結論は変わらない一方、UXは全く別のものになる。
こういう事は、慣れてくるとついつい忘れてしまうので気をつけたい。
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