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【フランスで犬と暮らす】気ままでいいよ。交渉しよう。
わたしは自分の犬を、ものすごく従順には躾けてこなかった。
ゴールデンレトリバーという犬種は、フレンドリーでおっとりしている。
噛みついたり吠えたりすることもない。ダメなことを教える必要もあまりなかった。
どこに行っても愛されるように、挨拶ができて、お座りができて、お手が出来て、伏せができて、危ないときのために止まれたらいいのだ。
それで、愛想はいいけれど、かなり気ままに育ったのではないかと思う。
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散歩のとき、シラノは通りを渡りたくなると立ち止まる。座ったりする。
「あっちへ行きたいです」と首を生きたい方向へ向けたりする。
そこで、「じゃあ渡ろうか」と渡ることもあれば、「今日はまっすぐ行くの」と答えることもある。
気持ちの強い方が勝つ。シラノが動かないと、「今日は粘ってもダメ。どうしてもこちらから行く」と説得する。そうすると「わかったよ」と動いてくれる。
もちろんこちらには用があったりするから、最終的にはわたしの言うことを聞いてもらうことになる。
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道端においしいものが落ちていたら要注意。
シラノのルールでは、わたしが先に見つけて「ダメ」と言ったらあきらめることになっているらしい。シラノが先に見つけたら、それは自分に権利があると思っているみたい。だから交渉に時間はかかる。
もちろん、大抵の美味しいものは食べさせてもらえない。
例外は木の枝だ。自然の味を噛みたいだろうと、ちょっと枝をかじってもいいことになっている。お腹を壊してもいけないので、ちょっとだけ。
「そろそろいいんじゃない?」「もうちょっと」と毎回交渉がある。
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家に入るちょっと前はシラノの頑張りどころ。
「まだ帰りたくないです」と踏ん張って見たり、
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ごろんと転がってみたりする。
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困ったことかもしれないけれど、わたしはその瞬間が好きだ。
たまらなく可愛い。
意思を表してくれてありがとう。交渉してくれてありがとう。
わたしの思う通りになるばかりの犬じゃなくて、嬉しいのです。
だから、余計気ままになるのだと思うけれど、幸せだからいい。