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【フランスで犬と暮らす】シラノは交渉上手
愛犬シラノの交渉術をお伝えしたい。
交渉って相手の心を動かすことなんだなと、いつも感心するのだ。
わたしたちの食事中、食べ物が欲しいからといってシラノはテーブルに飛び乗ったりはしない。吠えたりもしない。
本当に一度もしたことがない。
そういうことは行儀が悪いと思っている節がある。
わたしたちが全くその気がないのに、思わずシラノに何かあげてしまうように、心を動かす術を心得ている。
さあ、いってみよう。シラノの交渉は食事の中盤からはじまる。
まずはじっと見つめる。
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気が付くまでずっと待っている。誠意と意思を伝えているらしい。
次に自主的にお手をしてみる。食べ物をあげるのはいけないらしいのだけれど、わたしも握手には応じる。
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次に、「あ、こっちが得策だった」と急に笑顔になってみる。
ここで、わたしがつい笑ってしまい、小さな何かをあげてしまうこともある。
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あげるものがないときもある。
あげてはいけないのだから、用意しておいたりはしない。
シラノはあきらめない。
右がダメなら、と左へ移動してみたりする。
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わたしだってシラノのことばかりかまっていられるわけではない。
すると、見られていることを意識しつつ、拗ねてみせたりする。
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ダメなら、他をあたったりする。
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いよいよ食事が終わりそう。ここが山場だ。
シラノには最後の秘策がある。
脚にあごを乗せてくる。
わたしはこれが好きで、可愛くてつい撫でてしまう。
でもこれは最後のとっておき。
シラノは長年の経験でそこをわかっている。最初からはしてくれない。
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「ここまでして何もないなんてあり得ないよね」
ダメ押しで、左側でもお手をする。
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もうとっくに心は動いていましたよ。
何かあげたくなってます。あげないではいられない。
お行儀が悪かろうが、あげるものがなかろうが、探してでも何かあげたくなってしまっているのだ。
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パンの端だったり、海苔だったり、シラノはお腹が弱いのであげられるものは少ないのだけれど、何かしらあげることになる。
この親にして、この子あり。
他の家でも同じような光景が繰り広げられているのだろうか。