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【フランス】ペットの葬儀屋に話を聞きに行った話

新居の近くで獣医を探していたら、ペットの葬儀屋を見つけた。
歩いて3分の距離。
愛犬シラノはまだ生きているし、葬儀屋なんて縁起が悪いのかもしれないけれど、老いは確実に来ているし、情報を得ておけば不安材料は減る。

サイトを見たら相談無料とあったので、予約して即日行ってみた。

葬儀社に向かいながら、こんな風に気が早いところは母に似ているなと思った。
80を過ぎた母だが、50代のときに自分達の墓を決め、戒名まで知り合いの住職さんにつけてもらっている。それに比べると遅すぎるくらいか。

葬儀社は小さい事務所を構えていて、受付の奥には遺灰を入れるおしゃれなツボや記念にするためのグッズがならべられていた。

サービスはシンプル。葬儀社というのは、火葬会社なのだ。
①合同火葬。遺灰は引き取らない。預けたらそれっきり。99€。
②個別火葬。1~2週間で遺灰を受け取る。229€。
③火葬立ち合い。予約できた日に火葬の場所まで行って、セレモニーをしながら待機する。遺灰はそのまま持ち帰る。319€。

遺灰を引き取りたいが、火葬の場所は車で1時間半もかかるところだったので、行かないだろうなと判断し、心の中で仮に②と決めた。

調べてもらったら、シラノを診てもらおうしている獣医と提携がある。

この会社にお世話になることになるんだろうな、こんなに近くなのは運命的だなと思った。
たいていは何かあったら獣医さんにお任せしてしまうのだろう。

縁あって、一歩進めて考えるよいきっかけになった。

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この先、シラノの今後のことについての重い話になるので、有料記事にしました。
購入して欲しいためでなく、重い話なので本当に興味がある方以外は読まない選択をおすすめしますという意味の有料記事です。

葬儀社の仕事の流れを確認すると、シラノが自宅で亡くなった場合は、自分たちでその事務所に遺骸を持ち込む。マイナス18℃という安置所があるのだそう。
車の後ろに遺骸を入れ、駐車場にバックで入ると、搬送台にそのまま乗せられると教えてくれた。

そうか、自分たちで遺骸を運ぶのか。
土日は休みとのことで、万が一金曜の夜に亡くなると、月曜の朝まで自宅で待たなくてはならない。それはたいへんそうだ。

獣医のところで亡くなると、獣医が亡骸を同じように低温で保管し、そのまま葬儀会社が引き取ってくれるということだった。
葬儀会社が引き取りに来てくれるのは獣医か事務所かどちらかだ。
自宅には来てくれない。

事務所は平日の昼間しか開いていないので、事務所に持ち込みとなると、夫が仕事を休むことになる。わたし一人で30㎏のシラノの亡骸を家から降ろして車に乗せるのは現実的ではない。

獣医のところで夫も一緒にいられるときに旅立たせるのが一番なんだなあとなんとなく思った。

家に帰ると、シラノは弱弱しくも喜んで迎えてくれる。

この子がいなくなる相談に行ったんだなあと思う。

去年の12月に腎の機能不全で具合が悪くなって以来、シラノはその都度回復しながらもだんだん弱ってきている。
8月には「この週末をシラノは超えられないと覚悟してください」と診断された。

その週末をなんとか過ごした月曜の朝、目に力が宿り復活したのを奇跡だと思ったし、犬には危篤になっても亡くなる前に元気が戻ることがあり、そういう状態を「最期の輝き」と言うと知ったりもしたが、だとしたらあれから2か月、誇れるほど長い大きな輝きだった。

わたしの心は今、シラノができるだけ長く生きて欲しいという方向ではなく、わたしも夫も一緒にいるときに、苦しまずに眠らせてやりたいという方向にある。

老いが進み認知機能も低下しているようで、わたしがちょっと部屋を移動すると、少し遅れてきょろきょろわたしの居場所を探す。気配や匂いではわからないようだ。引っ越したばかりとはいえ、自分の家のドアもわからない。以前ならすぐにわかったのに。

弱ってきたシラノが、留守番中に一人で具合が悪くなるかもしれないと想像すると、あまりにもかわいそうだと思ってしまう。

こんなときなのに、わたしは来月中旬から日本に帰ることに決めてしまった。
シラノも大事だけれど、日本にいる両親がしきりに会いたいというので、一人娘として帰ることを選択した。

いつもより2週間と不在の期間を短くして、夫にゆだねるつもりだったけれど、留守番中に一人で不安なまま具合が悪くなることもかわいそうだし、夫がきっと預けるに違いない夫の両親の家で、具合が悪くなったシラノの世話を高齢の両親にゆだねるのも申し訳ない。

そろそろ本当に決意する時が来ているのかもしれない。
8月のときだって、一度は覚悟を決めたではないか。

シラノはわたし達の犬だ。わたし達がそろって見送ってやりたい。
それが確実なのは、わたしが日本に行く前なのだ。

命の重みはわたしと夫でしっかり引き受けて、2人の腕の中で逝かせてやりたいと考えている。


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