ガ類の標本教室(霧ヶ谷湿原のモニタリング事業)
2023年7月16日・17日
霧ヶ谷湿原のモニタリング事業の一環として、ガ類の標本教室を実施しました。
草原性のガ類相を研究している山岸瑞樹先生が今回の講師です。
1日目は暗くなってからのライトトラップ(灯火採集)、2日目はライトトラップで採集したガ類を展翅して、標本にする作業です。
幼児から大人まで参加したライトトラップでは、夜に活動するガ類を20種類以上を確認することができました。暗闇が濃くなるにつれ、集まるガ類も増えてきます。
狭い場所なので網は使わず、採集ケースを片手に、ガ類をうまく捕まえます。ガ類の特徴を観察し、図鑑を使ったり、山岸先生に聞いたりしながら、種名を探ります。
ガ類は北広島町内でも850種類が生息しておりれ、似た種類も多いため、同定するにも時間がかかります。子どもたちが、保護者と一緒に図鑑をめくったり、ケースの中のガ類をずっと眺めていたり、キラキラした眼差しで生き物を観察している様子が印象的でした。
20時前から灯火し、21時までの観察の時間でしたが、山岸先生もはじめましてのスカシサン、胴が太く模様が特徴的なヒサゴスズメ、幼虫がカシワの葉を食べるというクロオビノメイガ、参加者が待ち望んでいたオオミズアオなどが採集できました。
そして、2日目は採集したガ類を標本にする作業です。最初に山岸先生より、ガ類についてのレクチャーがあり、標本を作る理由として、学術資料とし半永久的に保存することで、研究が進むことや、標本からも遺伝子情報を調べることができる、といった説明がされました。
また、標本にするため昆虫などのはねをひろげて固定することを展翅(てんし)といい、標本の「利用と保存の面から必要なことであるという説明もありました。
いよいよ、作業です。
小学校1年生から中学生までが挑戦しました。
ガの体の持ち方、針のさし方、翅を広げる際の注意点など、山岸先生からアドバイスをもらいながら、真剣に取り組みます。
企画の段階では、高学年からでないと作業するのは難しいのでは?という声もあがっていたのですが、虫好きの子どもたちにかかると、「好き!」という情熱と保護者との連携で、細かい作業もこなし、見事な標本が完成しました。これらはお預かりして、2ヶ月ほど乾燥させ、来季、高原の自然館内にて展示をする予定です。
標本は、生き物が生育・生息する環境の変化による影響や、生物相の変化を教えてくれる貴重な証拠となります。高原の自然館のひとつの役割として、生き物を採集して標本にし、保管することがあります。それらの知見から、環境や生き物の保全や活用の手がかりも探ります。
このモニタリング事業に、地域の子どもたちが積極的に関わり、生物多様性について触れる機会となったならとても嬉しいことです。
今後も研究者のお力を借りながら、地域のみなさんと一緒に、身近な自然の調査を定期的、定点的にできるようなプログラムの実施も検討していきたいと考えています。