スジナシの浦井健治が持ってる、という話
TBSの『スジナシ シアターVol.17』に舞台俳優の浦井健治氏が出演したものをTVerで見た。
本当は井上芳雄氏が出るところを体調不良のピンチヒッターで浦井氏が出たそうだ。
『スジナシ』は時々見る。完全なアドリブで絶対におかしいのに笑いも起きずにどんどん話が流れていき、時間が来たら強制終了なので何も回収されないまま終わったりする。それをあとから振り返って鶴瓶氏とゲスト俳優でワイワイ話すのが面白い。ありそうでないエンタメだと思う。
浦井氏は若い若いと思っていたらもうベテラン俳優になっていたのでびっくりした。若い頃に若手キャスティング枠で見てそのまま観劇から離れてしまうと知らないうちに俳優さんが大人になっているので困る。
今回は「海の家」という設定だった。浦井氏も鶴瓶氏も登場出演予定だった井上芳雄氏を何とか絡めていこうと名前を出す。出しまくる。もう小道具である。浦井氏は井上氏だけでなく一緒にユニットを組んでいる育三郎氏の名前も出すし、闇も広げるしプリンスも使う。もう属性という属性を全て出し切っていて面白い。
鶴瓶氏はやはり何回もやっているだけあって相手の台詞の拾い方が上手い。仕掛けるところも相手の台詞に乗っかったところから話が広がるよう仕掛ける。一人で間を持たせるところも話を整理したり、後ろに引っ込んだ浦内氏の登場のきっかけになりそうな台詞を言ったりと、常に客席と相手を意識していてさすがである。
そしてそれら全てを破壊していく浦井氏はもう持ってるとしか言いようがない。思ったより仕掛けていこう精神が強いのと、なんとか『井上芳雄』の存在を、たとえ本人がいなくても舞台に上げたいという気概を感じる。こういう、「ないものの存在」をそこに存在させようという考え方は舞台人っぽい。そして仕掛けるものの全く回収できずに設定だけが四散していくのが本当に面白かった。
やはり物語というのはゴールが見えないと終着点へ他人と進んでいくのは難しい、たとえどんなに協力関係であってもそうだな、としみじみ思った。ただお互い愛があればとりあえず楽しい。まぁそれでいいわよね、というのも強く思った。
『スジナシ』今度こそ井上芳雄氏が出演したものを見たいと思う。