観劇の予習、する?しない?の話

 なぜこんな記事を書き始めたかというと誘惑に負けてミュージカル『ゴースト&レディ』の原作である藤田和日郎氏の漫画『ゴーストアンドレディ』が電子コミックサイトで期間限定無料だったため、最終回だけ読んでしまったからである。誘惑に負けた。抗えなかった。運命に弄ばれて自分の道見失った。
 ここまで「舞台で見るまでは原作は読まない……サウンドトラックも聴かない……!」と目と耳を塞ぎ、そうこうしているうちにチケットが取れなくなって「これは名古屋ゴスレまで待つしかないのか……」としょげていたら千秋楽配信の報せを受け「これをみたらようやくサントラ解禁だぜ!」と本末転倒な大歓喜をしていたというのに、その「あと少し」が待てなかった。無念だが自業自得である。でも素晴らしい最終回だった。やはり藤田和日郎作品はいい。

 と、前置きが長くなったが本題だ。舞台を見る前にその原作を読む、曲を聞いておくといった「予習」。「する派」と「しない派」がいるが、私は「しない派」である。
 昔は「別にどっちでもいい派」であった。私の観劇好きは劇団四季のミュージカルが好きだった母が子供の頃によく連れて行ってくれたことが発端であるのだが、初めて連れて行かれた『キャッツ』続けて見た『オペラ座の怪人』の時は事前にCDを聞かせてくれた記憶がある。しかしその後、『コーラスライン』『クレイジーフォーユー』等は事前にサントラを聞くでもなく、特にストーリーを説明されることもなかった。それでも楽しめたのでネタバレも意に介さず、まっさらでもストーリーを追って楽しめるタイプなのだと思っていた。

 しかし数年前にミュージカル『ノートルダムの鐘』を見た時のこと。
 ご存知の通り、このミュージカルはディズニーミュージカルと銘打たれており、もうずっと前に上演されたアニメ映画『ノートルダムの鐘』が原作ということになっている。また、このアニメ映画自体はヴィクトル・ユゴーの小説『ノートルダムのせむし男』が原作だ。
 私はこのアニメ映画がとても好きで、当時買ったVHSも何度も見たしCDも何度も聴き込んでいた。ユゴーの原作をちゃんと子供向けに改変し、ハッピーエンドになるところが、まぁ少しできすぎているなぁとも思うが特にいいと思っていた。

 しかしミュージカルはディズニー版のラストと違い、きちんとユゴーの原作に沿ったものだった。
 もちろん舞台は素晴らしいものだった。演者の熱い演技、魂の籠った歌、素晴らしい楽曲に圧倒され、衝撃を受け、大いに感動した。しかしあのハッピーエンドを待ち望んでいた心の中の私は「これはユゴーやないか」とツッコミを入れた。 

 その時初めて自分が「そのシーン待ち」をしながら見ていることに気づいた。ストーリーを追いながらそこに向かう展開、整合性などを演出の中に探しながら見てしまうのでそれが変わってしまっていると脳の処理が追いつかず、ぎくしゃくしてしまう。『ノートルダムの鐘』はその一度しか見ていないのでもう一度見たい。ギクシャクしながらも素晴らしさは浴びるように感じたのでそのぎくしゃくが解消された状態でもう一度見たい。

 ということで私はなるべくまっさらな状態で初見を迎えたい「予習なし派」であるが、過日、初めて『ジーザス・クライスト=スーパースター』を見た息子は「予習してから見れば良かった」と言っていたので、おそらく予習の是非は人や作品によるのだと思う。なので他人を観劇に誘う時は押し付けすぎず、引きすぎず、「予習っているタイプ?あった方が良さそうなら色々あるけど……」と聞いた方が良さそうだと思った。余談だが息子にはそのあと今回と過去のパンフレットを束で渡してCDを聞かせ、映画DVDを見せて次の公演チケットを入手した。我ながら手厚い。

 さて、『ゴースト&レディ』の配信がもうすぐだ。原作最終回だけネタバレしている私は果たして楽しめるだろうか。まぁ一度見てまたぎくしゃくしてしまっても見逃し配信があるので1日3回毎食後に見ればおそらくその違和感も消えるだろう。視聴の仕方が薬の服用かて。

 でもその前に来週『バケモノの子』を見るので先にそちらがとても楽しみだ。オフステージイベントにも参加するのでまた記事を書きたいなと思う。

いいなと思ったら応援しよう!

高矢 色
サポートをくださる方、ありがとうございます!