バケモノの子オフステ@名古屋四季劇場
ハロウィンの日に劇団四季のミュージカル『バケモノの子』を見て、さらに終演後に行われたオフステージトークに参加してきた。
何故観劇記より先にオフステの記事を書き始めたかといえば記憶が危ういからである。なので早速書きつけていく。なんせ記憶頼りなので細かい齟齬には目を瞑って40%引きの真実くらいで読んでほしい。
終演後、事前のお知らせ通り16:40頃に再入場のアナウンスが流れ、客席に入ると舞台には跡目を決める決闘シーンのセットと椅子が五脚。名古屋四季劇場のスタッフさんからオフステ観劇についての注意事項が読み上げられ、「それではお楽しみください!」から間もなく、舞台にアンサンブルの川口雄二さんが「はいはいどうもー!今回司会進行役を勤めます川口雄二です!」と賑々しく登場。そして早速「みなさん、バケモノの子、好きですよね?」と客席に振り、「僕が、バケモノー、というので、だいすきー!で返してください!」という会場を温めるのにうってつけのコール&レスポンスが始まった。
「せーの、バケモノー?」拳を突き上げる川口さん。
「だいすきー!」控え目に声を出し拳を突き上げる我々。
「だめ、全然届かない」ヒーローショーでお姉さんがやるやりとりだ。
「もう一度!バケモノー?」「だいすきー!」「いただきましたー!」からみんなで拍手をして演者さんたちが上手から入場。大鹿さん、柴本さん、バケ子のうちわで顔を隠した田中さん、宇都宮さん、さかいさんの順にそれぞれハロウィンらしい帽子をかぶり、顔にもちょっとハロウィンらしいシールやメイクをして、椅子の前に立つ。それを見た川口さんが「あー、みんな何かしてる!じゃあ僕も」と下手へはけて魔法使いの帽子のカチューシャをつけて再登場。
川口さん「それぞれ自己紹介を。役名と名前と、好きな名古屋飯を」
大鹿さん「はい!」
と、その「はい!」に合わせてかぶりものモンスター帽子から垂れてる謎の手だか耳だかを引っ張ると、そのかぶりものがぴょこ、っと手だか耳だかを挙げる。可愛い。そしてあざとい。
これをかぶりものをしている俳優さんが全員やってくれた。可愛い。そしてあざとい。
大鹿さん「九太、蓮役の大鹿礼生です。好きな名古屋飯はうなぎです」
柴本さん「はい!」ぴょこ。「楓役の柴本優澄美です。好きな名古屋飯は鰻ですが、挑戦したいのはぴよりんです!」
田中さん「はい!」田中さんはカボチャのカチューシャだったのでぴょこ、するものがなくて挙手。ドラキュラっぽい服を着ておられる。助かる。
田中さん「熊徹役の田中彰孝です。好きな名古屋飯は鰻です」
宇都宮さん「はい」ぴょこ。
宇都宮さんのかぶりものは動物でもモンスターでもない、謎の生き物で、ぴょこ、っとしない感じだったのがぴょこっとしたので川口さんに「それも上がるんかい」と突っ込まれていた。
宇都宮さん「一郎彦役の宇都宮千織です。好きな食べ物は手羽先です」
さかいさん「はい」さかいさんもぴょこっとするものがなかったので挙手。黒のお洋服でハロウィンに寄せてくれていたのか素敵だった。
さかいさん「犬のバケモノ役のさかいこのみです。お隣、三重県の出身です。好きな食べ物は天むすです」
川口さん「ではみなさん着席してください」
ここで各々椅子に座るなか、中央の長椅子に座った田中さんが長椅子に寝転びうちわであおぎ始めるなどリラックスムードに。それに気づいた川口さんが「こらこら、お客さんの前だから!まっすぐ座って!」とつっこみ、素直にニコニコしながら座り直す田中さん。和む。そしてスタイルがいい。
「今回は『バケモノの子』を深掘りしていきたい」ということで事前のアンケートからいくつか質問をピックアップしたとのこと。川口さんが出題し、みんなが答えていく形式で進行していく。答える前に挙手するところでみんな「はい」と言いながらかぶりものをぴょこ、っとするのが地味に可愛く、あざとく、可愛かった。
Q:東京、大阪と上演された『バケモノの子』だが名古屋公演で変わったところ、ブラッシュアップしたところは?
大鹿「結構大きな変更点なんですが、少年九太から青年に変わるところで奇声を発するようになった。殺陣の演出の方がこの時の僕の顔が嫌いだと言って……嫌い?嫌?だからって……顔を出さずに声を出すようになりました」
川口「それは別にいじめられてるとかではなくて、だよね?」
大鹿「ではないです、いじめられてるんじゃないです、いじりです、仲良しです」
大鹿さん、演出家さんが自分のことを悪く言ってるわけじゃない、ということを客席に伝えたかったあまりに「嫌い」の言い方を変えて連呼していたのも面白かったし、その変更点を「奇声」呼ばわりしているのも面白い。覇気があっていい奇声ですよ?
さかい「初演の時に百点鍋のシーンで、任せて!っていうところでセロリを持って「まかセロリ」っていうのを考案したら採用されて、大阪では「おまかせナス」が採用されたから名古屋でも何か増やしたくて自分で稽古場にいっぱい野菜を持ち込んで「やルッコラ」「おやすいゴーヤ」「よろシイタケ」など、どれがいいかみんなに聞いたりして「よろシイタケ」がいいところまでいったんだけど小道具さんに作るのが難しいと言われてあえなく落選。今は「まかセロリ」「おまかせナス」の2つで、ナスはレアです。見ると幸運が訪れます」
川口「で、今日はナスだったと」
さかいさん「みなさんに幸運が訪れます」
そしてそのエピソード聞くに四季ってみんな仲良さそうね。シイタケがいいところまでいった、っていうのがトーナメント戦みたいでいいなと思う。幸運をありがとうさかいさん。
柴本「ソロのシーン。やってるうちに身振り手振りが大きくなって、そこに頼ってた部分もあるのだけど、ここは蓮との対話だからもっと自然にやるようにと指導を受けたので今はあまり大きくならないよう自然に歌うようにしている。でも手持ち無沙汰だなぁと思う時もある。でもこの方が蓮には伝わってるのかな、と。伝わってる?」
大鹿「確かにここは蓮との会話のところだから。僕は今の方が好きです」
ここで「どう変わったのかやって見せてよ」という川口さんからの提案に客席から拍手。「えー、恥ずかしいなぁ」と言いながら立ち上がる柴本さん。相手役の大鹿さんも立ち上がる。
川口「どんな感じだったか、ちょっと誇張気味で、ね」
それに応えるようにふわぁーっと両手を広げたりぴょんと跳ねながら蓮の周りを動いたりする柴本さん。可愛い。
川口「で、今は?」
もう一度振られて控えめな手振りと動きて再現する柴本さん。それに合わせてちゃんと本番同様に顔を動かす大鹿さん。客席から拍手。
大鹿「今の方がいいと思う。手持ち無沙汰な時も伝わってた」
気づかれている柴本さん面白い。
川口「図書館で新聞を破るシーンは今まで座って破っていたのを立ち上がって破るようになった。そして去り際にそれでケツをパァンと叩くという」
そのシーンを再現しながら持っている進行用のバインダーでケツを叩きパァンという音を客席に響き渡らせる川口さん。面白い。そして川口さんは司会進行がうまい。
宇都宮「最後の殺陣のシーンが少しだけ変わってて…こう…もっと心理が見たいということで…長めになりました」
宇都宮さん、本番ではバァーンとデカい声を響かせて動きも大きいし台詞も聞き取りやすいのにオフステでは小声で言葉を慎重に選び、身振り手振りをまじえ、時々空を見つめながら話されていたのでボソボソ気味なのがギャップがあって面白い。
田中「猪王山はよりクールに、熊徹はより熱く演じるようになりました」
全員に聞き終わったあと、まだ緊張気味で乗り切れてないメンバーのトークに川口さんが「あんまり深掘りもできてないですね」と言っていた。いやいや、川口さんから柴本さんへの「ちょっと演ってみせて」は最高のパスでしたよ!
Q:本番前のルーティーンはある?
田中「昔、毎日裸になる役をしていたので(ライオンキングのシンバだ……と含み笑いする客席のみなさん)その時は大きく見せる筋肉を作るためのトレーニングをしていたけれど……」
川口「見せる筋肉?」
田中「そう、見せる筋肉を…でも、この役は毛皮とかいっぱい着てたくさん動くので長時間動いても疲れない筋肉をつけなきゃいけないので毎朝ヨガをしています。朝起きて1時間くらい」
へー!という顔の共演者と客席。
川口「じゃあこれから見る時にね、この熊徹はヨガをやってるんだな、と思いながら見てもらって……」
田中「いやいや!熊徹はヨガなんかしない!」
即座に否定する田中さん。確かに熊徹はヨガなんかしそうにない。
さかい「私は……本番前に跳ねてます」
「……跳ねてる?」理解が追いつかず問い直す川口さん。
さかい「そう、ぴょんぴょん跳ねるんです」
柴本「あー確かに跳ねてる」
さかい「そう。跳ねると、波動が上がるらしくて……人の波動が上がってハッピーになるらしくて」
また理解を置いてけぼりにするさかいさん。
さかい「なので誰か誘って跳ねてます」
人を巻き添えにするスタイルのさかいさん、推せる。
川口「確かに毎日ハッピーそうだもんね」
さかい「ハッピーです!みんなもやってください」
田中「やるやる!ヨガの時に跳ねる!」
ヨガにジャンプを取り入れるのは難しくない?
Q:ハロウィンの思い出は?
大鹿「やっぱりこのバケモノの子じゃないですか?確か東京から始まってハロウィンの日に舞台があったのは名古屋が初めての筈。今までお休みだったりで……」
そうだよね、そういえばそうだね、と合いの手を入れる共演者たち。そんなに貴重な日だったのか……日付入り烏龍茶買っておけば良かった……。
川口「2幕の頭もちょっと変えてね?」
そうよね?ハロウィンナイトのあと「トリックオアトリート?」って今日アドリブで言ってたわよね?
田中「今日この被り物をしたこと?……あとノートルダムの鐘をやっていた頃に、その中に出てくる「さかさま祭り」という普段とは地位もひっくり返る、っていう乱痴気騒ぎのシーンがあって、これは渋谷ハロウィンじゃないか?と思ってその時に共演者達と行ってみた。今は規制されているけど当時はすごくて。早々に退散して次の日ニュースを見たら軽トラが横転された、って流れて。あの日、僕はあそこにいました!」
ここで全く話さない宇都宮さんが控えめにかぶりもの挙手をして話し始める。
宇都宮「研究生の頃に同期で集まってハロウィンの仮装をして。デビューしたてでみんなそこそこメイク道具が集まり始めてる頃で……誰かのメイクを借りたり、お金使って、衣装も買ってきて……」
微笑みながらの楽しそうな始まりのトークにここから暗雲が立ち込め始める。
「結構ちゃんとした仕上がりになったんだけども……でも……今その時の衣装とかどこ行っちゃったのかな、っていう感じで……もっとちゃんと楽しめば良かったな、って……」
トーンダウンしていき後悔の色が強めのトークに落ち着く宇都宮さん。話始めとの落差に川口さんも「楽しいハロウィンの思い出ができたらまた教えてね」と助け舟。
「なんの仮装したの?」共演者から質問が。
「ガイコツ……あの、『リメンバーミー』の……」
「仮装してどこか行ったの?」
「いや、みんなで一部屋に集まって……」
「何人くらい集まったの?」
「16人くらい……?」
(ぎゅうぎゅうだな?)という空気に包まれる会場。
「ぎゅうぎゅうじゃん」ちゃんと言語化する柴本さん。
「ぎゅうぎゅうでした」ぎゅうぎゅうだった宇都宮さん。
Q:共演者のココがすごい!というところは?
川口「子役はすごいよね!ホントに丁寧にやってる。基礎から僕たちよりちゃんとやってる」
大鹿「元気もあるしね。元気を貰えるよね」
田中「子役がすごい、っていうのは礼生くん(大鹿さんのこと)もね。ヤングシンバだった彼と今こうして一緒に舞台に立っているっていうのが。僕はおじさんになったけどこうして大人になって一緒にやれて、っていうのが九太に重なりますね」
大鹿「いや全然おじさんじゃないですけど。でも感慨深いですよね。だからぼくも今子役の九太がいつか大人になった時にこんなふうに一緒にできたらって思います。彰孝さん(田中さんのこと)のあとを追います!」
心強い。そして確かに田中さんは全然おじさんではなかった。ずっとカッコいいわねアッキー。
「いい話で締まりましたね」まとめに入る川口さん。ここでさかいさんがすかさず「ぐっさん!この人すごいんですよ!」と挙手。
さかい「バケモノの時、後ろのアドリブのシーンの時に上手でヤギの子供が泣いてるところがあるんですけれどもぐっさんが「やめろやめろ!子供が泣いてるじゃないか!トラウマになるぞ!トラウマ?!トラだかウマだかハッキリしろ!」って言ったり渋谷のサンタクロースの衣装の時に「僕は誰でしょう?1、2、サンタクロース!」って言ったり。わ!この人面白い!って」
「こんなところで暴露されるとは……変な汗出たわ怖っ」と自分の肩を抱く川口さん。
さかいさん、川口さんのこと面白いって言うけどご本人も相当面白いことにまだ気づいてなさそうなところが面白い。
Q:みなさんもう一度見ると思うので見どころを
大鹿「九太と二郎丸のやり取りですね。この二人は大きくなってからはそんなに関わりがないんですがコミュニケーションの取り方が基本肩パンなんですよ」
言いながら拳を肩に当てる大鹿さん。言われてみればどちらも話しかける時に肩をグーで小突いている。
大鹿「その人によって強さや場所が違うけど本当に痛い時もある。響くん(この日の二郎丸の演者さん)はちょうどいいところに入れてくるから僕もいいところに入れるようにしている。本当に痛がってるのを見てください」
川口「肩パンを楽しんでほしい、と」
柴本「蓮くんに自分を置いてみたり、今日は一郎彦になったつもりで見たり、色んな視点から楽しんで見てほしい。私がそうやって見て楽しんでいるのと、この作品は色んな人が出ているので自分にはまるキャラがいると思う」
川口「キャストは30人いるので30回ですね。見てください!」
30回だって100回だって見たいので観劇して500万円貰える身分になりたい。
田中「さっきのアドリブの話もそうだけど、バケモノの登場人物たちにも物語があって、恋人同士だったり2幕でまた関係性が変わっていたり、違う動物同士で家族になって「これどんな子供が産まれるんだ?」みたいな。そういう世界の膨らませ方やそれぞれの作り込み、設定がこの作品のリアリティを支えているから見どころはたくさんあります」
宇都宮「最後のクジラですね。出てきて映像になったりジャンプしたり……パーツに分かれたり。一郎彦はあれに助けられてるところもあって……隠れたり……浮遊感だったり、本当に生きてるように動く。みなさんすごいこだわってやってらっしゃいますよね?」
川口さんを見る宇都宮さん。たしかこの流れで「そういえば」と田中さんから名古屋公演の裏話。
田中「名古屋公演直前のお稽古の時にちょっと大きめのトラブルがあって。そこにたまたま見学に来ていた川口さんがそのまま白鯨のシーンに入って今名古屋公演出られてるんですよね?」
川口「元々稽古には出てなかったんだけど東京公演の時に演じていたのでそのままの演出でやらせてもらって……いやぁ、見学に行っとくもんですね」
シンプルにすごくない?
さかい「子役ちゃんたちですね。子役ちゃんたちって本当に日々成長していて。私たちみたいに毎日出てないので日があいて来ると初日はできなかった演技が出来ていたり、こんな表情できるようになったんだー!と本当に目に見えて成長を感じる。卒業の時にはその子のラストシーンを出演者みんなで舞台の袖から見守ってて。この作品のまんま、子供を大人たちが見守っている感じです。子供達の成長を見にきてください」
このさかいさんの話を聞いて、四季に元子役の方々が入団してくるのがなんとなく分かった気がする。
ここから質問コーナーにうつるが、長くなったので一旦おしまい。次回宮野氏の手羽先トーク編をお待ちください。