本に導かれて。
『天地明察』
2021年最も私を興奮させ、衝撃を与えた本だ。
使命を全うすること。天地を繋ぐ大仕事を成し遂げるその人生。何かに人生をかけて、真っ直ぐに生きていくその生き様。
全てが、かっこよかった。主人公安井算哲(渋川春海)の算術への熱意。読了後、胸の奥で何かが熱く燃え上がるような感覚があった。こんな風に生きれたら、いや、こんな風に生きていく、と心のギアが加速した。そして、歴史が知識としてではなく、私の中に、体感として入ってきた。
私のなかの安井算哲への憧れが私を突き動かす。会津若松へも旅をした。そして保科正之にまつわる土地へ赴き、安井算哲と保科正之の絆や2人を取り巻いていた時代に思いを馳せた。
そして今日、渋谷の金王八幡宮へ。物語冒頭で登場する場所。算術への熱意に導かれて算哲がやってきた場所へ私も足を運んだ。
あぁ、ここで算哲は時間も忘れて算術に没頭したのか、ここで算哲はあの人に出会うのか、この金王桜を算哲も見ていたのか、そう思うと、思わず目を閉じて当時に思いを馳せずにはいられなかった。
宝物館の中には当時の算術の記録を残した絵馬が。扇形でカラフルな絵馬があり、そこに算術の問題が美しく記されている。
その説明の中に、こんな一言があった。
「当時の人は、難解な問題が解けたとき、自分の能力を驕るのではなく、神仏の御心によるものと感謝の気持ちを表すために絵馬を奉納した」
算術という一見、神や仏と関係ないと思われることでも、全てが導きによるものであるとして謙虚さと感謝の心を持っていた江戸の人たち。
なんだか、素直に、素敵だなと思った。最近、「起こること全てに意味がある」という言葉が好きで、見えないものに導かれて、私は今ここにあるべくしてあるんだ、と考えるようになったからかな。
事実は小説よりも奇なり。
人の人生は「ああすればこうなる」とはならないところが面白い。ロジックに当てはまらないから悩んだり苦しんだり、喜んだりや幸せな気持ちになったりする。
いかにもロジックだけで出来てそうな算術だけど、未だに世界には解けないものがたくさんあるという。人智を超えた宇宙大の広がりが算術にはあるのだと当時の人は感じていたのかもしれない。ピタゴラスも「万物の根源は数である」と言ったくらい、奥の深い世界なんだろう。
いつか、深く考えてみたいな。今は、この本を胸に抱えて、明日死んでもいいというくらい輝く毎日を送っていこう。