幕間 アンジュの誕生日パーティー
7月1日。福岡県某所、天神家別荘内。
天神家主導の元、天神家の別荘ではアンジュの誕生日パーティーの準備が進められていた。ひめかと屋敷の使用人たちが準備を進める中、客間ではしの、ふうか、そして本日の主役であるアンジュが暇を持て余していた。
「あれ、何してるの?アンジュちゃん」
下を向いて黙々と何かやっている様子が気になり、しのはアンジュに声をかけた。どうやらアンジュは携帯ゲームを楽しんでいるようだった。
「コレは『お爺チャンバラ』というゲームネ!」
「モーモクのサムライ、ザトーイチが敵をバッサバッサと切り倒す、爽快アクションゲームデース!」
「座頭市とは渋いねえ。どんなストーリーなんだ?」
2人の会話にふうかが割って入る。
「最初はルローニに扮したザトーイチが、街を支配スル悪代官たちを成敗スルお話ナノ」
「おぉーカッコいい!」
「王道な感じのストーリーだな」
「でもネ、実は悪代官たちは南蛮からやってキタ悪魔で、ザトーイチの正体は悪魔を狩ル伝説のデビルハンターなんだヨ!」
「えぇーーー!!!」
「いきなりファンタジーになったな・・・」
「ワタシの一番のお気に入りは仕込み銃ネ。銀のタマが当たるとザコ悪魔を一撃でカイシャクできて気持ちいいんダヨ!」
「介錯ってそういう意味じゃねぇし!」
「サムライがカタナと銃の両方を使うなんて、最高にワビサビワサビが効いてるネ」
「アンジュちゃん・・・それもう侍じゃなくない?・・・」
「しのサン、細けぇコタァは気にするでネェ!」
「2人もやってみル?楽しいヨ!」
〜数時間後〜
しの君、ふうか君、アンジュは交代で『お爺チャンバラ』を楽しんでいた。
「むぅ・・・意外と難しいです」
「ただのおふざけゲームだと思ってたら、コンボが奥深くてめちゃくちゃゲーム性高いぞ、これ」
「フッフッフ、オヌシらもまだまだでござるナ!」
「ぐぬぬぅ〜・・・もう一回!・・・あ!」
部屋に入ってきた(僕/私)の存在にしの君が気づく。それにつられてふうか君も。
「ふひひ、ようやくご本命の登場だね」
「もぉ〜司令、遅いですよ!」
“ゴメンゴメン。中々コレだっていうものが見つからなくて・・・ちょっと遅くなっちゃった。あ、でも他の皆も到着したみたいだね”
別荘の門の方から敷地内へ向かって、大勢の足音と話し声が聞こえてくる。
「みんな!」
アンジュは窓から上半身を乗り出し、外にいる華撃団の皆に手を振った。
「ふふふ・・・どうやら皆さん揃ったようですわね」
“ひめか君”
「準備は整っておりますわ。さあ、料理が冷めぬ内に始めましょう、司令」
“うん、そうだね。早速始めようか”
「みんな、今日はワタシのために集まってくれてアリガトウ!拙者、シゴク光栄カンシャ感激あめあられネ」
パーティーの会場となっている邸内の庭。皆を前に、アンジュは感謝の言葉を述べた。
「ほ〜ら、司令」
ふうか君に肘で小突かれた(僕/私)は、紙の手提げ袋から先程買ってきた小箱を取り出した。
“はいアンジュ、これ”
(僕/私)はそれをアンジュに手渡し、受け取ったアンジュは早速小箱の蓋を開け、中身を確認した。
中に入っているのは椿の髪飾りだ。いつもアンジュが付けているものとは違うサイズ、装飾。花の色も被らないよう、白のものを選んだ。
「わぁ、ツバキの髪飾り!」
“約束してたでしょ?『あとで渡す』って”
“どうかな?”
「すっごく綺麗ダヨ!コレ、大切にするね。アリガトウ、司令!」
アンジュは満面の笑顔で喜んでくれた。
“気に入ってくれたようで良かったよ”
その様子を見届けた(僕/私)は、皆に視線を飛ばし、合図をした。
“いくよみんな、せーの・・・”
『アンジュ、お誕生日おめでとう!』