サラリーマン世代に持ち家で安心するか? 借家で身軽に生活するか? どちらが老後生活に有利なの?
サラリーマン世代に持ち家で安心するか? 借家で身軽に生活するか? どちらが老後生活に有利なの?の議論、総論は尽きないモノです。
今は住宅ローンの金利が低いので、家賃並みの毎月支払額で家が持てる、といった宣伝も見かけるほどです。
実際にはもう少し必要なのでしょうが、それにしても家賃を払い続けるよりは買ってしまうという選択肢は魅力的ですね。
一方で、現役時代は仕事が変わったり、職場が変わったり、子どもができたり巣立ったり、いろいろな変化があり得るので、借家でもいいのかもしれません。
人口が減少しつつある地域ではとくに、不動産価格が下落するリスクも大きいですから。
というわけで一長一短なのですが、それでも筆者は、原則として若いときに家を買うべきだと考えています。
理由のひとつは、老後は後述するように持ち家に住むべきだからです。
理由のもうひとつは、これも後述するように、自宅購入資金を退職時までに貯めるのは容易ではないからです。
老後の借家暮らしは「長生き&インフレリスク」を増幅
老後資金を考える際の最大のリスクは、長生きをしているあいだにインフレが来て、現役時代に蓄えた老後資金が底を突いてしまうことです。
平均寿命は医学の進歩で延びていますが、それ以上に長生きする可能性も十分あります。
本来、長生きは大変おめでたいことですが、老後資金についてのみ考えるなら「長生き=リスク」なのです。
少しずつ老後資金を取り崩していくと、途中で底を突く可能性があるからです。
そこにインフレになったら大変です。銀行預金は利子がほぼゼロなのに、毎月の取崩額は増えていくわけですから。
インフレが来ないと思っている人も多いでしょうが、そんなことはありません。
少子高齢化で労働力不足になれば、賃金が上昇します。
それがインフレを招くかもしれません。
もし大地震が来て復興資材の値段が高騰すれば、輸入代金の支払いでドルが高くなります。
そうなれば、輸入物価が高騰するかもしれません。
生活費のことだけを考えても長生きとインフレがリスクなのに、それに家賃が上乗せされたら大変です。
老後に借家住まいをしていると、ずっと家賃を払い続けなければなりません。
長生きしているあいだにインフレが来て家賃が値上がりしていくようなことがあると、事態は深刻です。
生活費だけでも長生きとインフレによって老後資金が枯渇しかねないのに、それに上乗せされる家賃まで、長生きとインフレによって膨れ上がるのですから。
定年後の家賃や住宅購入資金まで準備するのは大変
現役時代に借家住まいをしていると、家賃を払うわけですが、それに加え、退職日までに相当多額の資金を貯めておく必要があります。
老後に借家住まいをするなら、その分の家賃を現役時代に貯めておかなくてはいけませんし、退職時に家を買うなら、やはりその分の資金を現役時代に貯めておかなくてはいけません。
老後資金に加え、住宅資金も貯める必要があるわけです。
現役時代に、家賃を払いながら多額の資金を貯めるのは辛いと思います。
しかも、相当意思が強くないといけないでしょう。
「定年退職時までに金を貯めなくては」と思っていても、「来月から始めよう」ということで先延ばしにする人が多いはずですから。
「夏までに痩せよう」といったダイエットでさえも「明日から」と先延ばしする人が多いことを考えれば、何十年も先のことは先延ばしする人が多いはずだ、というのは納得していただけるでしょう。
その点、現役時代に住宅ローンを借りて家を買ってしまえば、意思が弱くても銀行が毎月元利金を取り立ててくれますから、つい気が緩んで贅沢をしてしまう…といったことはできません。
もし大地震が来たら、独居老人になったら…?
もし南海トラフ大地震が来たら、借家人は住むところがなくなってしまいます。
しかし、自宅に住んでいれば土地は残りますから、たとえ戦後のバラック住宅のようなものであっても、なにかしら建てて住むことは可能です。
考えたくない状況かもしれませんが、重要なのは「なにがリスクなのか」を理解して、対策をとることです。
考えたくないことは考えない、という姿勢はいかがなものかと思います。
考えたくないことのもうひとつとして、ひとり暮らしの高齢者に家を貸したがらない大家が多い、ということも認識しておきましょう。
大家さんの気持ちもわかります。借家人に家賃を滞納されて、催促に行ったら孤独死していた、などということになったら大変ですから。
高齢者になってから借家に住もうと思っている人は、家が借りられないということもリスクとして認識しておくべきでしょう。
賃貸生活も、賃貸物件の運営も「リスク大」
借家より持ち家と書くと、筆者が不動産保有に前向きだと思われるかもしれませんが、それは違います。
投資物件として貸家を持つのはリスクが大きいので、避けるべきだと考えています。
自宅と貸家を持つと、資産全体にしめる不動産の比率が高くなり過ぎますし、人口減少社会においては、貸家は空室リスク等が大きいので要注意です。