
なんで死亡診断書のコピーは5部以上とるの?!
はじめに
大切な人を亡くした後、残された家族には膨大な量の手続が待っています。
しかし手続を放置すると、過料(金銭を徴収する制裁)が生じるケースもあり、要注意です。
また国税庁によれば、2019年7月~2020年6月において、税務調査を受けた家庭の85.3%が修正となり、1件当たりの平均追徴課税(申告ミス等により追加で課税される税金)は、なんと641万円でした。
税務署は「不慣れだったため、計算を間違えてしまった」という人でも容赦しません。
ここでは「身近な人が亡くなった後の全手続」を、実務の流れ・必要書類・税務面での注意点など含め、あますところなく解説します。
相続専門税理士の橘慶太氏。税理士法人の代表でもあり、相続の相談実績は5000人を超えます。
葬儀、年金、保険、名義変更、不動産、遺言書、認知症対策と、あらゆる観点から、相続手続のカンドコロを伝えています。

死亡届と死亡診断書とは?
死亡届とは、死亡の事実を市区町村の役所に届け出る手続です。
死亡届はA3サイズで、左半分が死亡届、右半分が死亡診断書(死体検案書)となっています(下図参照)

入手先と提出先は?
死亡届は、役所の窓口やホームページからも入手が可能ですが、一般的には、死亡した病院の医師や警察委託の医師から入手することになります。
提出先は、故人の本籍地、届出人となる人の住所地、もしくは、死亡した地のいずれかの役所となります。
提出期限を過ぎると、過料が科される
亡くなったことを知った日から7日以内に提出する必要があります。
ちなみに、7日目が閉庁日であった場合には、翌開庁日までに提出すれば大丈夫です。
また、国外で死亡した場合には、亡くなったことを知った日から3ヵ月以内に提出すれば良いとされています。
なお死亡届を期限以内に提出していない場合、5万円以下の過料が科されます。
親族が死亡届を提出しなければいけないの?
死亡届を役所に提出する人は誰でもかまいません。
最近では、葬儀社が代行してくれる場合が多いようですので、葬儀社に相談することをオススメします。
ただし、死亡届に記載をされる「届出人」になれる人は下記の通り決まっています。
・親族
・親族以外で故人と同居していた人
・家主や地主、家屋管理人や土地管理人
・後見人、保佐人、補助人、任意後見人、任意後見受任者
死亡届の左下「届出人」の欄に、故人との関係性、住所、本籍地、筆頭者の氏名、生年月日を記入し、署名をします。
必ず、届出人本人が署名をしてください。押印は任意です。
なお、届出人が親族等の場合には、本人確認書類や故人との関係を示す書類は不要ですが、家主や地主、後見人等が届出人となる場合には、その関係性や資格を証明する書類が必要になります。
ちなみに、この欄に記入した方は、故人の戸籍謄本に「届出人」として氏名が記載されることになります。
下図は死亡届の記入例です。

死亡診断書と死体検案書の違いとは?
死亡診断書も死体検案書も記載される内容は同じです。
発行者の違いによって呼び方が異なります。詳しく見ていきましょう。
故人が入院しており、その入院先で亡くなった場合
担当医師が死亡診断書を発行します。
病院にもよりますが、費用は平均5000円前後です。
故人が入院中の病院以外で亡くなった場合
①故人が通院して治療を受けており、その疾病が原因で死亡した場合
入院はしていなかったものの、何らかの疾病により継続的に治療を受けていた人が、その疾病が原因により死亡した場合は、その治療をしていた担当医が死亡診断書を発行します。
②上記以外の場合
死因がはっきりせず、医師が死亡診断書を発行できない場合は、検視(検死)という手続が必要になります。
検視とは、事故や突発的な死亡により、検察官や警察職員(司法警察員)によって、犯罪性の有無を調べるために行うものです。
この検視が終わった後に発行されるものが、死体検案書になります。
検視が行われる主な状況
・自然死であっても、病院や主治医がいない状況での死である場合
・事故や災害での死である場合
・自殺、他殺である場合
・突然死である場合
検視においては、医師の診断だけでなく、警察から遺族や発見者への事情聴取も行われることがあります。
検視によって事件性があると判断した場合には、警察は司法解剖を医師に依頼します。
この場合、遺族は司法解剖を拒否できません。
また、司法解剖は必要ないと判断された場合でも、遺族の意向次第では、あえて解剖を行い、死因の究明をできる限り正確に行う場合もあります。
死亡診断書のコピーをとるべき理由
役所に対して、死亡届(死亡診断書を含む)は原本を提出する必要があります。
そして、一度提出したものは原則として返却されません。
しかし、保険金の請求など、さまざまな場面で死亡診断書(死体検案書)の提出が求められます。
そのため、提出前に必ず多めにコピーを取っておきましょう(5部以上推奨)。
下図は死亡診断書の記入例です。

火葬許可証の申請も同時に行う
死亡届の提出と同時に、「火葬許可申請書」も提出し、火葬の許可を受ける必要があります。この申請も多くの場合、葬儀社が代行してくれます。
この火葬許可証は火葬当日に火葬場に提出します。
火葬が終わると、「火葬済」と押印をしてくれますので、納骨日までしっかりと保管しましょう(失くさないよう、骨壺を入れる木箱の中に入れておくといいでしょう)。
この火葬済と押印された火葬許可証がないと、納骨ができません。
「死亡」が戸籍に反映されるまでには、時間が必要死亡届を提出すると戸籍謄本に「死亡」という欄が追加されます。
この追加がされるまでに1週間~2週間程度の時間がかかります。
さまざまな手続を行うにあたって、「死亡」が記載された戸籍謄本が必要になってきますが、あまり早く取得すると、反映されていない場合があるので注意しましょう。
相続手続を甘く見てはいけません
国税庁より、2019年7月~2020年6月における「相続税の調査状況」が公表されました。
税務調査を受けた家庭の85.3%が修正となり、1件当たりの平均追徴課税(申告ミス等により追加で課税される税金)は、なんと641万円でした。
税務署は「不慣れだったため計算を間違えてしまった」という人にも容赦はしません。
ミスはミスです。
相続に限らず、法律知識は「知っているか・知らないか」で大きな差がつきます。
悲しみに暮れる暇なく、膨大な手続に追われる
大切な人を亡くした後、残された家族には、膨大な量の相続手続が待っています。
葬儀であれば、故人が亡くなった4~5日の間に、
●死亡届の提出 ●葬儀社の選定 ●葬儀の打ち合わせ(場所等)
●親族、会社関係者への連絡 ●通夜 ●葬儀、告別式 ●火葬、納骨
などのことを一気にやらなければなりません。
ひと区切りついたと思いきや、今度は保険証や免許証の返納、銀行の解約手続、準確定申告などが待ちかまえています。
そして、これらの手続には期限があります。
中には亡くなった日から7日以内にしなければいけないものもあり、気づいたときには期限が過ぎ、過料(金銭を徴収する制裁)が生じるケースもあります。