金価格が高騰
2023年11月現在、金の買取価格が過去最高値の1万円台を記録するなど、高騰が続いています。金は「有事の金」といわれ、国際情勢が不安定化しているときなどに値上がりする傾向があります。
金は過去に通貨として使われていた歴史があるため、通貨との関連性がなくなった現在も価値の貯蔵手段とみなされているのがその理由です。
しかし、現代社会では他の商品と金との交換はできません。金を保有している方のなかには、現金化のタイミングを計っている方もいるのではないでしょうか。
金の価格は高騰し過去最高値を更新している
近年、日本国内における金価格は上昇傾向にあります。2023年12月1日には、金の小売価格は1gあたり1万719円と過去最高値を更新しました。
同年3月に9,000円台を突破して以来、上昇傾向が続いています。
2023年に入ってから、海外の金価格と日本の金価格(小売価格)は同じような動きを見せていました。
しかし、4月以降は海外価格が横這いないしは下落傾向を示しているのに対して、円建ての金小売価格は引き続き上昇トレンドにあります。
金価格はなぜ高騰している?5つの理由
直近で円建ての金小売価格は最高値が更新され続けており、高い水準で推移しています。なぜこのようになったのか、5つの理由を紹介します。
・円安傾向になっている
・金の供給量が追いついていない
・各国が金を購入している
・世界的な低金利に陥っている
・地政学リスクや経済に対する不安がある
※項目をタップで詳細に移動
円安傾向になっている
2023年9月21日時点のドル円相場は147円台後半です。同年4月3日が1ドル132円台であったことを考えると、ずいぶん円安が進行しています。
日本では長年にわたり、超低金利政策がとられています。
それに対してアメリカでは、インフレを抑えるためにコロナショックへの対応として引き下げていた政策金利を、2022年3月から徐々に引き上げてきました。
円安ドル高の最大の要因と見られているのは、日米の金利差です。
より高い金利を求めて円が売られドルが買われることで、円安ドル高となります。
金の取引は世界中で行なわれており、基本的に取引はドル建てです。
日本で使われる円建ての金価格は、ドル建てで決まる金価格をドル円相場で円換算したものです。そのため、円安傾向になると日本の金価格は上昇します。
円建ての金価格がドル建ての金価格と軌を一にしない右肩上がりの上昇傾向を見せているのは、持続する円安傾向のためだといえます。
金の供給量が追いついていない
金需要の大部分を占めるのは宝飾品と金投資です。
また、金は工業利用されており、近年は半導体など電子機器関連での需要も伸びています。
その一方で、鉱山会社では金鉱山の開発案件がほとんど出ておらず、世界の年間金生産量は頭打ち状態です。
金の需要増加に供給が追いつかない状況も、金価格上昇の要因といえそうです。
各国が金を購入している
各国の中央銀行は、1989年から2009年までは金の売り手でしたが、2010年から買い手に転じました。
中央銀行は、対外債務の返済や緊急事態に物資を輸入するための備えとして、また外国為替相場の安定を図るための為替介入の原資として、一定の外貨準備を保有しています。
保有資産の集中によるリスクを避けるのに、各国中央銀行は外貨準備の種類を分散させており、金も外貨準備の一部を占めています。
特に、ソブリンリスクが高まり国の信用リスクが意識されるようになってから、新興国を中心に、特定通貨への依存度を下げる動きが強まっており、金はさらに買い進められている状況です。
その理由は、発行国の信用力に依存する各国通貨と異なり、金が無国籍通貨として揺るぎない価値を持っているからです。
世界的な低金利に陥っている
金は、保有していても金利が付きません。
そのため金利が高い局面では、債券などを保有すれば得られたはずの利益を逃してしまいます。
コロナショックから立ち直るのに、ごく最近まで各国は低金利政策をとっていました。
低金利のために金保有によって逃す利益をさほど意識しなくて良かったことが、金への需要を押し上げてきたといえるでしょう。
なお、2022年3月からアメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを開始しており、米国の金利は上昇しています。
それでも金価格が高水準を保っていることから、世界情勢の不確実性に対する不安の強さがうかがえます。
地政学リスクや経済に対する不安がある
地政学リスクとは、特定地域の政治的・軍事的・社会的な緊張の高まりが、関係の深い地域に経済的な悪影響を与え、ひいては世界経済などの先行きに不安をもたらすことです。
2022年2月に始まったロシアとウクライナの戦闘状態は、世界経済にとって多大な影響を与えており、典型的な地政学リスクといえます。
また、2023年に生じたアメリカの銀行破たんで、金融システム不安が生じました。
新興企業をおもな取引先としていたシリコンバレーバンクが経営困難に陥り、次々と預金が引き出されて破たんします。
ほかの銀行の経営に対しても不安が高まり、シグネチャー・バンク、ファースト・リパブリック・バンクが2ヵ月という短期間で相次いで破たんしました。
地政学リスクの高まりや金融不安の発生などによる不安心理がある状況下で、信用リスクがなく、危機の際に価値が上がりやすい安全資産である金への需要が高まっているのです。
金相場は今後どうなる?
今後の金価格は、10年~20年という長い期間で考えると緩やかに上がる可能性が高いとされています。
その理由は、金の埋蔵量に限りがあることと、実需が価格を下支えしていることです。
金は宝飾品やコインなどに需要があり、半導体など電子部品の製造にも使われます。
また、金は通貨の代替としての役目を果たせるため、各国の中央銀行に保有されています。
特に近年では、新興国などが通貨価値の保全のために金の保有高を増やしており、需要が減るとは考えにくい状況です。
ただし、長期的には上がる可能性が高いとはいえ、金価格が落ち着く、もしくは下落するといったケースも想定しておく必要があります。
金は、株式や債券、あるいは通貨など他の資産と異なり、企業価値や国の信用力によって影響を受けない一定の価値を持つことが特徴です。
そのため、金への需要は、世界情勢が不安定なときに増大します。
企業価値の増大が見込め、安心して投資できる状況になれば、投資家は金を手放し、収益を求めて株式などリスク資産への投資を進めるでしょう。
現在問題となっているロシアとウクライナの戦闘状態が解決すれば、いったん金への需要が減退し、金価格が下落する可能性は十分あります。
また、円建ての金価格は、現在の円安トレンドが円高に変わったときに下落するリスクを常に抱えていることも忘れてはなりません。
金も投資です。
いつも調子が良いということは決してありません。
そのことを理解されて投資をされることをオススメします。