年金受給額を4割アップさせる方法があるって本当?
はじめに
いよいよ2022年度が始まりました。
この4月、年金にまつわる制度がたくさん改正されたことをご存知でしょうか。
中でも「繰上げ受給」「繰下げ受給」の改正は注目ポイントです。
実は「年金を4割アップさせる方法がある」というウワサの根拠となるこの制度。
改正によって私達の生活にどう影響するのか、くわしく見ていきましょう。
年金の受給額をアップさせる方法とは
年金の受給額をアップさせる方法はいくつかありますが、効果が高いのが「繰下げ受給を活用すること」です。
繰下げ受給とは、年金の受給開始時期を本来の65歳ではなく、もっと遅くに繰り下げること。
これにより、年金の額面を増額させることができるのです。
繰下げ受給をした場合の増額率
具体的には、1ヵ月遅らせるごとに0.7%ずつ増額されます。
66歳0ヵ月:8.4% 67歳0ヵ月:16.8% 68歳0ヵ月:25.2%
69歳0ヵ月:33.6% 70歳0ヵ月:42%
これまでは最大70歳まで繰り下げることができたので、42%が最大の増額率でした。
これが、「年金を4割アップさせる方法がある」というウワサの真相です。
2022年4月から75歳まで繰下げ受給が可能に
そして2022年4月。
今回の年金大改正により、繰下げ受給の可能年齢が75歳まで拡大されました。
では増額率はどれぐらいになるのでしょうか。
71歳0ヵ月:50.4% 72歳0ヵ月:58.8% 73歳0ヵ月:67.2%
74歳0ヵ月:75.6% 75歳0ヵ月:84%
なんと、最大で84%も増額できることになったのです。
4割どころか8割以上の増額です。
手っ取り早く受給額をあげたい方にとって、かなり魅力のある制度に思えますよね。
70歳までの就業機会確保が企業の努力義務に
年金を繰下げ受給するためには、それまで収入源を確保する必要があります。
実は2021年4月から、改正高年齢者雇用安定法により一定の企業で70歳までの就業機会確保が努力義務となりました。
つまり従業員が希望すれば70歳まで働くことができるよう、努力義務が課せられているのです。
少子高齢化により労働力が減少する社会において、シニアの労働力はますます求められています。
一方、従業員の視点でも働き続けたい方は多いので、双方にとってメリットのある制度であると言えます。
こうした制度を利用することにより、長く働きながら年金の受給開始を遅らせることが可能になります。
結果的に、最大で84%も増額した年金を受給することは可能であるといえるでしょう。
人生100年時代。ただし「健康寿命」も忘れずに
シニアにとって、繰下げ受給によって年金受給額を増やすことはメリットの高い手段であると言えます。
しかし気をつけたいのは、働き続けることが前提にあるということ。
最大で10年も年金の受給を遅らせるのであれば、切り崩す貯蓄額も多額になってしまいます。
できるだけ長く働いて収入を得ることが大切になるでしょう。
そのためには健康であり続けることが重要になります。
参考までに厚生労働省の「健康寿命の令和元年値について」から、最新の平均寿命と健康寿命を確認しましょう。
平均寿命
男性:81.41歳 女性:87.45歳
健康寿命
男性:72.68歳 女性:75.38歳
こうして眺めると、健康的に働ける期間にはリミットがあることがわかりますね。
「受給額を増やすために繰下げ受給をする」という選択は魅力的である一方、「健康で働き続けること」がセットになる以上、慎重に選択しなければなりません。
自分自身の健康だけでなく、家族の介護状態などにも左右されるでしょう。
健康面や体力面、その他あらゆる可能性を考慮すれば、「だれでも必ずしも70歳以上も働ける」とは言えないのが現状です。
「人生100時代」に備えてできること
年金は将来の生活を支えるとても大切な収入源です。
その金額をアップさせるためには、「繰下げ受給」を選択するのも一つでしょう。
しかし、誰もが働き続けられるわけではありません。
働けなくなることも想定した場合、重要となるのは「年金に頼らない老後資金」です。
預貯金や個人年金などで、ある程度自分で資産を築くことがこれからの人生で重要になるでしょう。
健康寿命と平均寿命は一致しません。
人生100年時代とは言いますが、健康に過ごせるという保証がない以上、自分自身で資産を作ることが大切です。
老後資金の準備方法は、一つではありません。
預貯金でコツコツ貯めていくだけではなく、資産運用でお金を育てていくという方法もあります。
最近ではiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)やつみたてNISAなどが話題になりますね。
税金面でも優遇され、初心者でも始めやすいとされています。
しかし元本割れのリスクがあり、掛け金の上限も設けられています。
始める際には入念な情報収集が必須となるでしょう。
あらゆる選択肢を考慮した上で自分にあう方法を見つけ、効率的に準備を進めていきたいですね。