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「固定資産税の過大徴収」が起きやすい土地・家屋の特徴【税理士が解説】

固定資産税は、土地、家屋、償却資産に対する税金

固定資産税については、毎年4月~6月に届く納税通知書にもとづいて、そのまま納税しているだけという方も多いのではないでしょうか。

 まずは、簡単に固定資産税の仕組みについて説明していきます。

固定資産税は、土地、家屋、償却資産(これらを「固定資産」といいます)に対して、保有している固定資産価値の大きさに合わせて課税される税金です。

 分類としては、国税ではなく地方税であるため、対象となる固定資産の所在する市町村(東京都23区内は特例で都)に納めることになっています。

 一般的には、マイホーム購入時にはじめて聞くという方も多く、「固定資産税」というと、土地や建物にかかるものと認識している人が大半ですが、会社を経営している場合、減価償却の対象となる事業用資産などにもかかります。

固定資産税の課税対象

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固定資産税の課税対象には、次のようなものがあります(出典:東京都主税局)。

<土地>

 田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、その他の土地(雑種地)

<家屋>

 住家、店舗・工場(発電所・変電所含む)、倉庫、その他の建物

<償却資産>

 構築物、機械・装置、工具・器具及び備品、船舶、航空機などの事業用資産で、法人税法又は所得税法上、減価償却の対象となるべき資産。ただし、自動車税種別割、軽自動車税種別割の課税対象となるものは除く

固定資産税を納税する義務がある人(=納税義務者)

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固定資産税を納める義務のある人(=納税義務者)は、「1月1日現在、土地、家屋及び償却資産の所有者として、固定資産課税台帳に登録されている人」と定められています。

 つまり、法律上は、その年の1月1日現在の所有者が1年分の固定資産税を納めなければなりません。

 ですが、売買が行われた場合、時期によっては売主負担が大きくなりすぎることから、通常は、引き渡し日などを起点に日割り計算で買主側が精算金を負担して調整をします。

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固定資産税の金額

 納税額の計算は、土地や建物の場合、「固定資産税評価額」「課税標準額」「標準税率」といった指標を用いて計算されます。

固定資産税 = 課税標準額 × 標準税率
固定資産税評価額:土地の公的価格や家屋の時価を元に3年に1度の評価替え(評価額を資産価格の変動に対応する適正な均衡のとれた価格に見直すこと)によって算出(一般的に、土地や建物など不動産の売買価格(実勢価格)の7割程度)
課税標準額:基本的に固定資産税評価額と同じ金額ですが、軽減税率や

      負担調整率などが適用される場合は調整
標準税率:通常1.4%(自治体によって異なるケースもあります)

 令和3年は、固定資産税評価額の見直しが行われる年でした。

 都心を中心に地価が上昇していたため、固定資産税評価額と同時に固定資産税の上昇も予想されていましたが、新型コロナウイルス蔓延にともない、令和3年度は特例措置がとられました。

 「令和3年度(2021年度)の1年に限り、固定資産税の税額が増加する土地については、前年度の税額に据え置く。

 逆に、税額が減少する土地については減少した税額で納税を認める。」

 また、新型コロナウイルスによって経営が悪化した中小企業には、機械や設備など「償却資産」への固定資産税を令和3年度に限って、減免・軽減制度もありました。

 納税者の収入減少や新型コロナウイルス感染で固定資産税の納税が難しい場合は、最大1年間の納税猶予も受けられますので、お悩みの方は一度市町村に相談してみてください。

課税結果の確認をし、払い過ぎ防止と還付請求を!

 固定資産税の納税通知書は毎年4〜6月ごろに届きます。

 確定申告とは異なり、市町村(東京23区は都)が税額を計算して通知を送ってくるため、納税者は通知された税額をそのまま支払うことがほとんどです。

 しかし、あまり知られていませんが、固定資産税では土地や家屋の「時価」を示す評価額そのものが誤っていることも珍しくはありません。

 誤りの内容や発生原因はさまざまです。

 市町村職員が情報システム端末に入力ミスをしたような単純ミスから、住宅用地軽減特例の適用を忘れてしまうといった特例の見落としのような場合まであります。

 少し古くなりますが、総務省から平成24年に固定資産税の評価誤り(平成21年度〜平成23年度)に関する実態調査が行われています[図表1][図表2]。

 総務省の「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」(平成24年8月8日)では、税額修正した納税義務者数が1人以上あった市町村は、調査回答団体のうち97.0%にものぼります。

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[図表1]税額修正した納税義務者が1人以上あった市町村

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[図表2]税額修正があった人の数と割合
 この数字を多いと見るか少ないと見るかは意見が分かれるかもしれません。

 しかし、誤った算定結果に気づかないと、知らないうちに今後何年にも渡って不必要な税金を支払い続けていくことになる可能性があるのです。

固定資産税の専門家はいるのか?

 残念ながら、一般的に固定資産税の「専門家」といえる人はいません。

 固定資産税は役所から計算済みの課税通知書が送付されてくる、いわゆる「賦課課税制度」であるため、税理士もその計算方法や正誤を細かく確認する機会は限られます。

 会計事務所でも、固定資産税を普段から取り扱っている事務所はごく少数です。

 また、税額の計算を行う全国の市町村の役所には、資産税課という部署がありますが、職員は人事異動もあるため、長年業務に携わっている職員はかなり限られてきます。

 このように専門家が少ないことに加えて、膨大な数の固定資産評価のなかにはケースバイケースの評価が必要な場合も少なくありません。

 つまり、構造的に、入力ミスや判断ミスが生じやすい状況だと言えるわけです。

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 もちろん、理想はミスのない運用体制が構築されることですが、それほど簡単には変わらないかもしれません。

 資産を守るためには、固定資産税が適正に課税されているかどうかを、納税者自らが確認することも必要になってきているのです。

固定資産税の課税誤りが起きやすい5つの条件

 課税誤りは、大きく分けて次の5つのケースで多く発生します。

 課税誤りは、大きく分けて次の5つのケースで多く発生します。

1.住宅用地の認定漏れ
 2.非課税適用の確認漏れ
 3.建物構造を間違えての判定
 4.建物と償却資産の取り違えや重課税
5.建物の滅失漏れ

今回は、このなかでも特によく起きやすい1と5のケースについて詳しく説明します。

■1.住宅用地の認定漏れ

 不動産のなかでも、固定資産税の払い過ぎが起こる可能性が高いのは、「賃貸用住宅の敷地」「社員寮などの事業用地」「駐車場」などです。

 例えば、月極駐車場だった場所に賃貸用住宅を建てたような場合に以前の標準税率のままで算出された結果、住宅用地軽減特例が適用されないことで、固定資産税を払い過ぎが起きているといった場合があります。

 また、従業員を多く有する会社が社員寮を持っているケースも要注意です。

 社員寮のある土地自体は事業用敷地であっても、住居用の敷地で使用されていれば、住宅用地特例は適用されます。

 しかし、申請がもれていることで、適用されていないケースなどもありました。

■5.建物の滅失漏れ

 工場や倉庫など敷地内に色々な建物がある場合、すでに取り壊したにもかかわらず、滅失申請がもれていることで、課税され続けている場合もあります。

 また、事業用敷地に限らず、個人の自宅敷地内でも同様に、建て替えなどによってすでに存在しない建物に課税され続けていることもありました。

 ただし、このパターンの場合が逆のケースもあるので気を付けてください。

 敷地内に新たな建物ができていたが、役所側で把握していなかったケースです。

 減額するために役所に問い合わせをしたことで、反対に課税もれの新たな物件が見つかってしまい、徴収もれを指摘されて追加で納税しなければならなくなることもありえますのでご注意ください。

固定資産税については資産保全のために必ず確認しよう

 大都市圏や地方主要都市では毎年チェックをするようになって誤りが減少傾向にありますが、いまだゼロにはなっていません。

 また、相談者様を見ていると地方の中堅都市に多少広めの土地を持っていて、事業用と住居用など複合的な使い方をしているものなどに課税誤りが発覚するケースが増えています。

 また、前半にご紹介した令和3年度の新型コロナウイルス対策の一環として、仮に地価が上昇していたとしても、宅地や農地の固定資産税額が前年度を超えないような措置があるなかで、課税標準や税額が前年度を上回っていれば、課税誤りの可能性が高いので注意が必要です。

 これからは、ご自身の財産保全はご自身で勉強して防いでいかなければ、今後も課税が続いてしまい、大事な財産が減少していきます。

 ご自身の固定資産税について疑問に思った方は一度税理士に相談してみることをおすすめします。








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