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介護する人が見落としがちな「手当」

「特別障害者手当」は高齢者も受給可能

 皆様は「特別障害者手当」という国の制度をご存じですか? 
 身体・または精神に重度の障害を有する方に対して、ひと月2万7350円が支給される制度です。
 「特別障害者手当」という名前の手当だから、「特別な障がい者」のための制度では? と思われるかもしれませんが、受給要件には「高齢者も含む」と明記されています。
・特別障害者手当とは……身体または精神に著しい障害を有する方に対して支給される手当(高齢者も対象)
・申請窓口……お住いの市区町村
・受給要件……20歳以上で、おおむね、身体障害者手帳1、2級程度、及び愛の手帳1、2度程度の障害が重複している方、もしくはそれと同等の疾病・精神障害を有する方
・所得制限……あり ※東京都福祉保健局HPをご覧ください
・手当月額……2万7350円 ※令和2年4月現在
 高齢者の方だと、重度の認知症やおおむね介護4以上で在宅介護をしているといった方が対象になってくるでしょう。
 実際に受給するためには、申請と合わせて医師の診断書が必要となります。
 Y子さんは、この特別障害者手当の制度を知らずに要介護4の父を在宅介護し、3年間で約100万円の受給漏れをしました。
 その分、Tさんの預貯金から介護費用を切り崩していたことは言うまでもありません。

対象者の9割が受給漏れをしている?

 特別障害者手当には「高齢者」という名前が入っていないのでしょうか?   
 その理由は、WHO(世界保健機関)の定める「障害者の定義」にあります。
 障害者基本法第二条に次のように書いてあります。
 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称なぜする。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
 つまり、障がいとは「日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」であり、WHOから見て「高齢者と障がい者は同じ」なのです。
 しかし、こうした背景によって作られた制度が認知されず、名称から「高齢者には関係ない」と思いこみ、もらえるはずの手当を見逃してしまうことがあるのです。
 ちなみに、調査では、受給の対象になるであろう高齢者の約9割近くが受給漏れをしているという統計もあります。
 先述したように、在宅介護で重度の認知症や要介護4以上の方を介護している場合は対象になる可能性が非常に高いので、ぜひインターネットやお住いの市区町村で要件を調べてみて下さい。

「情報は事前に、申請は早く」

 特別障害者手当の要件を満たしているのに申請が漏れると、1か月で2万7350円、1年で32万8200円、3年では98万4600円。
 約100万円もの受給漏れとなります。
 また、手当は基本的に遡ってもらうことはできません。
 たとえ数年前から重度の介護状態だったとしても、手当は申請月からしか支給されませんので注意が必要です。
 「情報は事前に、申請は早く」が基本です。
 特別障害者手当の申請は、対象者(高齢者)がお住いの市区町村です。
 要件は、在宅であること、そして医師の診断書で「著しく重度である」と診断されていることなどです。
 施設に入所していても「住宅」扱いとなる施設もあるため市区町村や施設へご確認下さい。
 高齢者を抱えるご家族の中には、介護にかかる時間を確保するため仕事の時間をセーブしている方、役職につくことを断っている方、親の預金を切り崩して不安を抱えている方がたくさんいらっしゃると思いますが、定期的なお金の支援によって生活が楽になるだけでなく心にゆとりも生まれます。
 こうした手当の情報をしっかりつかんで、長期の在宅介護生活に備えましょう。



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