日本の金融資産6割超を保有! 60歳以上の世代が保有する金融資産が日本経済を救える!
若い世代に立ちはだかる「資産形成の壁」
日本の金融資産の60%以上は60歳以上の世代が保有していると言われています。
この数字だけをとらえると、その世代からもっと若い世代に資産が回るような政策が望ましいように感じられます。
実は、現在の若い世代は資産形成が難しくなっている側面があります。
これは、若い世代は非正規社員の割合が高く、また、少子高齢化による社会保障費の負担が増えているためです。
社会保障費増加の分かり易い例が、会社員の社会保険料です。
健康保険料や厚生年金保険料は会社と折半なのですが、その保険料率がこれまで上昇を続けました。
厚生年金保険料率を例に挙げれば、2017年(平成29年)に上限の18.3%に達しています。
給与から控除されますので、その分手取り収入は減ってしまいます。
さらに、40代になれば、介護保険料の負担が発生します。
介護保険料率も上がっており、給与から実際にもらえる額は、その分少なくなります。
もちろん、給与が増えれば社会保険料が引かれても、手取りは増えることになります。
しかしながら、業種にもよりますが、日本の給与の伸び率はほぼ横ばいです。
そして、労働基準法で残業規制が強化され、残業して所得を増やすことが抑止され始めています。
『人生100年時代』『副業解禁』といった最近はやりの言葉……。
国や会社はこれ以上の面倒をみることができないので、後は自分たちで補ってというメッセージが込められているかもしれません。
いずれにしても、若い世代に資産が流れる仕組みをつくっていくことが重要です。
認知症により資産が凍結されてしまえば、市場におカネが流れる機会が失われます。
まして、相続時に相続人不存在ともなれば国庫に帰属することになり、その機会は完全に消えてしまうのです。
資産循環のために重要な「生前贈与」と「生前消費」
では、資産を循環させるためにはどうすればよいのでしょうか。
直接、若い世代に資産を流す仕組みとして最も一般的なのが生前贈与です。
生前贈与とは、生きている内に次の世代や配偶者などに財産を移すことです。
この生前贈与は、財産をあげる人ともらう人との契約になります。
したがって、どちらかが認知症になってしまうと、契約の効力をめぐって問題となることがあります。
成年後見制度を利用した場合には、後見人の判断によっては贈与できない可能性があります。
注意点は、それだけではありません。税金のことを頭に入れておく必要があります。
贈与では年間110万円までは基礎控除となり(2021年時点)、贈与税はかかりません。
しかし、それを超えると他の控除の規定が適用されない限り贈与税の対象となります。
相続の際にみなし財産とされることもあり、税理士等の判断を仰ぎながら検討すべきでしょう。
国は手をこまねいているわけではありません。
一部の世代で資金が停滞しないよう、孫への教育資金援助の控除額拡大など生前贈与へのインセンティブを用意しています。
生前贈与と並んで重要なのが、生前消費です。
日本はGDPに占める内需の割合が高いです。ところが、その内需に直結する消費ですが、国民の消費マインドは依然低い状態です。
その原因は、将来に対する不安が大きいことが背景にあります。
いくらデフレ脱却が叫ばれても将来に不安があれば、国民の財布の紐は堅いままです。
また、昭和の経済成長期にあった「三種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)」に代表される消費意欲を促すものは、令和の時代ではなかなか見つけることができないのが現状ではないでしょうか。