在宅介護の豆知識
はじめに
施設で自由を制限された暮らしを送るよりも、愛着のある自宅で可能なかぎり長く過ごしたい。
そう希望する高齢者は増えている。
充実した介護・医療サービスを使い倒せば、それも決して夢ではない。
「主治医の意見書」は大事
ある日、突然「要介護」はやってくる。
誰もが「いつか自分も」と思っているが、実際に必要が迫ると、途方に暮れてしまう。
老人ホームなどの施設に入ってしまえば、すべてお任せすればいいが、できるだけ自宅で過ごしたいという希望を叶えるには、自ら諸々の手続きをこなす必要が出てくる。
いざというときに備え、最適な在宅介護・在宅医療を受けるための手順を学んでいこう。
「親や配偶者が介護状態になったときにまずやるべきことは、介護を主導する『キーパーソン』を決めることです。
その人が窓口となって相談や手続きを行います」
子どもたちは遠方に暮らしているので、キーパーソンになる家族が最初にすることは、地域包括支援センターや市区町村の介護窓口での相談です。
地域包括支援センターとは、介護に関する総合相談窓口で、人口2万~3万人あたりに一ヵ所(中学校の学区に相当)配置されています。
まだ介護が必要でない人でも、専門知識を持ったスタッフが介護予防のためのサービスを提供してくれるので、早めに自分の住む場所のセンターを知っておくに越したことはないでしょう。
相談に行く前には、介護を必要とする人がどういう状況か情報整理しておくことが大切です。
伝え忘れがあると受けられる介護サービスにも影響するからです。
◉持病の有無
◉飲んでいるクスリ
◉一人で移動できる範囲
◉自宅の改修で必要な箇所
◉家族の介助は何曜日なら可能か
◉子どもはどこに住んでいるか
などになります。
それと同時に進めたいのが、要介護認定の申請になります。
認定を受けなければ、公的な介護保険サービスを使うことはできないからです。
申請書は地域包括支援センターでもらえるが、遠く離れて暮らす子どもが書くならば、要介護者の住む市区町村のホームページからもダウンロードできます。
ここで重要になるのは、「主治医の意見書」です。
健康状態をよく知っているかかりつけ医に書いてもらうことが大切です。
かかりつけ医にはあらかじめ、「市区町村から意見書の作成のお願いがいくのでよろしく」と伝えておいた方が良いでしょう。
かかりつけ医がいないと、行政が指定する医師の診断を受けることになるが、普段から診ている医者ではないので、見当違いな意見書を書かれる危険性もあります。
見栄を張ってはいけない
申請書には「訪問調査立ち会い希望」の有無をチェックする欄があることが多いです。
これはかならず「有」をチェックすることです。
訪問調査とは、申請書提出後、どの程度の介護が必要なのか判定するために、役所の調査員が自宅や、入院している施設を訪問し、心身の状況を確認するものです。
一人でトイレに行けるか、認知機能に問題はないかなどを調べますが、立ち会いがおらず本人だけだとつい見栄を張って『それくらい一人でできます』と答えがちですが、その結果、必要な要介護度を認定してもらえなくなることもあります。
必ず介護のキーパーソンが立ち会って、本人に無理をさせないように気を配りたいものです。
実際、75歳以上の約3割が認定を受けているし、そもそも介護保険料は本人が払ってきたのです。
遠慮せずに必要な認定を受けましょう。
申請書類を提出後、およそ1ヵ月で要介護認定の結果が出てきます。
要介護度は5段階に分かれており、それによって1ヵ月あたりの介護サービス支給限度額が異なります。
例えば、要介護1(立ち上がりや歩行が不安定で、入浴や排せつに一部介助が必要)だと16万7650円、要介護5(日常生活のほとんどにおいて介助が必要)だと36万2170円です。
介護サービスの自己負担額は、要介護者の年収によります。
年収が340万円以上の人は3割負担、280万円未満の人は1割負担、その中間の人は2割負担がおよその目安であります(単身者)。
例えば年収300万円の人が要介護1になると、16万円超のサービスを実質3万3000円ほどで受けられています。
また要介護認定が受けられなくても、予防的に支援が必要とみなされる要支援1・2に認定されるケースがあります。
支給限度額は低くなるが、入浴介助やリハビリなどの介護予防サービスを受けることができます。
要介護認定が終わったら、ケアマネジャーと実際にどのような介護を行うかプランを立てて、介護生活はスタートします。
在宅で介護を受けるのに最も重要になるのが、ケアマネ選びになります。
しかしここで安易にケアマネージャーを決めてしまうとあとで後悔することになります。
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